Oh !マツリ☆ゴト 昭和・平成のヒーロー & ピーポー
20世紀のはじめから現代へと至る日本の美術作家の表現には、社会的な関心が色濃く表れたものも少なくありません。本展はそうした傾向を示す作品の中でも、特別な存在(ヒーロー、カリスマ、正義の味方)と無名の人々(公衆、民衆、群集)という対照的な人間のありかたに注目するものです。とりわけ大衆とも呼ばれる後者の存在は、どのようにその存在を可視化するのか、そしてどのようにして彼らとの間に連帯を築くことができるのかという切実な問いを表現者に投げかけてきました。ひとびとの集団=本展でピーポーと仮に呼ぶ存在が、立場や考え方によっていくらでも変化し、わかれていくものであるという事実は、その姿をとらえがたいものにもするでしょう。同展で注目する特別な存在=「ヒーロー」は、「ピーポー」が直面する困難やその願いを映し出す鏡としての、あるいはその存在に姿を与える触媒としての役割を担っています。
このような問題意識のもとに、同展では「ヒーロー」や「ピーポー」とは何かという問いに応えようとしてきた昭和と平成の時代に生まれた作品を5つのテーマに沿って見ていきます。さらにこれらのテーマとは別に、同時代の表現者による最新の実践もご紹介します。
特別企画展 富岡鉄斎―文人として生きる―
近代文人画の巨匠・富岡鉄斎(1836~1924)は、古人を顕彰し、「万巻の書を読み、万里の路みちを行く」という中国文人の理想を、生涯を通して実践しました。
豊かな知識と雅趣をもって多彩な作品を生み出しましたが、その背景には言うまでもなく、北宋の蘇軾そしょくをはじめとする古の文人達へのあこがれがありました。
本展では鉄斎の交友関係に着目しながら、その文人としての生き様を見ていきます。
クリスチャン・ボルタンスキー − Lifetime
クリスチャン・ボルタンスキー(1944年-)は、現代のフランスを代表するアーティストのひとりです。
1960年代後半より短編フィルムを発表し始めたボルタンスキーは、1970年代に入り、写真を積極的に用いるようになりました。
人が歩んできた歴史や文化人類学への関心を土台とし、写真やドキュメントとビスケット缶などの日用品を組み合わせることで、自己あるいは他者の記憶に関連する作品を多数制作し、注目を集めます。
1980年代に入り、明かりを用いたインスタレーションを手掛けるようになったボルタンスキーは、子どもの肖像写真と電球を祭壇のように組み合わせて展示した「モニュメント」シリーズ(1985年-)で宗教的なテーマに取り組みます。
それを発展させた《シャス高校の祭壇》(1987年)は、1931年にウィーンの高校に在籍したユダヤ人の学生たちの顔写真を祭壇状に並べ、その写真を電球で照らすというものでした。
肖像写真を集めて展示する手法は、大量の死者の存在、具体的にはナチス・ドイツによるユダヤ人の大虐殺とその犠牲者のイメージを想起させるものとして解釈され、大きな議論を呼びました。
第二次世界大戦期のユダヤ人の大虐殺は、ユダヤ系の父を持つボルタンスキー自身の問題とも結びつきます。
パリのグラン・パレの広大なスペースを生かし、大量の衣服を集積させた《ペルソンヌ》(2010年)など、その後もさまざまな手法によって、歴史や記憶、そして死や不在をテーマとした作品を発表します。
1970年代からドクメンタ(ドイツ・カッセル)やヴェネチア・ビエンナーレなどの現代美術国際展に招待され、活躍の場を世界各地に広げたボルタンスキーは、日本でも、越後妻有アートトリエンナーレや瀬戸内国際芸術祭などで積極的に展示活動を行い、2016年には東京都庭園美術館で個展が開催されました。
国立国際美術館、国立新美術館、そして長崎県美術館の3館が共同で企画する本展は、ボルタンスキーの初期作品から最新作までを紹介する、国内初めての大規模な回顧展です。1970年代から近年までのボルタンスキーの様々な試みを振り返ると同時に、ボルタンスキー自身が「展覧会をひとつの作品として見せる」と語るように、作家自身が会場に合わせたインスタレーションを手掛けるという構想のもとに企画されました。
半世紀を超える作家活動を経て、いまなお、積極的に創造を続けるボルタンスキーの広大なる芸術世界を紹介いたします。
辰野登恵子展
辰野登恵子(1950-2014)は、1970年代にグリッド(格子)やストライプをモチーフとした版画作品で注目を集め、80年代以降は豊潤な色彩で有機的形象を描く独自の表現を追求した画家です。
なかでも大型の油彩作品は高い評価を得ていますが、多数のドローイングや様々な版種の版画の存在は、作家が広い視野に立ち抽象絵画の新たな可能性を模索し続けたこと、ときにこれら紙の仕事がその試行錯誤を牽引したことを窺わせます。
本展覧会では、これまでまとまった展観の機会が限られてきた紙の上の表現に光を当て、辰野の画業を再検証します。
アートラボはしもと
館のご紹介
「アートラボはしもと」は、周辺にある美術大学などと連携し、そこで学ぶ美大生や卒業生、子どもたちや地域の方々、商店街や企業、学校、研究機関、市民グループなどと協力し合いながら、さまざまなアート事業を展開する“アートの活動拠点”です。
開館時間
午前8時30分から午後5時まで
(イベント等により開館時間を延長する場合があります)
休館日
水曜日、年末年始(12月29日から1月3日まで)ほか
アクセス
横浜線ご利用の場合:JR横浜線橋本駅下車 徒歩12分
相模線ご利用の場合:終点橋本駅下車 徒歩12分
京王線ご利用の場合:京王相模原線終点橋本駅下車 徒歩12分
小田急線ご利用の場合:町田駅にてJR横浜線に乗り換え横浜線橋本駅下車 徒歩12分
相撲博物館
館のご紹介
「相撲博物館」は、酒井忠正初代相撲博物館館長が長年にわたって収集した資料を基礎に、国技としての相撲資料の散逸を防ぐため、1954年9月、蔵前国技館の完成と同時に開館しました。館内では、錦絵や番付、化粧廻しなど相撲に関する資料を収集、保存し、年6回の展示により公開しています。また、相撲を日本固有の文化ととらえ、歴史などの調査・研究を行っています。
開館時間
10:00~16:30
料金
無料
休館日
土・日曜日、祝日(一部開館あり)、年末年始
※東京本場所中は毎日開館、ただし大相撲観覧者のみ見学可
アクセス
JR総武線「両国駅」下車、西口より徒歩1分
都営地下鉄大江戸線両国駅A4出口より徒歩5分