戸谷成雄―現れる彫刻

ARTLOGUE 編集部2017/11/02(木) - 18:22 に投稿
《《境界》からⅤ》1997-98年 木、灰、アクリル塗料 h315×w538×d2060cm 
撮影:成田弘(会場:栃木県立美術館) 画像提供:ケンジタキギャラリー

このたび、武蔵野美術大学 美術館・図書館では、展覧会「戸谷成雄―現れる彫刻」を開催します。

彫刻家・戸谷成雄(とや しげお/ 1947年生まれ)は、「ポスト・ミニマリズム」や「もの派」といった現代美術の流れのなかで旧来の制度として解体された彫刻の再構築を試み、彫刻の本質とその可能性を提示してきました。1970年代に彫刻概念の再定義を試みたコンセプチャルな作品シリーズを発表した後、チェーンソーなどを 使った木彫作品を中心に1984年から「森」シリーズ、1994年から「《境界》から」シリーズ、2000年頃から「ミニマルバロック」シリーズなどへとその試みを展開させていきました。1988年にヴェネチア・ビエンナーレに参加して以降、国際展へと発表の場を広げ、日本の現代彫刻を牽引する存在として高く評価されています。

戸谷成雄の作品は、彫刻の定義やその構造を作品の骨組みとして提示しつつ、彼自身によって提示された概念である「表面」「境界」「関係」「影」「存在」といった問題を探究しています。このような問題系より発露する作品は、彫刻をその根源的成り立ちから考察したうえで作り出されたものだと言えます。見えるものと見えないも の、形のあるものと形のないもの、といった二つの領域のせめぎ合いのなかから、今まさに立ち現れてくる発現の瞬間を、「彫刻」としてその存在を保持しようとしています。

本展では、戸谷成雄の彫刻を、このようなせめぎ合いのなかにあるものと捉えて、「現れる彫刻」をテーマに、近年の代表的な緊張感ある大型作品を中心に約20点を展示します。戸谷作品に伏流する彫刻への根源的な問い、彫刻の発現とその新たな可能性を探る展覧会となります。展示では、戸谷彫刻の原点となり今日まで通底する問題を内在する初個展作《POMPEII ‥79〈Part1〉》(1974年)を起点に、「表面」や「境界」といった戸谷が探求してきた問題と「視線」の問題が結びついた構造を示す《見られる扉Ⅱ》(1994年)や《《境界》からⅤ》(1997-98年)など、展示室全体を使い彫刻概念を装置化した大型作品を中心に展示します。さらに彫刻の成立と「影」の問題とがからまる《射影体》(2004年)、見えない領域への意識がより先鋭化されて表された《境界》からⅥ》(1998年)、《重層体Ⅰ》)(2010年)、《洞穴体III》(2010年)、《洞穴体Ⅴ》(2011年)など、「現れる彫刻」をテーマに存在感ある大型作品を展開します。

戸谷に強い影響を与えた思想家の一人である吉本隆明は、『高村光太郎』に所載された「〈彫刻〉のわからなさ」のなかで、「像をつくることは、世界をつくることになる」と述べています。そして戸谷にとって彫刻とは、まさに世界の存在を、「現れる」というダイナミックな様相のもとに問うものであったと言えます。本展では戸谷彫刻の本質的な問題をテーマにしながら、それを作品の構造のなかに読み解き、戸谷成雄が作品のなかで思考してきた彫刻という存在を探っていきます。(ホームページより)

 

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