「サンタフェ リー・ダークスコレクション 浮世絵最強列伝―江戸の名品勢揃い―」展

ARTLOGUE 編集部2018/06/19(火) - 10:37 に投稿

米国サンタフェ(ニューメキシコ州)在住のリー・ダークス氏は、空軍士官として日本に駐留したのを契機に日本文化に関心を持ち、浮世絵版画の名品を収集してきました。本展覧会では、浮世絵の祖・菱川師宣、美人画の喜多川歌麿、役者絵の東洲斎写楽、そして葛飾北斎や歌川広重など代表的な浮世絵師の優品のみを集めたダークス氏のコレクションを、全国五会場で初公開します。
※京都展は前期(七月三日〜八月五日)・後期(八月八日〜九月三〇日)で全点展示替えをします。

 

展覧会監修者 永田生慈氏からのメッセージ

いま公開される珠玉のリー・ダークス浮世絵コレクション 華麗な浮世絵二〇〇年の系譜

米国のコレクター、リー・ダークス氏が蒐集された浮世絵版画一六〇余点を、世界で初めて公開する展覧会を、全国五会場で開催します。
これまで知られてこなかった、ダークスコレクションは、その大半が驚くほど良好な保存状態と今摺り上ったかと思わせる華麗な色調を誇る、第一級の内容といって過言ではありません。また展覧内容も、浮世絵二〇〇年の歴史を網羅した稀品、著名作品で構成され、浮世絵の真の芸術性を鑑賞いただけるものと確信しております。
*このメッセージは、本展覧会の監修者である永田生慈氏が企画段階で残された文章です。誠に残念ながら、展覧会の準備中に永眠されました。

 

浮世絵版画コレクター リー・ダークス氏について

一九三五年、アメリカ中西部に位置するインディアナポリス(インディアナ州)に生まれ育ったダークス氏が、最初に日本美術に関心を持ったのは、一九五八年から六一年まで、米空軍士官として来日した際のことでした。東京の横田基地に駐留していた間に読んだジェームス・ミッチェナー「日本の版画」(“Japanese Prints”)をきっかけに、浮世絵版画に特に興味を抱いたそうです。米空軍に服務後は、ダウ・ジョーンズやボストン・グローブ紙をはじめとする米国大手新聞社で記者・編集者、そして経営幹部として活躍。その後は、新聞社の合併・買収に携わり、新聞業界で五〇年にわたるキャリアを謳歌しました。現在は、風光明媚なことで知られるサンタフェ(ニューメキシコ州)やフロリダ州に在住で、二〇〇〇年頃から本格的に浮世絵のコレクションを始めました。いまでは初期浮世絵から明治・大正時代に至るまでの二五〇年間に及ぶ素晴らしい浮世絵コレクションを構築しています。

 

展覧会の見どころ

第一章 江戸浮世絵の誕生 初期浮世絵版画

初期の浮世絵版画は、一七世紀後半に生まれた墨一色の墨摺絵に始まり、墨摺絵に筆で彩色した丹絵や紅絵、墨に膠(にかわ)を混ぜて漆のような光沢を出した漆絵へと発展しました。一八世紀前半には、これらの筆彩色に替
わって、紅や緑などの色版を重ねる版彩色が生まれました。後にこの技術が土台となって、多色摺の錦絵が誕生します。
本章では、浮世絵師の祖といわれる菱川師宣や、力強い描写で知られる鳥居清信・清倍など、江戸独自の浮世絵文化を形成した浮世絵師たちの作品をご紹介します。

第二章 錦絵の創生と展開

一八世紀後半、趣味人の間で美麗な絵暦の交換が流行したことを機に、多色摺の錦絵が誕生しました。錦絵創生期に最も活躍したのが、可憐な美人画で有名な鈴木春信です。多くの絵師に影響を与えた春信の没後は、堂々とした体軀の美人画を描いた礒田湖龍斎や、伸びやかな美人画を描いた鳥居清長が知られるように、絵師独自のさまざまな様式が生まれました。歌舞伎役者を写実的に描いた一筆斎文調や勝川春章が活躍したのもこの時代です。

第三章 黄金期の名品

寛政期(一七八九〜一八〇一)に入ると、浮世絵版画の様式や表現はさらに多様化しました。喜多川歌麿は、上半身を描く大首絵の様式を用いてさまざまな階層の女性を描きました。
寛政六年(一七九四)五月からの約一〇ヶ月間のみに活動が知られる謎多き浮世絵師・東洲斎写楽の作品は、歌麿をいち早く見出した蔦屋重三郎が版元となって世に送り出しました。版元が浮世絵出版のプロデューサーとして重要な役割を担っていたのです。
和泉屋市兵衛が出版した歌川豊国「役者舞台之姿絵」の連作も好評を博し、役者絵に新展開をもたらしまし
た。豊国の弟子、国政も役者大首絵の傑作を数多く残しています

第四章 精緻な摺物の流行とその他の諸相

文化・文政期(一八〇四〜三〇)に入ると、商品ではなく私的な出版物として制作される摺物も増え、錦絵はより細密な描写へと発展しました。特に色紙判の狂歌摺物では、精緻な彫、金銀摺、空摺など贅をこらした作品が数多く作られました。これら摺物の絵師として名を馳せたのが、葛飾北斎とその門下の絵師たちでした。また、本章では、江戸とは別に発展した大坂の浮世絵もご紹介します。

第五章 北斎の錦絵世界

葛飾北斎は約七〇年という長い画歴の中で、一般の浮世絵版画ばかりではなく、摺物、版本の挿絵、絵手本、絵本、肉筆など、次々に新しい画域に挑みましたが、本章では、世界的に有名な「冨嶽三十六景」や「諸国瀧廻リ」シリーズなど、北斎を代表する浮世絵版画の数々をご紹介します。
特に、「風流なくてなゝくせ」は、唯一伝わる大判の美人大首絵シリーズの中の一図で、状態も非常によく、リー
・ダークスコレクションの中でも特に貴重な作品です。

第六章 幕末歌川派の隆

天保期(一八三〇〜四四)以降は、浮世絵界は歌川派の絵師たちによって牽引されていきました。多くの門人を擁した歌川豊国が文政八年(一八二五)に没した後は、美人画・役者絵では国貞、武者絵・戯画では国芳、名所絵では広重が活躍しました。幕末の錦絵は出版量が増大したため、初摺と後摺で大きな違いが出ましたが、広重の摺の早い作品が多いのも、リー・ダークスコレクションの魅力の一つです。

 

展覧会会場 相国寺とは

臨済宗相国寺派の大本山である相国寺は、京都五山第二位に列せられる名刹です。正式名称は萬年山相國承天禅寺。 十四世紀末、室町幕府三代将軍の足利義満により創建されました。幾度も焼失と復興の歴史を繰り返しましたが、現存する法堂は日本最古の法堂建築として一六〇五年に再建された物を今に伝えています。
夢窓疎石を開山とし、創建当時は室町一条あたりに総門があったといわれ、北は上御霊神社の森、東は寺町通、西は大宮通にわたり、約一四四万坪の壮大な敷地に五〇あまりの塔頭寺院があったと伝えられています。

 

開催概要

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会 期:2018年7月3日(土)~9月30日(日)
【前期】2018年7月3日(火)~8月5日(日)
【後期】2018年8月8日(水)~9月30日(日)
※前期、後期で全点展示替えをします。
会 場:相国寺承天閣美術館
時 間:10:00~17:00(最終入館は16:30)
休 館:8月6日(月)、8月7日(火)
入館料:一般:1,000円(800円) 65歳以上・大学生:800円(600円)小中高生:500円(300円) 団体:800円(20名以上・一般のみ)
*()内は前売料金
*リピーター割引あり(会期中2回目以降ご鑑賞の方は、半券と引換にて100円割引いたします。)

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