刺繍する犬「無効化された音の装置」展
Protective coverall, noise 2017 約180 × 50cm
化学防護服に刺繍:DuPont社製化学防護服、鉛、フェルト、刺繍糸
アヴァンギャルドの一匹狼として、戦後日本の美術界にノンを突きつけた岡本太郎ですが、同時に分野を超えた新しい 芸術の展開を求める活動の中では、そこに集う若い芸術家達に惜しみのない支援を欠かしませんでした。その精神を受け 継ぎ、時代に先駆け独自の表現を確立していったアーティストに山口勝弘がいます。インターメディアの先駆けとなる「実 験工房」の時代からインタラクティブな関係をめざした「ビデオアート」や「環境芸術」など、アートとテクノロジー、 そして社会との関わりを掘り下げ、新たな表現に挑んだ山口。山口が次世代を継ぐ多くのアーティストを世に送り出した ことによって現代のメディアアートという分野が確立されたのです。 本展は、岡本太郎から山口勝弘、そして彼らの活動の先に開花したメディアアートを担う現代アーティスト 10 人の作品 を紹介するものです。会場では山口が岡本に捧げたオマージュ作品をはじめとし、現代アーティストの作品が岡本太郎の 展示空間でコラボレーションします。戦後日本の現代美術の原点から始まり、アートとテクノロジーの融合をめざした新 しい芸術分野の成立に至るメディアアートの歴史的な連続性を概観していただければと思います。
この度、TEZUKAYAMA GALLERYでは5年ぶりとなる上原浩子の個 展「Deep Forest」を開催いたします。
1985年、群馬県に生まれた上原は、京都市立芸術大学及び大学院 を卒業後も京都を拠点に制作活動を続けています。
大学在学中より平面作品を中心に制作していた上原ですが、自身の 表現の可能性を求め、並行して立体制作へと作家としての活動の幅 を広げて来ました。平面制作で培った描写力と以前から興味があったと話す日本古来より伝わる自然の中に精霊や神が宿ると言われる アニミズムの思想に感化され、一貫して植物と人間の融合をテーマに制作しています。モチーフとされる生き物の表情は穏やかで、繊細で柔和に表現された肌からは、神々しく優しくも強い生命力を感じることができます。
芸術は、いわば「危険早期発見装置」である。そのおかげでわれわれは、社会的、精神的危険の兆候をいち早く発見でき、余裕をもってそれに対処する準備をすることが出来るのである。*1
本展は、2012 年にイタリアのコモ市で開催されたのを皮切りに、以後、作品の入れ替えを行いながら、イタリアやフランス、ドイツ、イスラエルなどを巡回し、この度日本で開催されます。
16、17 世紀のヨーロッパにおいて最も影響力を持った画家一族のひとつであったブリューゲル一族。一族の祖であるピーテル・ブリューゲル1 世は、雄大な風景やヒエロニムス・ボス風の版画の下絵で人気を博しました。彼の革新的な点は、現実世界を冷静に見つめ、人間の日常生活を何の偏見もなく、ありのままに表現することにありました。この観察眼は、彼の2人の息子へ、更にその子孫たちへと受け継がれ、一族の絵画様式と伝統を築き上げていくことになります。
本展では、中国甘粛省の慶城県博物館が所蔵する約60点の作品の展示により、唐代胡人俑の魅力をご紹介します。
今回の展示では、2001年に甘粛省慶城県で発見された唐時代(618-907)の穆泰(ぼくたい)墓(730年)から出土した胡人俑(こじんよう)の数々を日本で初めて紹介いたします。胡人俑とは、唐時代のシルクロード文化を象徴するものの一つであるエキゾチックな風貌の胡人(ソグド人などの異民族を指す中国における名称)を表現した陶俑(副葬用の陶製人形)です。とりわけ、穆泰墓出土の胡人俑は鮮やかな彩色と極めて写実的な造形により、胡人の姿が生き生きと表現されており、唐代胡人俑を代表するものの一つです。
斬新な魅力に満ちた唐代胡人俑の最高傑作を通して、シルクロードを駆け巡った胡人たちの息吹を感じていただければ幸いです。なお本展に併せて、国立国際美術館との共催による同館所蔵の現代の人物彫刻約10点を展示する連携企画「いまを表現する人間像」展、ならびに特集展「中国陶俑の魅力」なども同時開催します。
写真家の篠山紀信(1940 - )は、1950年代後半から現在に至るまで、作家、アイドル、俳優、スポーツ選手ら国内外の著名人の写真を撮り続けたほかに、日本の芸能、ヌードと自然、都市と建築など様々なテーマに取り組んだ作品を発表してきました。特に彼の撮影した人物たちは、時にセンセーショナルな形で世間の注目を集めつつも、その明快な美しさと強力なインパクトによって多くの人々を魅了しています。50余年にわたる活動を経て今なお彼の創作意欲はとどまるところを知らず、日本を代表する写真家としてパワフルな活動を続けています。