UNBUILT:Lost or Suspended

ARTLOGUE 編集部2018/08/09(木) - 19:42 に投稿

建築模型をオンラインで預かる世界初のWEBサービス「ARCHI-DEPOT ONLINEで保管する作品をはじめとする複数の建築家による、アンビルト建築作品を展示します。

序文
建築の歴史はある意味で「敗者の歴史」である。計画取り止めやコンペ敗北の時点から“過去”になることで、逆説的に建築史的命運を大きく左右することもありえる。
 本展覧会では「負けた[lost]」建築と「止まった[Suspended]」建築を展示する。
「負けた」建築とは、実現を目標としつつもコンペティション(設計競技)に敗北し、実際には建てられなかった建築である。例えば、行政施設の設計競技では、行政の趣味(必ずしも建築家自身の美学に合致しない)に合わせてカラフルなチャートとしてプレゼンボードを制作することもある。
 例えば、巨匠ミース・ファン・デル・ローエの若き日の作品である《ガラスのスカイスクレイパー》(1921) は、ガラスの高層建築はいわば“始祖”であり、後にニューヨークや丸の内といった都市風景のさきがけであった。一方で、設計競技において歯牙にもかけられなかった。この作品は「ポストモダン」と呼ばれる時代に至ってもミースの伝説的な作品として語り継がれ、1950年代に彼が実現した《シーグラムビル》を予見していたと見ることもできる。
 「止まった」建築は、現在進行形で建設が一時中断もしくは構想段階にある、もしくは構想段階に留まっているプロジェクトである。社会的・経済的・政治的理由からプロジェクトが止まっているもの、そもそも実現を前提としたものでないもの、思想を表現したもの、ドローイングの状態で止めて置きたいもの、などがある。建築家の思想は時間にかかわりなく、「止まった」表現として提示されたその時点で凝固する。
 実現の機会が「失われた[lost]」ことで、建築家にとっては現出することがない過去に帰属する。いわば、建築思想として「宙吊り[suspended]」になる。建築家アントワーヌ・グランバックは、「建築は“永遠の未完”である」と述べたが、建築家の構想段階のアイディアは、歴史なき都市に歴史を与える役目をもつ。「未完[Unbuilt]」のプロジェクトは、建築の未来を幻視し、過去を増殖し、現在を創出する。

〈文:片桐悠自(東京理科大学理工学部建築学科助教)〉

 

開催概要

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会 期:8月4日(土)~10月8日(月・祝)
会 場:建築倉庫ミュージアム展示室B
時 間:11:00~19:00(最終入館18:00)
休 館:月曜(祝日の場合、翌火曜休館)
入館料:一般3,000円、大学生/専門学校生2,000円、高校生以下1,000円
(同時開催中「「建築」への眼差し -現代写真と建築の位相-」展の観覧料含む)
URL:https://archi-depot.com/exhibition/unbuiltlost-or-suspended


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