「深みへー日本の美意識を求めてー」展

ARTLOGUE 編集部2018/07/06(金) - 18:01 に投稿
㊧国宝 <火焔型土器> 十日町市博物館所蔵 前 3,500~2,500 年 ㊨ANREALAGE, collaboration with NAWA Kohei | SANDWICH, ANREALAGE 2017-2018 autumn & winter collection “ROLL” 

 

伝統と現代、混沌と形式、永遠と一瞬、2つで1つとなること‐

「日本の美意識」がひらく共存、共創への可能性。

 

本展は、パリの中心に位置する19世紀に建てられたロスチャイルド館において、伝統的な作品と、現代の作品をあわせた展示を通して、日本の美意識を見せます。例えば縄文土器と、それから想をえた、若手デザイナーのアンリアレイジによる彫刻ドレスは、異なる芸術的ジャンルと異なる時代の間に存在する調和を表す完璧な例であり、日本の美意識に特徴的な価値のひとつである「生命感」を表しています。「プリミティヴィズム」、「異種混淆」、「引き算の美学-ミニマリズム」、「物質の変容-錬金術」、「軽みの哲学」、「新生-繰り返される再生」、「変化-生命の表現」などさまざまなテーマや媒体の多様性(絵画、インスタレーション、写真、ファッション、彫刻など)を通して、この展覧会は伝統と革新の二つの要素が一つになっている日本の美学に新しい視点と理解をもたらします。

 

■展覧会企画趣旨

極東にあり、北から南へわたる気候と四季の変化に富んだ列島であ る日本の芸術文化は、自然と豊かな関係をもち、そして他の場所から 隔てられている事に依って、独自の文化の受容と展開をしてきました。 日本の美意識 、思想の特徴は、静と動 、男性性 と女性性 、善 と 悪、形式とカオス、永遠と一瞬、バロックとミニマル、伝統と現代、などの異なる/対立する要素を包含 し、その間を揺れ動きながら「二つで一 つ」として共存させている動態の中にとらえられるといえます。 その背景には、主体と客体や自然と社会を分離する、西洋の人間 中心主義とは異なり、自然、環境と一体となりすべてのものに霊性をみ とめていくアニミズム的思想があります。これはひとつは、他者の文化を取り込むとき、批評的フィルターを経る事なく、模倣と遊び心や好奇心によ る自由選択を通して、《日本化》する方法につながります。 また西洋のように空間の中の秩序や形といった「実体的な美」でなく、 より時間性と関係性を重視した「状況の美」を特徴とします。外の文化 の自由な取り込みと、場に対して開かれた関係性を重んじる日本の文化は、生命活動や細胞の新陳代謝にも似たダイナミズムと活気をもっています。

テロや移民問題に悩み、人間が地球をとりまく環境のほとんどをコントロール下におく「人新世」と呼ばれる現代。解決の方向を模索する現在のフランスーヨーロッパにおいて、本展は現在と過去、異種の要素の間の共存、共創を示唆する、日本から発信するステイトメントといえましょう。本展タイトル「深みへー日本の美意識を求めて」、は従来の日本の美に対するクリシェを超えてよりその本質、深みへと沈潜していただきたいという観客への呼びかけが込められています。

そしてその深みにはいるために、展示空間には多くの異なるものの創造的関係を体験していただくための対話的構成がなされています。天井画やシャンデリアによって装飾された 19 世紀フランスの華麗な館に置かれた 5000 年余の時をわたる作品群。空間デザインに建築家の SANAA を迎え、透明でミニマルな浮遊感に満ちた展示は、作品の出自を無化し、対象との純粋な出会いの場に観客を導きます。

歴史的な作品と現代作品を併置、また日本と西洋の作家を合わせて展示する歴史横断的な、国際的な対話的構成は、日本の美に対して、新たな視点と発見をもたらします。各部屋は次の 10 のテーマに基づいて構成され、25 人の作家及びプロジェクトによる、100 余点の作品が展覧されます。そしてその根底を流れるものは「生命の表現」なのです。

10のテーマ

「バロック・過剰 」、「原初の創造のエネルギープリミティヴィズム」、「錬金術 ・自然の霊性を引き出す錬金術 」、「引き算の美学—ミニマリズム」、「生命力の根源をもとめて—南へ」、「デジタル時代の風景画—「環境」にふれる」、「“主体化”する風景/軽みの哲学」、「新生—繰り返される再生」、「異種混淆、共生」、「無限の変容体」

19 世紀のジャポニスムが、世界や自然にむけての新たな見方や美学を示した第一弾のインパクトだったとすれば、本展は、第二弾として、2018 年の現在のパリ、そしてヨーロッパの人たちに、多様で刺激的な《関係性》の構築と、想像力の響き合いを見せることとなるでしょう。

長谷川祐子(本展キュレーター)

 

■出品作品・作家等一覧

(敬称略、順不同) 縄文土器、円空、白隠、仙厓、葛飾北斎、柴田是真、田中一村、 李禹煥、宮田亮平、原口典之+田中泯、杉本博司、SANAA、 須田悦弘、大巻伸嗣、ANREALAGE+名和晃平|SANDWICH、 真鍋大度、澤田真一、平岡良、森山未來+ジュスティーヌ・エマール、 ポール・ゴーギャン、パブロ・ピカソ、アンヌ・ロール・サクリスト、 「独客」田中一村映像プロジェクト、知里幸恵編訳-アイヌ神謡集-展示プ ロジェクト

 

■開催概要

会 期:2018 年7月14 日(土)~8 月21日(火)
7月23(月)と 8/6(月)は閉館
会 場: ロスチャイルド館(Rue Berryer 11、パリ市 8 区)
時 間:11:00~20:00(最終入場 19時

 

『ジャポニスム2018:響きあう魂』

日仏友好160年の本2018年、両国政府間合意に基づき、芸術の都フランス・パリを中心に、大規模な日本文化・芸術の祭典「ジャポニスム2018:響きあう魂」を開催します。

本企画では、パリ内外の100近くの会場で、展覧会や舞台公演に加えて、さまざまな文化芸術を約8ヶ月間にわたって紹介していきます。古くは日本文化の原点とも言うべき縄文から伊藤若冲、琳派、そして最新のメディア・アート、アニメ、マンガまでを紹介する「展示」や、歌舞伎から現代演劇や初音ミクまで、日本の文化の多様性に富んだ魅力を紹介する「舞台公演」、さらに「映画」、食や祭りなど日本人の日常生活に根ざした文化等をテーマとする「生活文化 他」の4つのカテゴリーで東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を前に、日本各地の魅力をパリに向け、また世界に向けて発信します。

会 期:2018年7月~2018年2月
事務局:独立行政法人国際交流基金
ジャポニスム2018公式サイト:https://japonismes.org/

 

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