糸のみほとけ

ARTLOGUE 編集部2018/06/19(火) - 15:52 に投稿

古来、わが国では綴織や刺繡は主要な仏像の表現技法であった。わが国最古の本格的寺院である飛鳥寺において、本尊である銅の丈六仏とともに丈六の繡仏(刺繡による仏像)が製作されたように、日本仏教の黎明期より繡仏が製作された。

さらに、飛鳥時代後期(白鳳期)には薬師寺講堂に刺繡の阿弥陀浄土図が懸けられ、奈良時代には東大寺大仏殿に観音と不空羂索観音の巨大な繡仏が奉懸された。古代において繡仏は彫刻や仏画と肩を並べる造仏の花形技法であり、しばしばお堂の本尊級とされる重要な尊像でもあった。この時期の繡仏の遺例に、天寿国繡帳(国宝、奈良・中宮寺所蔵)と刺繡釈迦如来説法図(国宝、奈良国立博物館所蔵)がある。天寿国繡帳は聖徳太子の逝去を悼む妃が太子の往生した世界を偲ぶために発願した品で、太子の時代に遡るきわめて貴重な繡仏作品である。

また、わが国では織り技法の一種である綴織の仏像もまつられた。その白眉が奈良・當麻寺の本尊・綴織當麻曼荼羅(国宝)である。この曼荼羅は緻密な綴織により阿弥陀浄土の様子を織り表した縦横4メートルという大きな作品である。世界的にも古代における綴織の仏像の大幅は伝わっておらず、きわめて貴重な品と言うことができる。平安時代に繡仏や綴織の仏の製作は衰微したが、繡仏は鎌倉時代以降再び盛んに作られるようになった。その原動力は、綴織當麻曼荼羅を織ったとされる中将姫に対する女性たちの信仰であった。彼女たちは、當麻曼荼羅を織り極楽往生を遂げたとされる中将姫に自身を重ね、綴織と同じく糸の仕事である刺繡を用い、阿弥陀来迎図や種子阿弥陀三尊図などを製作したのである。

平成30年3月、4年間にわたり行われた綴織當麻曼荼羅の修理が完成した。これを記念し、古代から近世にかけての繡仏、綴織による仏像の名品を一堂に集め、「糸のみほとけ」の世界を展観したい。この展覧会を通して、糸のみほとけが持つ魅力を多くの方に知っていただければ幸いである。

 

奈良国立博物館 公開講座

◇7月21日(土)「国宝綴織當麻曼荼羅――その図様と意義」大西磨希子氏(佛教大学教授)
◇8月 4日(土)「繡仏の世界――刺繡釈迦如来説法図(奈良国立博物館蔵)を中心に」内藤栄(奈良国立博物館学芸部長)
◇8月11日(土)「飛鳥から奈良時代における刺繡と金糸の技法の変遷」沢田むつ代氏(東京国立博物館客員研究員)
時 間:13:30~15:00(開場13:00)
会 場:奈良国立博物館講堂
定 員:194名 聴講無料
※12時から講堂前にて、入場整理券を配布します(先着順、お1人様につき1枚)。※入場整理券の受取の際には、本展の観覧券もしくはその半券、奈良博プレミアムカード等をご提示ください。
※入場受付は講座開始後30分で終了いたします。

 

関連イベント

◎オリジナル手芸作品 展示コーナー

当展覧会の開催を記念して、一般の皆様から手芸作品を募集いたします。応募いただいた手芸作品の写真を当館地下回廊で展示し、更に来館者投票上位30作品は、実物を展示いたします。
募集期間:6月11日(月)~7月6日(金)
応募作品の写真展示:7月14日(土)~8月7日(火)
投票上位作品の実物展示:8月8日(水)~8月26日(日)
展示場所:奈良国立博物館地下回廊 
応募方法:奈良国立博物館ホームページよりご確認ください。

◎綴織実演

綴織の作品がどのようにして織られたか、実演しながら分かりやすく解説いたします。
日 時:7月22日(日)10:00~16:00(10:00・13:00・15:00から解説あり)
*途中休憩をはさみます。
場 所:奈良国立博物館特別展会場 実演・解説:川島織物セルコン
*当日特別展に入館いただいた方はどなたでも見学いただけます。

◎子ども無料日

7月28日(土)・29日(日)は、子ども無料日。小・中学生は無料、同伴の保護者は団体料金で観覧できます。

◎親子向けワークショップ「織ってみよう!糸のみほとけ」

キットを使って簡単な手織りを体験しながら、展示されている綴織などについて学ぶ親子向けワークショップです。出来上がった手織り作品はお持ち帰りいただけます。
日 時:7月29日(日)①10:00~12:00②13:30~15:30
会 場:奈良国立博物館地下回廊
講 師:奈良教育大学 大学院生
対 象:小・中学生とその保護者
定 員:各回18組
参加費:無料(ただし、同伴の保護者については、本展の観覧券もしくはその半券、奈良博プレミアムカード等のご提示が必要です。)
申込方法:奈良国立博物館ホームページ応募フォームによる事前申込制https://www.narahaku.go.jp/events/2018event/ito_workshop.html
*7月2日(月)10:00より受付開始。先着順で定員になり次第、受付終了
主 催:奈良国立博物館・奈良教育大学大学院「地域と伝統文化」教育プログラム
協 力:近畿ESDコンソーシアム
問合せ:ハローダイヤル 050-5542-8600※原則、電話でのお申込受付は行っておりません。

◎天寿国繡帳の繡い方を体験しよう

刺繡工芸家・樹田紅陽氏の指導のもと、本格的な日本刺繡を体験していただく大人向けのワークショップです。出来上がった刺繡作品はお持ち帰りいただけます。
日 時:8月5日(日)13:00~16:00
会 場:奈良国立博物館会議室
講 師:樹田紅陽氏(刺繡工芸家)
対 象:15歳以上 
定 員:14名(申込多数の場合、抽選とさせていただきます。) 
参加費:1,000円(観覧料金は含まれません) 
持ち物:糸切バサミ 
参加方法:奈良国立博物館ホームページ応募フォームによる事前申込制

https://www.narahaku.go.jp/events/2018event/ito_tenjyu.html 
受付期間:6月4日(月)10:00~7月2日(月)17:00 
お問合せ:ハローダイヤル050-5542-8600(※原則、電話でのお申込受付は行っておりません)

開催概要

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会 期:2018年7月14日(土)~8月26日(日)
会 場:奈良国立博物館 東・西新館
時 間:9:30~18:00(入館は閉館の30分前まで)
*毎週金・土曜日と 8 月 5 日(日)~15 日(水)は午後 7 時まで 
休 館:月曜 (7 月 16 日、8 月 13 日は開館) 
入館料:(当日個人)一般1,500円、高校・大学生1,000円、小・中学生500円
(前売・団体)一般1,300円、高校・大学生800円、小・中学生300円
*前売券の販売は、5月14日(月)から7月13日(金)までです。
*団体は20名以上です。
*障害者手帳をお持ちの方(介護者1名を含む)は無料です。
*本展の観覧券で、名品展(なら仏像館・青銅器館)も観覧できます。
*7月28日(土)、29日(日)は子ども無料日です。小・中学生は無料、同伴の保護者は団体料金で観覧できます。

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