家は日常生活の背景であり、多くの人にとってほとんど意識に上ることがないものかもしれません。しかし家は、社会に生きる人の生活を映し出すものであり、それをつぶさに見つめることは、社会の一端に触れることに他なりません。私はこうした考えに基づき、作品制作を通じて、自身の暮らしてきた現代の日本の家について考えてきました。本展ではこの一環として、家をモチーフとしたインスタレーション作品を展開します。
本展を構成するのは、現代の日本の家に用いられるような木材を下地に、落ち着いた色味の壁紙と床材、そして温かい光を灯す照明器具を組み合わせた、立体的な造形物です。それはまるで現代の日本の家そのもののようですが、実在する家を再現したものではなく、住むための機能もありません。そこに現れるのは、今日の私たちにとってなじみ深い、穏やかで感じの良い住環境と、似て非なる空間です。本作を通じて、かつて抽象画が具象画からエッセンスを抽出したように、具体的な家からエッセンスを抽出し、抽象的な「家」を成立させることを試みます。
本展では展示空間全体を、一つのモデルハウスに見立てます。モデルハウスもまた人の住まない家であり、一般化された理想的な住環境がモデルとして提示される点において、抽象的な「家」であると考えます。私はこの「家」によって、今日の私たちの生活とその周囲に広がる社会がいかなるものなのかを問いかけたいと思います。
(2018年11月 松井沙都子)
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開催概要
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会 期:2018年12月15日(土)~12月24日(月・振休)
会 場:京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA
時 間:11:00~19:00
休 館:12月17日(月)