維新派 最後の公演「アマハラ」 フォトレポート & 会見全文掲載

ARTLOGUE 編集部2016/10/17(月) - 15:41 に投稿

主宰の松本雄吉さんが亡くなり、解散を表明している維新派の最後の公演「アマハラ」が、奈良の平城宮跡にて開催しています。

平城宮跡は20年以上前に、主宰の松本さんが友人から紹介されて以来、そこでの公演を望んでいましたが、これまで許可が下ませんでした。今回、東アジア文化都市に招へいされたことにより、とうとう実現されましたが、それが維新派の最後の公演となるというは運命的でもあります。

今回の「アマハラ」は、2010年に上演した「台湾の、灰色の牛が背のびをしたとき」の改訂版でもありますが、松本さんは「新作と見まがえるような再演をする」と言っていたように構成は大きく変わっています。

舞台は、「海なし県に船が来たら面白いんとちゃうか」と、草原に巨大な廃船が作られました。維新派最大級の大きさの舞台はそれ自体がアート作品と言えるほどの存在感があります。

内容は20世紀初頭、繁栄を求めてアジアの島々を目指して進出していったものの、第二次世界大戦によって全てが滅んでしまった日本人たちの記憶が、船・航海という時間の流れのメタファーのような舞台上で展開されます。
金色に輝く草原に向かう廃船の演出は圧巻で、まるで維新派のそれぞれが新しい大海原への旅立ちを表しているようにも思えます。

「小川信治−あなた以外の世界のすべて」千葉市美術館 フォトレポート

ARTLOGUE 編集部2016/10/17(月) - 03:31 に投稿

小川信治は「世界とは何か」をテーマに、西洋名画や観光名所など人々の見慣れたイメージを改変し、鑑賞者の感覚をゆさぶる作品を作っています。

レオナルド・ダ・ヴィンチやフェルメールといった誰もが知る名画を忠実に模写し、そこから中心となる人物を抜き去った「Without You」シリーズや、写真や古い絵葉書を元に人物や建物など同じモチーフを二つ並べて描き込む「Perfect World」、モン・サン・ミッシェルを思わせる形のなかに様々な国や時代の建築様式を組み込み、幾通りもの風景を現した「モアレの風景」など、油彩や鉛筆といった伝統的な技法を用いながら、多様なシリーズが生み出されました。

首都圏の美術館において初の個展となる本展では、代表作から、近年の新たなシリーズ、また、一つの風景が層状に組み換えられ別の風景へと循環していく《干渉世界》など、小川による様々な試みがご覧になれます。

 

「装う」を見つめ直す ―アーティスト西尾美也の可能性

北原一輝2016/10/15(土) - 00:02 に投稿

皆さんは朝、家を出るときなぜその服を着ているのでしょうか。

街でスーツを着ている方を見たらあなたはその人は何をしている人だと思いますか?セーラー服を着ている女性を見かけたらどんな人だと思いますか?
私たちは、女性なのか男性なのか、学生なのかサラリーマンなのか、様々なことを服で判断しているのではないでしょうか。
鷲田清一の著書『ひとはなぜ服を着るのか』の中でも、「性差が服装の差異を決めるというよりも、服装の差異が性差をかき立てる」と、記されています。
個人的な体験ですが、スカートを履いて街を歩くと、嘲笑されることもあります。男性とスカートの組み合わせは、一般社会では異質なものとして映るようです。
このように、服が1つの判断基準となっているからこそ、毎朝、自分の社会的役割に応じて無意識に何も疑うこと無く、服を選んでいるのかもしれません。
 

ここでご紹介する西尾美也さんは、そんな、装うことに対し考えるきっかけを与えてくれるアーティストです。

西尾さんは衣服をメディア(道具・媒介するもの)として捉え、衣服を用いた作品を通じて、我々の生活における最も身近な文化、「装う」という行為に対し揺さぶりをかける作品を数多く発表しています。

「クリスチャン・ボルタンスキー アニミタス-さざめく亡霊たち」 東京都庭園美術館 : フォト & ビデオレポート

ARTLOGUE 編集部2016/10/11(火) - 18:18 に投稿

フランス現代美術界の巨匠クリスチャン・ボ ルタンスキーの展覧会が東京都庭園美術館で開催中です。

ボルタンスキーは、映像作品やパフォーマンス性の高い作品を 制作していた初期から現在まで一貫して、歴史の中で濾過される記憶の蘇生、匿名の個人/集団の生(存在) と死(消滅)を表現してきました。

会場の東京都庭園美術館は、旧朝香宮邸(1933年竣工、国の重要文化財)であり、アール・デコ様式の邸宅を改築した美術館です。 中に入ると一見、邸宅の調度品以外は何もないように思いますが、歩いていると、どこからともなく誰かの声が聞こえてきます。 これは、ボルタンスキーが旧朝香宮邸に往来していた人たちや、そこでの会話を想像し、しかし、実際に起きたことではなく、時空間を超越した匿名の存在としての「亡霊たち」に語らせた言葉です。
他にも、かつて書庫だった部屋では豊島でサンプリングされた「心臓音のアーカイブ」(2010年)より提供された、「誰か」の心臓音に合わせて電球が明滅する《心臓音》(2005年)や、大量の古着を黄金のエマージェンシー・ブランケットで覆った巨大な山のような《帰郷》(2016年)なども展示されています。

「太陽の塔」 内部再生前最後の内覧会。 「生命の樹」からBGM「生命の賛歌」まで、全て見せますフォト & ビデオレポート

ARTLOGUE 編集部2016/10/07(金) - 16:20 に投稿

先日、ARTLOGUEでも「太陽の塔」改修前、最後の内覧会の募集ニュースをお届けしましたが、10月29日(土曜日)の一般向け内覧会に先立ち、メディアへの公開がありましたので、どこよりも詳細にお伝えします。

今回は500人の募集に対して、約8万人の応募があったようです。160倍の確率を射止めた方は楽しみにしていてください。 もし、ハズレてしまった方は、2018年3月のリニューアルオープンを楽しみにしましょう。

「アニッシュ・カプーア個展」 SCAI THE BATHHOUSE フォトレポート

ARTLOGUE 編集部2016/10/01(土) - 07:15 に投稿

インド、ムンバイ生まれのアーティスト、アニッシュ・カプーアの個展が谷中にあるSCAI THE BATHHOUSE にて開催されています。日本でのカプーアの個展は5年ぶりになります。
カプーアの作品には、ステンレス、大理石、ワックスやコンクリートなど実に様々な素材が使用されています。 濃い青色などに塗られた浅いくぼみの作品はどこまでも続く深淵に見え、また、ステンレスの作品に映り込む予期せぬ風景は、鑑賞者を混乱させます。

今回の出品作品は、彫刻だけでなく平面作品や、カプーアが構想している空想上の建築作品の20分の1スケールの建築模型も4点展示されています。
全体は、シルバーや黒などモノトーンでまとめられ、いわばカプーア作品の本質的な部分が抜き出されたか のような展示になっています。

「森村泰昌展 「私」の創世記」 MEM、NADiff a/p/a/r/t フォトレポート

ARTLOGUE 編集部2016/10/01(土) - 06:38 に投稿

森村泰昌さんの80 年代から 90 年代かけて制作された初期の写真作品を紹介する展覧会が、3部構成で恵比寿にある NADiff A/P/A/R/T にて開催されています。

第一部「 卓上の都市」では、セルフポートレートで有名な森村さんの事実上のデビュー作《肖像(ゴッホ)》を発表する直前 に取り組んでいた「卓上のバルコネグロ」と題された静物写真のシリーズです。
第二部「 彷徨える星男」では、90年に制作されたデュシャンへのオマージュであるビデオ作品「星男」を上映。後頭部を星型に刈り込んだ森村さんは必見です。
第三部「 銀幕からの便り」では、90年代の初期の貴重なビデオ作品をまとめて上映しています。

また、1FのNADiffでは、森村さんの著書や関連書籍を集めた、森村泰昌ブックフェア 《「私」の創世記》も開催しています。

怖くてアートな写真たち : マースデン、ホフィン、ストッダード、マッキニー、ソベラッツ

鈴木拓也2016/10/01(土) - 00:17 に投稿

筆者が、アマチュア風景写真家として活動していた、少々前の話になります。

夜景の撮影に熱中していた一時期、肝試しを趣味にする人たちのことを知って、ふと「心霊スポットの夜景を撮るのも一興ではないか」と思いつきました。そこで、その手の書籍や雑誌を何冊も読んで、心霊スポットの場所をリストアップし、5年かけて200か所近く、そういった場所を回りました。深夜にブランコがひとりでに揺れるという東京の谷中霊園から、貴族の令嬢の霊が出るロンドン郊外の古びた館に至るまで、様々な場所に出かけては写真におさめたものです。

ハワイの忘れ去られたような墓地や、北海道の人里離れたホテルの廃墟といった「知る人ぞ知る場所」は、それ自体が幻想的な絵になります。これにくわえて、幽霊が写ってくれたら、前衛的なアートして一級品になるかも、とひそかに期待しました。

しかし心霊写真は1枚も撮れず、写真熱も冷めてしまい、それっきりになってしまいました。

さて…世の中は広いもので、自分に似た考えで写真を撮り続けるアーティストが何人もいます。さすがに心霊写真を狙う酔狂な人は稀ですが、「怖い写真」というコンセプトで、コンテンポラリーアートとして成立させることに成功した写真家もいます。

今回は、そういった写真家の中から、筆者がえりすぐった人を紹介します。

腹が減ってはアートは観れぬ。 注目の展覧会とオススメ ランチ 5選 2016年 秋

ARTLOGUE 編集部2016/09/21(水) - 23:37 に投稿

みなさん、お腹はへっていますか?
僕はへっています。

美術館に展覧会を観に行っても、お腹が空いていては集中して鑑賞もままならないですよね。
みなさんも、展覧会に出かける時に周辺の飲食店を調べて足を運んだこともあるのではないでしょうか。
かく言う僕も、CURATORS TVの取材時に全国47都道府県を行脚していたのですが、行く前には必ず郷土料理や飲食店のリサーチをしていました。

せっかく出かけるのだから、出来れば美味しいものを食べたいのが人の心です。
そこで、グルメなアート業界人なら美味しいお店を知っているはずだということで、全国で行われている注目の展覧会の関係者に、周辺で食べられるオススメのランチを紹介して頂きました。

これを見てアートなお出かけをより一層充実したものにしてください。

おしながき

  金氏徹平のメルカトル・メンブレン
オススメ人:金氏徹平さん(美術家)

「六甲ミーツ・アート 芸術散歩 2016」 フォトレポート

松宮 宏2016/09/16(金) - 03:00 に投稿

松宮宏@小説家です。 かって気ままにアートをリポートします。

やっぱり自然はいいなあ、神戸は六甲山がいいなあ、山にアートがあるのがいいなあ。
ということで六甲ミーツ・アート 芸術散歩2016、はじまりました。
開催場所は海抜900mあたり。神戸ダウンタウンより5~6℃気温が低い。風は清々しい。 高山植物いっぱい、芝生いっぱい、酸素いっぱい。
作品説明を見て、疑問があったら作家をつかまえて質問。「ふうん、そういうことなのね」。作り手には作品に込めた想いがあるでしょうが、どう思うかは鑑賞者の勝手。想いが素直に伝わって幸せ、「ぜんぜんわからない」と言いながら、「おや?」と、意外な発見があって幸せ。どっちもあり。

こういう環境で制作して設置するんだから、作家も自然にどう寄りそうか考える。
素材、色、仕様を工夫し、地べたに、木の幹に、そっと置く。
自然に溶けこむアート。自然の中で日々朽ちてゆく。
それがどういう意味を持つか、それも含めてアート。
ひとりで作品に対峙したり、家族で笑ったり、どう感じるかは、鑑賞者の自由。
お気にめすまま。