「ロボット」という言葉の生みの親として知られるチェコの作家カレル・チャペック(1890-1938)。最先端の技術革新によって変化していく世界を見据え、時に鋭く、時にコミカルな切り口で魅力的な著作を生み出し、造形作家として活躍する兄のヨゼフ・チャペック(1887-1945)とともに、多彩な才能を発揮しました。カレル・チャペックは文筆家としての創作と同時に写真も手がけ、自らのテキストに愛犬の写真を添えた『ダーシェンカ』などを発表しています。また、兄のヨゼフは日本でもロングセラーとなった『長い長いお医者さんの話』や、『こいぬとこねこはゆかいな仲間』などにより多くのファンを惹きつけています。
本展は、チェコの世界文化遺産都市クトナー・ホラーに新設された現代美術館で開催された「子どもたちを描いたチャペック兄弟の創作」展を基に、ご遺族やチェコ国立文学館、チャペック記念館などの協力によって開催されるものです。日本でもファンの多いヨゼフの絵本原画に加え、これまで日本でほとんど紹介される機会のなかったヨゼフの油彩やパステル画、ドローイング、カレルによる『ダーシェンカ』の写真やデッサンなど、初公開を含む幅広い作品により、チャペック兄弟が子どもたちに注いだ温かい視点で生み出した、チェコの優れた子どものための芸術が紹介されます。
おススメ情報
・2016年に開催した特別展「チェコ絵本をめぐる旅」で、絵本の世界をイメージしたテーブルやイスなどを制作した森太三氏(美術家)とグラフィックデザインを手がけた角谷慶(デザイナー/su- design)のお二人が今回も空間をプロデュース。「チャペック兄弟と子どもの世界」展を一層楽しめる仕掛けがいっぱいです。
・会期中の毎週水曜日は「トークフリーデー」(会話を楽しむ美術の時間)
家族や友人と自由におしゃべりを楽しみながら鑑賞できる特別な日です。お気に入りの作品を見つけて会話を楽しもうというもの。小さな子どもと一緒でも、リラックスして足を運んでみては。
・また、本展の会期中には、チャペック兄弟作の絵本をはじめ、本展オリジナルグッズや絵はがき、 各種ステーショナリーなどのチェコ雑貨も販売いたします。
展示構成
第1章子どものモチーフ/Children’s motifs
子どもというテーマはヨゼフ・チャペックの初期の作品からみられるもので、その後も20世紀初頭のヨーロッパ芸術のいくつもの流れを融合し、ヨゼフ独自の表現に至りました。ヨゼフは子どもの絵に触発されたものの、そのまま模倣したのではなく、子どもたちから表現の自由を学んだのでした。そして、子どもたちの遊びを生活の営みの理想として、また芸術表現のモデルとしてとらえていたのです。子どもの姿は30年代末期の反戦風刺の中にも、さらにナチスにより収監されたザクセンハウゼン強制収容所で遺した絵の中にも描かれ続けました。
第2章おとぎ話/Fairy tales
チャペック兄弟は、良質な児童文学を作り出すことを目指し、1918年、カレルは様々な世代の作家や芸術家の作品を集めた三巻本『おとぎ話のかご』を編纂しました。第一巻には、カレルの「王女さまと小ネコの話」、ヨゼフの「私の太ったひいおじいさんとどろぼう」が収録されています。これが、後の『長い長いお医者さんの話』のきっかけとなり、1931年のクリスマスに向けて刊行され、現在では世界児童文学の古典作品として知られています。ヨゼフはこの童話を書き直し、舞台用の脚本にしました。そして、ヤロスラフ・クジチカ(1882~1969)の音楽によって子ども向けミュージカルとなり、1932年にプラハ国民劇場で上演されました。ヨゼフは自らその舞台美術も手がけています。
第3章いぬとねこ/All About Doggie & Pussycat
ヨゼフとカレルは、新聞『リドヴェー・ノヴィヌィ』の日曜版で、児童向けの付録「子どものコーナー」を担当していました。この文章をもとにして生まれたのが、ヨゼフの『こいぬとこねこは愉快な仲間』とカレルの『ダーシェンカ、または子犬の生活』です。これらは世界中の言語に翻訳され、日本でも複数の版が出版されています。また、兄弟の没後には映像化されていて、子ども向けの人気テレビ番組「ヴェチェルニーチェク」でも放送されました。どちらのお話しも、それぞれの家庭で関心と愛情を注がれたペットがテーマになっています。カレル自身が挿絵と写真を手がけた『ダーシェンカ』は、児童文学において写真絵本を作った先駆けとなりました。
第4章さまざまな仕事/Commissioned Works
二つの世界大戦間の、児童文学の芸術的レベルを向上させようという流れのなかで、ヨゼフも他の画家と同様、質の高い子ども向けの挿絵を描くことに努めました。ヨゼフ自身は、児童文学の分野を専門にしたわけではなく、挿絵を手がけた本も、自著をのぞくと6冊だけだったにもかかわらず、1930年代末には、児童文学のイラストレーターとして評価されていました。ヨゼフはハイ・アート(高尚な芸術)とロウ・アート(大衆的な芸術)を区別することなく、子ども向けの作品に対しても、同様に取り組んでいたのです。子どものテーマは、舞台美術、テキスタイル、ポスターデザイン、切手など、様々な創作活動の中で展開させています。1936年には、青少年の社会福祉に関する慈善切手のコンテストのために、子どもを描いた3種の切手をデザインしました(切手は未発行)。
第5章子どもの視点/Seeing Things Like a Child
ヨゼフ・チャペックは、1923年に娘のアレンカが生まれると、素直で自由な子どもの視点を、親として体感することになります。そして、娘が5歳になった1928年頃、ヨゼフが40代になった頃から、彼の創作活動の中での「子どもの時代」がはじまります。遊ぶ子どもを飽くことなく何枚も描いただけでなく、子どもの表現を通して自らの作品を深化させました。それまでは、子どもの造形表現がより深く理解できるようになったのです。《子どものモチーフ》というパステルの連作は、1935年に初披露され、翌年にはヴェネツィア・ビエンナーレで、チェコスロヴァキアの現代芸術を代表する作品として展示されました。
開催概要
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会 期:2018年7月1日(日)~9月9日(日)
会 場:芦屋市立美術博物館 第1展示室、第2展示室
時 間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休 館:月曜(ただし7月16日は開館、7月17日は休館)
入館料:一般800(640)円、大高生600(480)円、中学生以下無料
*同時開催「芦屋の歴史と文化財」展の観覧料も含む。()内は20名以上の団体料金。高齢者(65歳以上)および身体障がい者手帳・精神障がい者保健福祉手帳・療育手帳をお持ちの方ならびにその介護の方は各当日料金の半額になります。
*観覧無料の日:7月22日(日)、8月15日(水)
関連イベント
「子どもも楽しめる3つの美術館をまわろう!」
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阪神間で開催されている3つの展覧会で入館料の相互割引を実施。下記の展覧会の半券をチケット販売窓口で呈示すると他の2つの展覧会を団体料金で観覧できます。
※下記入館料の( )内団体割引料金
◆芦屋市立美術博物館
「チャペック兄弟と子どもの世界」展
2018年7月1日(日)〜9月9日(日)
月曜休館(7月16日は開館、7月17日は休館)
入館料:一般800(640)円、高大生600(480)円 *中学生以下無料
〒659-0052 兵庫県芦屋市伊勢町12-25
TEL:0797-38-5432
http://ashiya-museum.jp
◆伊丹市立美術館
「みんなのレオ・レオーニ展」
2018年8月11日(土・祝)〜9月24日(月・振休)
月曜休館(9月17日・24日は開館、9月18日は休館)
入館料:一般800(700)円、高大生450(350)円、小中生150(100)円
〒664-0895 兵庫県伊丹市宮ノ前2-5-20
TEL:072-772-7447
http://artmuseum-itami.jp
◆西宮市大谷記念美術館
「2018イタリア・ボローニャ国際絵本原画展」
2018年8月11日(土・祝)〜9月24日(月・振休)
水曜休館
入館料:一般800(600)円、高大生600(400)円、小中生400(200)円
〒662-0952 西宮市中浜町4-38
TEL:0798-33-0164
http://otanimuseum.jp
*会期中1枚につき1名様のみ各展1回ずつ有効。
*半券はチケット販売窓口でご呈示ください。
*他の割引との併用不可。
*半券紛失の場合は無効です。
*詳細は各館までお問い合わせください。
チャペック兄弟と子どもの世界 フォトギャラリー
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