博物館

北澤美術館所蔵 ルネ・ラリックの香水瓶―アール・デコ、香りと装いの美―

ARTLOGUE 編集部2018/10/23(火) - 19:56 に投稿

20世紀初め、香水が一般の人々に広がるにつれ、香水メーカーは競って美しいデザインの香水瓶を求めるようになりました。宝飾作家として活躍していたフランスのルネ・ラリック(1860~1945)は、香水商フランソワ・コティから依頼され、ガラスの香水瓶を制作し始めます。ラリックの香水瓶はその優美なデザインにより、瞬く間に人気を集めました。ラリックは以降、ガラス工芸家に転向し、20世紀初頭のモダンな様式、アール・デコを代表するデザイナーとなりました。

同じころ、ファッションにも大きな変化がありました。服飾デザイナーのポール・ポワレ(1879~1944)がコルセットを使用しないドレスを発表したことを機に、従来のボリュームを強調したシルエットから、より活動的で、体に沿ったデザインに変化しました。

本展では、ガラス工芸コレクションで世界屈指の質、量を誇る北澤美術館の所蔵品から、ラリックが手掛けた香水瓶を中心に、アクセサリーやパフューム・ランプ、化粧品容器などを紹介します。あわせて神戸ファッション美術館の協力により、アール・デコの装いを代表するドレスやファッション・プレート(ファッション誌を飾った手彩色の版画)を展示します。

 

企画展「天文学と印刷 ―新たな世界像を求めて」

ARTLOGUE 編集部2018/10/10(水) - 11:47 に投稿

印刷博物館では2018年10月20日(土)より企画展「天文学と印刷 ―新たな世界像を求めて」を開催します。コペルニクス『天球の回転について』が出版された16世紀のヨーロッパは、天動説から地動説への転換が起こるなど、それまでの価値観から脱却し、新たな世界像を再構築していく時代にありました。

著者であるコペルニクスの名は多くの方に知られているかと思いますが、一方で本書の印刷者はご存じでしょうか。おそらく知る人は少ないのかもしれません。また、学者と印刷者は共同で出版を行うのみならず、学者の中には自ら印刷工房を主宰し書物を刊行した人も存在します。ニコラウス・コペルニクス、ティコ・ブラーエ、ヨハネス・ケプラーといった、天文学の進展に大きな役割を果たした学者と印刷者の関係を紐解いていきます。

15世紀のヨーロッパに登場した活版印刷および図版印刷は、情報を伝えるだけにとどまりません。印刷所は知識人同士を結びつけ新たな学問を育む場としても機能し、新たな世界像を再構築し広く伝えていく上で大きな役割を果たしたことをご紹介します。
 

親と子のギャラリー トーハク×びじゅチューン! なりきり日本美術館

ARTLOGUE 編集部2018/07/22(日) - 15:49 に投稿

井上涼氏のコメント

なりきると、びじゅつはどんどん楽しくなる

 

東京国立博物館は、2018年夏のファミリー向け企画・親と子のギャラリーとして「びじゅチューン!」とのコラボレーションによる参加・体験型展示を行います。
「びじゅチューン!」は、アーティストの井上涼が作詞・作曲・歌・アニメーションを手がけるNHK Eテレの番組。豊かで自由な想像力で美術の楽しみを広げ、多くの子どもたちから支持を得ています。

特別展 縄文―1万年の美の鼓動

ARTLOGUE 編集部2018/08/03(金) - 14:31 に投稿

今から約1万3000年前、氷期が終わりに近づいて温暖化が進み、入り江や干潟が生まれ、現在の日本列島の景観が整いました。この頃に日本では土器作りが始まります。縄文時代の幕開けです。当時の人びとは、自然環境を生かして狩猟や漁撈、採集による生活を営んでいました。彼らが日々の暮らしのなかで作り出した、土器や石器、土偶や装身具などのさまざまな道具は、力強さと神秘的な魅力にあふれています。躍動感あふれる《火焰型土器》やユニークな姿形をした《遮光器土偶》は、縄文時代の造形美を象徴するものとして広く知られていますが、1万年続いた縄文時代には、まだまだ知られていない多彩な造形が数多くあります。

本展では「縄文の美」をテーマに、縄文時代草創期から晩期まで、日本列島各地で育まれた優品を一堂に集め、その形に込められた人びとの技や思いに迫ります。縄文時代1万年にわたる壮大な「美のうねり」を体感できる展覧会です。

 

糸のみほとけ

ARTLOGUE 編集部2018/06/19(火) - 15:52 に投稿

古来、わが国では綴織や刺繡は主要な仏像の表現技法であった。わが国最古の本格的寺院である飛鳥寺において、本尊である銅の丈六仏とともに丈六の繡仏(刺繡による仏像)が製作されたように、日本仏教の黎明期より繡仏が製作された。

さらに、飛鳥時代後期(白鳳期)には薬師寺講堂に刺繡の阿弥陀浄土図が懸けられ、奈良時代には東大寺大仏殿に観音と不空羂索観音の巨大な繡仏が奉懸された。古代において繡仏は彫刻や仏画と肩を並べる造仏の花形技法であり、しばしばお堂の本尊級とされる重要な尊像でもあった。この時期の繡仏の遺例に、天寿国繡帳(国宝、奈良・中宮寺所蔵)と刺繡釈迦如来説法図(国宝、奈良国立博物館所蔵)がある。天寿国繡帳は聖徳太子の逝去を悼む妃が太子の往生した世界を偲ぶために発願した品で、太子の時代に遡るきわめて貴重な繡仏作品である。

チャペック兄弟と子どもの世界

ARTLOGUE 編集部2018/06/18(月) - 15:34 に投稿

「ロボット」という言葉の生みの親として知られるチェコの作家カレル・チャペック(1890-1938)。最先端の技術革新によって変化していく世界を見据え、時に鋭く、時にコミカルな切り口で魅力的な著作を生み出し、造形作家として活躍する兄のヨゼフ・チャペック(1887-1945)とともに、多彩な才能を発揮しました。カレル・チャペックは文筆家としての創作と同時に写真も手がけ、自らのテキストに愛犬の写真を添えた『ダーシェンカ』などを発表しています。また、兄のヨゼフは日本でもロングセラーとなった『長い長いお医者さんの話』や、『こいぬとこねこはゆかいな仲間』などにより多くのファンを惹きつけています。

本展は、チェコの世界文化遺産都市クトナー・ホラーに新設された現代美術館で開催された「子どもたちを描いたチャペック兄弟の創作」展を基に、ご遺族やチェコ国立文学館、チャペック記念館などの協力によって開催されるものです。日本でもファンの多いヨゼフの絵本原画に加え、これまで日本でほとんど紹介される機会のなかったヨゼフの油彩やパステル画、ドローイング、カレルによる『ダーシェンカ』の写真やデッサンなど、初公開を含む幅広い作品により、チャペック兄弟が子どもたちに注いだ温かい視点で生み出した、チェコの優れた子どものための芸術が紹介されます。

 

絵描きの筆ぐせ、腕くらべ―住友コレクションの近代日本画

ARTLOGUE 編集部2018/05/28(月) - 03:00 に投稿

住友邸宅を飾った日本画家たちの

くせのある名画、勢揃い!

 

日本画には、もともと流派がありました。古くは平安時代に成立した「やまと絵」があり、室町時代には中国画をもとにした「狩野派」が出て一世を風靡します。江戸中期には京にいた円山応挙がリアルな表現を導入した写生表現を打ちたて「円山四条派」の祖となり、さらに中国の明清時代の「文人画」も将来され、画譜などの出版メディアによって文人画風が流行します。近代には、そうした伝統的な諸流派は美術学校という教育システムのなかで継承されながらも解体され、「個性」を重視した個別の描法が絵画表現の中心になります。
本展は、住友家に伝わった近代日本画の名品を、画家の筆ぐせからご鑑賞いただく展覧会です。明治後期から昭和にかけて、大阪や京都、東京にあった住友家の邸宅では、それぞれの地域の画壇に所属する日本画家たちの作品がかけられ、鑑賞されていました。
近代ならではの表現を求めた日本画家たちの腕くらべをご紹介いたします。

 

創建1250年記念特別展 国宝 春日大社のすべて

ARTLOGUE 編集部2018/05/03(木) - 05:01 に投稿
鹿座仏舎利 (春日大社)

 

春日大社は、奈良時代の神護景雲 2 年(768)に、奈良盆地の東端に位置する御蓋山の 麓、現在の社地に本殿が造営されました。本年は創建から数えて 1250 年の節目の年に当たります。

平城京の鎮護として創建された春日大社は、藤原氏の 氏 社(うじのやしろ)として一族の崇敬を集め、平安時代には摂関家の繁栄とともに大きく発展します。また伊勢神宮、石清水八幡宮とともに国家を守護する三社に数えられ、朝廷の信仰も深まりました。中世には藤原氏の氏寺である興福寺との結びつきが強まり、信仰は社領のみならず興福寺領、摂関家領へと広がります。そして中世後期から近世にかけては町や村にも信仰が根差し、その頃に起こったと考えられる 春日講(しゅんにちこう)は今も奈良の街中などに残っています。

創刊記念『國華』130周年・朝日新聞140周年  特別展「名作誕生-つながる日本美術」

ARTLOGUE 編集部2018/03/12(月) - 07:35 に投稿

日本美術史上には「名作」と呼ばれる作品が数多く存在します。時代を代表する人物ゆかりの名作、伝説的な巨匠の手から生み出された名作、海を越えて日本へもたらされた名作、古典に学び新時代の美意識で生まれ変わった名作など、名作はさまざまなドラマをもって誕生し、受け継がれ、新しい名作の誕生へとつながってきました。

本展覧会では、こうした作品同士の影響関係や共通する社会背景に着目して、鑑真(がんじん)ゆかりの木彫や美麗な普賢菩薩像(ふげんぼさつぞう)など仏教美術の白眉から、雪舟(せっしゅう)、宗達(そうたつ)、若冲(じゃくちゅう)らの代表作、伊勢物語や源氏物語といった古典文学から生まれた工芸の名品、さらには古画に学んで新たな境地を拓いた近代洋画まで、地域、時代を超えた名作の数々を、12のテーマで紹介いたします。材質や技法、特徴的な形やモチーフ、形の意味や作ること自体の意味など、出品作品のつながりはさまざまです。皆さんがご存じの国宝・重要文化財を含む約130 件が集まることによってみえてくる、名作たちの「つながり」をぜひお楽しみください。