柳原義達―ブロンズ彫刻と原型

ARTLOGUE 編集部2018/12/09(日) - 17:38 に投稿

ブロンズ彫刻は、粘土等で形作られた作品を石膏や樹脂などに置き換え、それを「原型」として鋳型を製作、熱した銅合金を流し込み鋳造したものです。粘土自体は加工がしやすい反面、変形しやすく長期保管が困難なこと、鋳造の直接の型としては使用できないことから、原型の製作段階で消滅するのが一般的です。

三重県立美術館は、2002年、彫刻家・柳原義達氏から72点のブロンズ作品の寄贈を受け、その後、主要な作品の原型もあわせてご遺族よりご寄贈いただきました。

ブロンズ鋳造の過程においては、職人の高い技能だけでなく、仕上げの着色にいたるまで彫刻家本人による確認作業が重要です。そのため、当館は現在保管している原型を、柳原氏が亡くなられて以降、新たな鋳造が行われないよう管理してまいりました。しかしながら原型は、柳原氏が直接修正を加えたものであり、ブロンズ作品にはない魅力があることから、展示可能な状態へと修復する作業を4か年かけておこない、昨年無事終えることができました。

今回はその記念の展覧会となりますが、ブロンズ作品と原型がまとまったかたちで多く展示されるだけでなく、初展示の作品《天女のマケット》や《風見の鶏》なども含めてご紹介いたします。
 

パラランドスケープ “風景”をめぐる想像力の現在

ARTLOGUE 編集部2018/12/09(日) - 17:09 に投稿

普段何気なく見ている風景も、見る人の背景にある文化や生活が異なれば印象や読みとる情報も変化します。それは、数々の詩や物語、芸術作品や映像が、風景に対する私たちの感受性や想像力を育て、文化的アイデンティティを形づくってきたためです。いま、SNSの普及やテクノロジーの進展によって、私たちの視覚体験は空間的・時間的な制限を超越し、日常で目にする風景の質も大きく変化しています。その変化は、新しい認識をもたらす一方で、固有の文化・風土に根差した風景への感受性を均質化し、地域の景観や共同体の破壊にもつながりかねない危険性をはらんでもいます。

いま、眼の前にある生の“風景”と切実かつ親密によりそうためには、どのような想像力のはたらきが有効になるのでしょうか。この問いと向き合うための機会として「Para-Landscape」展は企画されました。美術館の5つの空間を舞台に5名のアーティストが作りだす、それぞれの”風景”=パラランドスケープがそのヒントを与えてくれるでしょう。
*「Para-」…「~を越えて」あるいは「~とともに」「~にそって」を意味する接頭辞。

〈出品作家〉
伊藤 千帆、稲垣 美侑、尾野 訓大、徳重 道朗、藤原 康博
 

ドアノーの愛した街パリ<br>ROBERT DOISNEAU 展

ARTLOGUE 編集部2018/12/08(土) - 20:30 に投稿

ロベール・ドアノー は世界で最も人気のある20世紀を代表する写真家です。パリ郊外のジョンティイに生まれ、石版画を学んだ後、18歳頃より本格的に写真の世界に入ります。雑誌『ヴォーグ』や『ライフ』などに写真を提供し、短編映画の制作に携わる傍ら、生涯に渡りパリとパリに生きる人々を撮影し続けました。

雑踏の中を自由に歩き廻りとらえた数々の情景は、ドアノーの持つ洗練されたエスプリとユーモアで鮮明に写しだされています。カメラという機械を感じさせない彼の写真は、まるで一瞬のドアノー自身のまばたきであるようです。「写真は創るものではなく、探すものだ」というドアノーの言葉の中に、数々の作品を生み出していった彼の確たる姿勢が感じられます。

本展は、何必館コレクションの中から、「子供達」「恋人」「酒場」「街路」「芸術家」の5つのテーマで構成し、サイン入りオリジナルプリント約60点の作品を展覧いたします。この機会に是非ご高覧下さい。

何必館・京都現代美術館長 梶川 芳友



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「不思議の国のアリス展」神戸展

ARTLOGUE 編集部2018/12/07(金) - 21:55 に投稿

イギリスの作家、ルイス・キャロルの名作「不思議の国のアリス」は誕生から約150年を迎え、すでに170もの言語に翻訳され、初版から毎年途切れることなく出版され続けている世界的ベストセラーとなっています。少女アリスが迷い込む不思議な世界とキャラクターは、今もなお、国や地域、年齢を問わず多くの人を魅了し続けています。

本展は「不思議の国のアリス」の原点や、現代に至るまで、様々な分野に影響を与え続けるこの物語の魅力を、日本初公開を含む貴重な作品と共に紹介します。

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内山聡「stripe(s) 」

ARTLOGUE 編集部2018/12/07(金) - 20:05 に投稿

内山はこれまで「平面絵画とは何か?」を問い、この15年作家活動を続けてきました。同時に、決して高度な技巧を要さず、ひたすらに単純作業を繰り返すこと、労働として関わった時間が集積して物質化されるものが、美術作品になり得ることを提言してきました。

例えば、「It’s growing up」(2009~2015)では、10色の紙テープを無作為に選び取り、ただひたすらに巻き続けた作品や、エアセルマットの無数の気泡に絵の具を注入したシリーズ「injected painting」(2014~2017)など、果てしない単純労働の積み重ねが美術となり、それらをあえて平面絵画として発表することを続けています。

今回発表する「stripe(s)」も同じテーマのもと制作されています。様々な色の糸を作家自身の両腕を広げた長さに切り、支持体に何万本も単に括り付け垂らした状態を作品として展示します。

それらは今後も無限に続く作業の、ある段階に過ぎないのかもしれません。この機に内山の「平面絵画」をぜひご覧ください。