DNPグラフィックデザイン・アーカイブ収蔵品展Ⅷ:蔵出し 仲條正義
日本のグラフィックデザイン界において独特の光を放つ存在、仲條正義(1933-)は、資生堂の企業文化誌『花椿』のアートディレクションや、資生堂パーラーのロゴ・パッケージのデザインで広くその名が知られています。彼の作品は非常に力強く、ただの「モノ」を超えたある種の力場が内包されているように感じられます。それは、中條自身が「円、方形、直線、すでに美しいとされるものは信じてはいけない」と述べている通り、既存の価値観を妄信することなく、常に他者や自分自身にすら疑問を持ち、時には矛盾や他者からの誤解をも恐れないで新しい表現を追求し続けるという姿勢から生まれるものではないでしょうか。そこから創出された作品の持つ「力」は、今なお若いデザイナーやクリエイターたちをもひきつけてやみません。
本展では、グラフィックデザインをはじめ編集・広告・アートディレクションなど、多方面で活耀する中條の仕事の中から、ポスターを中心に展示します。1970年代に開催された初個展の出品作品から最近作に至る約半世紀を展観し、彼のデザイン世界の軌跡をたどります。また中條が約40年間にわたりアートディレクションを手掛け、先鋭的なカルチャー誌というイメージを作り上げた資生堂『花椿』誌の一部もあわせて展示します。
新古や美醜、巧拙といった二元論的評価の枠には収まらない、中條デザインのもつ独特の世界観に触れる機会となりましたら幸いです。