藤本由紀夫 「STARS」
Yukio Fujimoto, STARS, 1990, mixed media, 18 点組
藤本は幼少期より⾃宅で⽗親が使わなくなったカメラ、映写機、オープンリールのレコーダーなど50-60 年代に最先端であった機器をおもちゃ代わりにして過ごしました。遊びの延⻑でテープの⾳を切り繋いだり、ラジオのノイズを録⾳していた経験は、後年当時としては珍しく全室スピーカーの設備が備えられた⼤阪芸術⼤学の電⼦⾳楽のコースへ進むきっかけでもありました。電⼦⾳楽もアナログからデジタルへの移⾏期を迎える頃「スピーカーから発する⾳が全て等質に聞こえる」経験をした藤本はやがてスタジオを出ます。そして再び⾃宅で藤本が⾒つけたものはおもちゃのオルゴールでした。⼤きな⾳を作ることから⼩さな⽣の⾳を聞くことへの転換における新鮮な驚きと共に、⾳とは共鳴する空間そのものである、という気づきはその後の制作に⼤きく影響を与えます。また幼少の頃よりそうとは知らずに印象付けられていたマルセル・デュシャンの世界に⾜を踏み⼊れ、さらにジョン・ケージを⾒直し検証するに⾄ったのもこの時期のことです。