岡山城・岡山後楽園周辺エリアの様々な歴史文化施設を舞台に展開される芸術祭「岡山芸術交流 2019 IF THE SNAKE もし蛇が」が、2019年9月27日(金)に開幕しました。「岡山芸術交流」は、岡山市で3年ごとに開催される国際現代美術展で、2016年に初めて行われました。第2回となる今回は、フランス・パリ生まれで、現在はニューヨークを拠点に世界的に活躍しているピエール・ユイグ氏をアーティスティックディレクターに迎え、9か国18組のアーティストが参加。岡山市長の大森雅夫氏が会長を務め、公益財団法人石川文化振興財団理事長でストライプインターナショナル代表取締役社長の石川康晴氏が総合プロデューサーを、TARO NASU代表の那須太郎氏が総合ディレクターを担っています。
今回、約40点の作品が展示されており、旧内山下小学校をメイン会場に、旧福岡醤油建物、岡山県天神山文化プラザ、岡山市立オリエント美術館、岡山城、シネマ・クレール丸の内、林原美術館など、岡山市内各所で展開。すべてが徒歩で動ける距離なので、移動の負担が軽減されるのが嬉しいところ。
タイトル「IF THE SNAKEもし蛇が」という謎めいたタイトルの本展覧会は、作品同士が共鳴しあい、独立した一つの生命体としてとらえられており、展覧会全体が広範囲にわたる生存形態や、無生物、科学技術によって特徴づけられた複雑なシステムとしてあらわれるユイグ作品の世界観を彷彿させるものとなっています。ユイグ氏は「今回タイトルは付けましたが、テーマは設けていません。展覧会の見方を提示するより、偶然にそれぞれの作品と出会い、感じることが大事。参加作家の知性、鑑賞者の知性を信じるのみです」と語っています。
メイン会場である旧内山下小学校には、パメラ・ローゼンクランツ氏のピンク色をしたプール作品《皮膜のプール(オロモム)》が展示。ローゼンクランツ氏は、液体に含まれている物質を「オロモム」という造語を使い、プールがどの位の深さか、また何が入っているのかよくわからない不透明さを表現。プールを独立した一つの作品として提示していますが、他のアーティストの作品とも呼応するものを含んでいます。
同じく旧内山下小学校では、ユイグ氏とマシュー・バーニー氏と共同プロジェクト《タイトル未定》を発表。
バーニー氏の電気めっきタンクには、両面にエッジングの施されたアスファルト塗装の銅板が設置されています。会期中、常に電気めっき加工が行われるので、銅板の表面には付着物が集まり続け、エッジングが徐々に抽象化され、最終的に一つの銅の物体になります。このタンクの作品は、同じ部屋に水槽を展示しているユイグ氏との対話から生まれたもの。展覧会終了後、電気めっきされた物体は電解液から取り出され、二人のアーティストのコラボとして、カブトガニやサンゴなどの生き物が入ったユイグ氏の水槽に移されます。
岡山県天神山文化プラザで展示されているミカ・タジマ氏の作品《ニュー・ヒューマンズ》は、人工的な「ヒト」の新しい集まりが、黒い磁性流体のプールの表面に立ち現れます。
機械学習プロセスによって生成された活発な磁性流体は、まるで超自然的な生命体がその姿を変形させているかのよう。作品は、「ユーザープロフィール」という考え方を大胆に概念化して、どうすれば輪郭が定義不可能で多様に存在する「自己」を具現化できるかという問いを投げかけます。磁気をはらんだ物体は、新しい人の存在を模索させます。
旧福岡醤油建物では、エヴァ・ロエスト氏のVR作品《自動制御下》(2017)を体感できます。
作品中の画像は、大西洋を横断する飛行機の機内で眠っている乗客の3Dスキャンを記録したもの。カメラは、元はビデオゲーム業界で開発されたセンサーカメラで、コントローラーを使用せずともプレーヤーが直接シミュレーション内でふれあうことができるモーションキャプチャーデバイスです。このツールは人体を記録するために特別に作られたもので、空港のセキュリティにある「全身スキャン」のような生体認証ツールとして使用される技術でもあるそう。
「岡山芸術交流」の連携プロジェクトとして、岡山に世界的に活躍する現代美術アーティストと日本人建築家がタッグを組んでデザインした宿泊施設を作っていく取り組み「A&A」も行われています。第一弾として、2019年10月7日(月)より、2つの宿泊施設「A&A ジョナサン ハセガワ」と「A&A リアム フジ」がオープン! 建物はすべて1棟建てのプライベートタイプとなっており、今後20年をかけて増えていく予定だといいます。本プロジェクトはディレクターに那須氏、アドバイザーに建築家の青木淳氏を迎え、公益財団法人石川文化振興財団理事長の石川氏がプロデューサーを務めます。
例えば、「A&A ジョナサン ハセガワ」は、ベルリンを拠点とするアーティスト ジョナサン・モンク氏と、気鋭の日本人建築家 長谷川豪氏の二人が手掛けた宿泊施設。天井が低く落ち着いた雰囲気の寝室、庭と一体化した縁側のようなエントランス、日本三大庭園の一つである後楽園を望む展望台のような浴室と、それぞれが全く異なる個性を持った3つの空間を行き来することができます。
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まるで岡山に暮らしているような感覚を覚える宿泊施設で、長谷川氏曰く「特別な経験、忘れられない体験ができる」宿だそう。
最大6名まで宿泊可能で、価格は時期によって変動しますが、8万円~15万円で宿泊可能です。
「岡山芸術交流」の作品を巡るも良し、「A&A」に宿泊して芸術祭を堪能するも良し、様々な体験ができる岡山に、ぜひこの秋足を運んでみてはいかがでしょうか?
■岡山芸術交流2019 IF THE SNAKE もし蛇が
会期:2019年9月27日(金)~11月24日(日)
開催時間:9:00~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜日(10月14日[月・祝]、11月4日[月・祝]は、翌火曜日休館)
会場:旧内山下小学校/旧福岡醤油建物/岡山県天神山文化プラザ/岡山市立オリエント美術館/岡山城/シネマ・クレール丸の内/林原美術館/岡山市内各所
料金:一般 1800円/一般(岡山県民) 1500円/学生(専門学生・大学生) 1000円/65歳以上 1300円/団体(8名以上) お一人様あたり 1300円/高校生以下無料