森村泰昌<br>「私」の年代記 1985〜2018

ARTLOGUE 編集部2018/11/09(金) - 22:08 に投稿

森村芸術とは何か。

森村は⾃らを20世紀・昭和を出⾃とする⽇本の芸術家である、ということに⾃覚的です。⽇本は明治維新後は⻄洋⽂明・⽂化に影響を、太平洋戦争後はアメリカ⽂明・⽂化に影響を強く深く受けてきました。古くはそれは中国⽂明・⽂化でした。そうした⽇本の「古層」的な⽂明⽂化受容の精神構造を前提に、⾃らの芸術のあり⽅を追い求めてきました。そこには時代精神と歴史精神の両側⾯に⽴脚しようとする森村の決意・態度が伺えます。

森村芸術とは、⾃分ではない何かになる試みを続けながら、⾃分であることの意味を問い続ける営みの集積です。他者及び他者の芸術成果・歴史的事件に対する独⾃の分析を加えながら、⾃分の⾝体を⽤いて写真・映像・パフォーマンス表現をすることを考えれば、森村芸術とは、成果としての撮影作品だけではなく、実践としての現場もまた森村芸術の重要な⼀部を占める、と⾔ってもよいかもしれません。森村が作品において現場感の表出を⼤事にしているのはその表れです。

M@M開館記念展<br>君は『菫色のモナムール、其の他』を見たか?<br>—森村泰昌のもうひとつの1980年代—

ARTLOGUE 編集部2018/11/09(金) - 21:10 に投稿

森村泰昌が本格的に作品を発表し始めたのは、1980年代半ばのことでした。

本展では、初めてのセルフポートレイト作品による個展「菫色のモナムール、其の他」(1986年、ギャラリー白)の展示の再現にくわえ、モノクロの風景写真や、交通標識に扮した自画像、ボッティチェリの《ヴィーナスの誕生》に倣った《男の誕生》など、滅多に見ることができない作家秘蔵の80年代作品約30点をご覧いただきます。

モリムラの初期作品の面白さが概観できるとともに、1980年代の日本の現代美術の知られざる動向を知る重要な手がかりになることでしょう。

■M@Mって何ですか?
エム・アット・エムと呼んでください。
美術家・森村泰昌の作品がいつでも見られる、スペシャルな美術館です。
フロア面積は400㎡。ふたつの展示室とライブラリー、サロン、ミニシアター、ショップがあり、それぞれの部屋にはモリムラによって名前がつけられています。

 

三瀬夏之介 × 辻村唯 二人展

ARTLOGUE 編集部2018/11/09(金) - 20:47 に投稿

今秋、イムラアートギャラリーでは、日本画家・三瀬夏之介(みせなつのすけ)と、陶芸家・辻村唯の二人展を開催します。

奈良に生まれた二人の同世代の作家は、絵画とやきものというそれぞれの分野において、自然が作り出す偶然性の芸術を作品の上に描き出しています。

三瀬夏之介は日本画の素材を用いることに徹して日本の風土を描き、その模糊としたダイナミックな構図のなかに、自身の記憶や現代的なモチーフを緻密に描き出します。「作品はいつか土に還ると思って制作しています」−そう語る三瀬は、例えば銅粉を混ぜたメディウムを用いて、作品を土に埋めて腐食させることで、絵画の中で緑青(ろくしょう)を生じさせ、まるで釉薬のような艶と色彩を作り出しています。

いっぽう辻村唯は、やきものの制作において一貫して「自然釉」と呼ばれる天然の釉を用いています。これは窯の中で起こる灰と土の化学反応から生まれ、表面に付着した灰やガラス質の緑青の釉により、人の手では作り出せない景色が描き出されています。窯から取り出されたばかりの溶けるような器体をした作品群は、彫刻作品然として、まるで生き物のような生命力を湛えています。

彫刻家の版画―ムーア、マリーニ、ジャコメッティ

ARTLOGUE 編集部2018/11/09(金) - 20:25 に投稿

イギリスのヘンリー・ムーア(1898~1986)、イタリアのマリノ・マリーニ(1901~1980)、フランスのアルベルト・ジャコメッティ(1901~1966、生まれはスイス)、ほぼ同世代の彼らは、いずれも20世紀を代表する彫刻家です。

彼らは彫刻制作のかたわら、しばしば絵画表現にも取り組んでいます。しかし、3次元の立体と2次元の平面はまるで別世界であり、アプローチがまったく異なるものです。
一方で、彫刻と版画とでは、意外なことに共通点もあります。それは、木や石、銅といった素材の特性を生かした表現という点や、複数制作によって限定番号(エディション)を入れるという点などです。

彫刻家が絵画、なかでも版画作品を手掛けることに、どのような目的や意図があり、その結果、どのような発見や課題があるのでしょうか。
この展覧会では、彫刻の巨匠たちの絵画制作の試みを、当館所蔵の版画作品から考察します。立体と平面のはざまを往還した、彼らの表現をお楽しみください。

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開催概要

森村泰昌の『映像─都市』論 ─上映とトークによって、大阪を読み解く─

ARTLOGUE 編集部2018/11/09(金) - 17:17 に投稿

アートエリアB1開館10周年を機に行う新たなプロジェクト「クリエイティブ・アイランド・ラボ 中之島」 では、当館が位置する大阪・中之島の文化ネットワークの構築をめざし、中之島周辺に位置する、美術館やホール、科学館、図書館など15の文化拠点と連携企画を行います。

その一つとして、今年開館100周年を迎える大阪市中央公会堂を舞台に、「森村泰昌作品と大阪の都市」をテーマにした上映とトークならびに、特別展示「アートでひもとく中央公会堂の100年」のツアーを行います。美術家・森村泰昌は、美術史上の名画の人物や映画女優、20世紀の歴史的人物などに扮する「自画像的」な写真・映像作品を一貫して制作しています。それらの多くは森村の生まれ育った大阪で撮影されています。ヒトラーに扮した森村が中央公会堂の特別室にて演説を行う《なにものかへのレクイエム(独裁者を笑え)》をはじめ、釡ヶ崎支援機構でのレーニン、万博公園の美術館でのゲルハルト・リヒター、大阪城の旧陸軍司令部庁舎での三島由紀夫など。いずれも大阪の風景と歴史上の人物が時空を超えて映像化され、森村流の 都市論を形成しています。

クリエイティブ・アイランド ─創造的都市の本質とは何か─

ARTLOGUE 編集部2018/11/09(金) - 16:57 に投稿

パリのシテ島やベルリンのムゼウムス・インゼルなど、世界の都市の島と類する文化・経済拠点の集積地である大阪・中之島。

その一端を担うアートエリアB1開館10周年を機にスタートした、新たなプロジェクト「クリエイティブ・アイランド・ラボ 中之島」では、中之島エリア全体を、持続可能な芸術文化環境をそなえた「創造的な研究所」として見立て、様々な思考実験を繰り広げます。

このプロジェクトのシンボルイベントとして、創造的な都市と芸術との関係を主題に、その思考と実践について語り合うシンポジウムを開催します。
第1部では、2020年に香港の西九文化区に開館を予定している、世界最大規模の現代美術館「M+」の副館長兼チーフ・キュレーターであるドリュン・チョン氏をお招きし、芸術を通じた都市の創造性について基調講演を行います。

第2部では、中之島で先鋭的な文化事業を行ってきた大学、企業、NPOの代表者、中之島に誕生する新たな美術館のキュレーター、世界各地で都市を舞台にアートプロジェクトを行ってきた美術家、文化政策研究者が集います。

香港と大阪・中之島の「水辺の都市」という共通点も踏まえながら、大阪・中之島で創造的な地域を形成する可能性について、対話を繰り広げます。

中之島線開業・アートエリア B1 開館 10 周年記念事業 鉄道芸術祭 vol.8<br>「超・都市計画 ~そうなろうとする CITY~」

ARTLOGUE 編集部2018/11/09(金) - 14:57 に投稿

鉄道芸術祭vol.8では、アートエリアB1開館/中之島線開業10周年を記念して、沿線開発という「都市計画」の産物である当館の出発点に立ち返り、「鉄道と都市計画」をテーマに開催します。

産業革命以後、鉄道は近代都市計画の要でありつづけてきました。その沿線開発に伴って日常環境が向上した一方で、都市風景や生活様式の画一化と私たちの感性の均質化をもたらしたともいえるでしょう。

そこで本展では、異なる三組の表現者による「超・都市計画」を試行します。

加納俊輔、迫鉄平、上田良によるユニットTHE COPY TRAVELERSは、風景や人々のふるまいを観察・採取・コラージュした平面表現によって、都市の混沌や多層性を表出させます。日本初紹介となるオランダ出身のオスカー・ピータースは、巨大な木製コースター型の立体表現によって、鉄道や道路などの軌道を連想させる都市の空間構造を出現させます。ゲーム作家の飯田和敏は、仮想現実の世界においてこそ可能な都市の浮遊体験を実現させると同時に、都市生活者のあり方にも言及します。三者三様の手法と表現を手がかりに、さまざまな課題を抱える都市とそこに住む人々の現実を、創造的観点から超越的にとらえた「都市の鳥瞰図」を創出します。

〈アーティスト〉