草間彌生

草間彌生 - 近作版画を中心に-

ARTLOGUE 編集部2018/11/07(水) - 15:30 に投稿

「アート」を凌駕し、ファッションやライフスタイルなど、「文化」という巨大な枠組みにおけるアイコンとして、日々私たちに驚きとパワーを与え続ける前衛芸術家、草間彌生。

反復し増殖するドットやネット、鮮麗な南瓜や花は、永遠のテーマである「命」や「愛」を雄弁に語るとともに、「孤独」や「強迫観念」との葛藤にもがく作家の姿をも同時に映し出しています。

このたび当館では、草間彌生が手がけた初の浮世絵版画《七色の富士》、《富士は心の故郷》、《わが心の富士はかたる》を展示いたします。

伝統ある木版画技法を用い、アクリル絵画が版画として新たに生まれ変わった《七色の富士》。
山頂付近から顔を出す太陽は、私たち、あるいは世界中のあらゆる万物に対して微笑みかけているかのようです。稜線が描く豊かな裾野や、穏やかにさざめく水面、富士山の背後からあふれ出る14,685個の水玉に至るまで、一つひとつ原画に忠実に彫り起こされています。

さまざまな恐怖に抗うため、ただひたすらに芸術に精魂を注ぐ。
迷いなくこう語る草間彌生は、90歳を目前とした今、絶えず七変化しながら私たちを魅了する日本の象徴「富士山」に自らを重ね合わせ、挑まずにはいられなかったのかもしれません。

海を渡った画家たち -時の共演-

ARTLOGUE 編集部2018/11/07(水) - 14:55 に投稿

めまぐるしく流転する斬新な表現や、高値で作品が取引されるマーケットが賑わいを見せる世界のアート・シーン。

ここ日本でもすっかり「現代美術」という言葉が耳に馴染み、ハイ・カルチャーとサブ・カルチャーが入り混じるハイブリッドな様相は、海外からも熱い注目を集めています。
しかしその舞台の中心が、未だ欧米にあるのはなぜでしょうか。

「世界」と「日本」を隔てる壁は、さかのぼれば戦後を生きる画家たちの前にも同様にそびえ立っていました。海外へ一時的に渡航した作家らによってもたらされた西洋趣味への傾倒に拍車がかかっていた、当時の日本。
一方では、かりそめの流行に疑問を呈し、あえて異国の美術界の荒波へ身を投じた海外組や、彼らに刺激を受け、国内で独創性に富んだ作品を生み出した者も現れました。

不器用なほどひたむきに生きた画家たちの鬼気迫る作品群が、軽井沢現代美術館のコレクションの中心となっています。
当館の創設者・谷川憲正(東京・海画廊創業者)には、美術館の開館が実現した後にも描き続けたもうひとつの夢がありました。それは、私たちと同時代に生きるアーティストと、戦後美術の精鋭たちとのコラボレーション。

Flash(フラッシュ) 1979/1988

ARTLOGUE 編集部2018/10/07(日) - 18:46 に投稿

原美術館が開館した1979 年と、ハラ ミュージアムアークが開館した1988 年その両年に焦点をあて、それぞれの年に制作された作品をご紹介いたします。


ハラ ミュージアム アークは創設30 周年を迎えました―
1979 年、全国的な美術館設立ブームに先駆けて、原美術館(東京都品川区)は創設されました。その別館としてハラ ミュージアム アーク(群馬県渋川市)が開館したのは 1988 年、元号が昭和から平成へと変わる前年、いまから 30 年前のことでした。本展では、このふたつの年にスポットを当て、両年に生み出された作品の数々を、原美術館コレクションより展観いたします。
 

出品作家:アンゼルム キーファー/イケムラレイコ/オノサトトシノブ/大竹伸朗/操上和美/クリスト/トム ウェッセルマン/野田裕示/フラビオ シロー/真木智子/宮島達男/黎 志文/李 禹煥/ルイーズ ニーヴェルスン など
長期展示作家:草間彌生/束芋
出品作品数:約30 名、約40 点。常設作品、長期展示作品を除く。

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Column/ 惑生探査記:シャッター音の周辺

嵯峨実果子2018/05/03(木) - 23:05 に投稿

荒木経惟のモデルをしていたKaoRiさんが、これまでの仕事に関して黙していたことをブログに投稿し、様々な反響を呼んだ。

彼女は16年間ミューズとして度々写真に登場していたけれど、これまで彼女が主な被写体となったものの出版に関しては事前の相談もなく、名前やイメージが勝手に使用され、一人歩きする状態だったという。さらに虚実入り交じったアラーキーの言動はふたりの関係への憶測や誤解を生み、私生活に支障を来たしていた。環境の改善を訴えてもまともに対応されず、名の通ったアーティストのふるまいに都合良く扱われるままだった経緯が冷静な目をもって綴られている。

一方的で不均衡な関係性のまま「KaoRi」からイメージのみが搾取され、モデルは言われるがまま芸術に奉仕する姿勢でなんでもやって当然の麻痺状態にあった。そこに彼女をミューズと認める目があったとしても、創作に関わるパートナーとしてのまっとうな意味でのリスペクトはなく、思うがままに扱われる主従関係が長きに渡り成り立ってしまっていた。KaoRiさんは若さや無知もあったと振り返っているけれど、内容を読む限りアラーキーを擁護する余地はなかった。

うごくとまる

ARTLOGUE 編集部2018/07/10(火) - 13:15 に投稿

20世紀なかば、廃材や身近なものを組み合わせ、そこに機械的な動きを取り入れたジャン・ティンゲリーは、やがて芸術潮流「キネティックアート(動く芸術)」の巨匠と目されました。キネティックアートは、その動力源としては自然の力(風や水流など)や電力、または人力を求めます。本展では「うごくこと/とまること」に着目し、ティンゲリー以降のアーティストたちによるさまざまな表現を、原美術館のコレクションから紹介します。合わせて、昨年パリの個展で発表した泉太郎の新作を展示します。

 

モダンアート再訪―ダリ、ウォーホルから草間彌生まで 福岡市美術館コレクション展

ARTLOGUE 編集部2018/06/01(金) - 15:35 に投稿
三岸好太郎 《海と射光》 1934

 

国内屈指のモダンアート・コレクションが来広

様々な運動で彩られる20 世紀美術を巡る旅へ誘います

 

20 世紀の美術は、次々に現れる前衛的な美術運動によって彩られています。シュルレアリスムから戦後の抽象表現主義、ポップ・アートまで、欧米を中心に展開した美術の流れは「モダンアート」とも呼ばれています。

1979 年に開館した福岡市美術館は、近現代美術と古美術を二つの柱とした16,000 点に及ぶ幅広いコレクションをもつ美術館として知られています。2019 年のリニューアルオープンに向けた大規模な改修工事の期間にあることを貴重な機会として、この展覧会では同館が所蔵するヨーロッパとアメリカ、そして日本の優れた作品約70 点を一堂に紹介し、モダンアートの歴史を改めてたどります。

 

アートを発信する―原美術館発国際巡回展の軌跡

ARTLOGUE 編集部2018/03/13(火) - 12:43 に投稿
戸谷成雄「森Ⅱ」1989-90年 ©Shigeo Toya

 

原美術館が 90 年代に企画・主催した3つの国際巡回展に焦点をあてた展覧会を別館ハラ ミュージアム アークにて開催


ハラ ミュージアム アーク本館にあたる原美術館[東京都品川区 館長:原俊夫]が企画・主催した3つの国際巡回展、「プライマルスピリット-今日の造形精神」(1990-91 年)、「空間・時間・記憶-Photography and Beyond in Japan」(1994-97 年)、「倉俣史朗の世界」(1996-99 年)に焦点をあてた展覧会を開催いたします。

いずれも日本の優れた現代美術を海外に紹介する目的で、彫刻・写真・デザインというそれぞれ異なる表現方法を用いた作品群により構成された大型プロジェクトでした。
本展では、原美術館コレクションの中からこれらの企画展に出品したアーティスト達による作品をクローズアップし、その発信の軌跡を辿ってみたいと思います。

【出品作家】
荒木経惟、遠藤利克、笠原恵実子、川俣 正、倉俣史朗、剣持和夫、佐藤時啓、杉本博司、土屋公雄、戸谷成雄、野村 仁、福田美蘭、森村泰昌、山本 糾、草間彌生、束芋

草間彌生 ALL ABOUT MY LOVE 私の愛のすべて

ARTLOGUE 編集部2018/02/13(火) - 17:46 に投稿
草間 彌生 ©YAYOI KUSAMA

 

~国内初出品作や最新作を紹介する、画家・集大成の展覧会を開催~

宇宙、平和、そして愛――。

世界のKUSAMA 芸術は、今も無限に、そして永遠に増殖をつづける。

 

松本市美術館(長野県)では、2018 年3 月3 日(土)から7 月22 日(日)まで、松本市市制施行110 周年・松本市美術館開館15 周年記念「草間彌生 ALL ABOUT MY LOVE 私の愛のすべて」を開催します。
幻覚体験の恐怖から逃れるために無我夢中で描き続けた草間彌生は、世界の芸術家としての地位を掴み取り、世界各地で行われる草間彌生の展覧会は、入場者数の記録を塗り替えています。日本でも2017 年に国立新美術館で開催された「草間彌生 わが永遠の魂」は52 万人を動員しました。現存作家では異例のことでしょう。

モダンアート再訪 — ダリ、ウォーホルから草間彌生まで 福岡市美術館コレクション展

ARTLOGUE 編集部2018/02/15(木) - 15:56 に投稿
三岸 好太郎《海と射光》1934年

 

20世紀美術は様々な美術運動の消長の歴史ととらえることができます。印象派に始まり、エコール・ド・パリ、シュルレアリスムから一連の抽象画にいたる流れは主にヨーロッパで育まれ、広い意味でモダンアートと呼ばれています。

そして第二次大戦後、モダンアートの舞台はヨーロッパからアメリカに移り、巨大な抽象絵画やポップアートといった新たな成果を生み出しました。日本でもこれらの動向に呼応する作品が制作される一方、明らかにそこから逸脱する作品も生み出されました。明治以降、日本において欧米の美術がいかに受容され、いかなる変容を遂げたかという問題は日本の近代美術史を論じるにあたって興味深い主題です。

1979年に開館した福岡市美術館は近現代美術と古美術を二つの柱とする16,000点に及ぶコレクションによって知られています。2019年のリニューアルオープンに向けて、美術館が大規模な改修工事に入ったことを得難い機会として、この展覧会では福岡市美術館が所蔵する近現代美術のコレクションによって、モダンアートの歴史をあらためてたどりたいと考えます。