彫刻

平瀬ミキ《Translucent Objects(半透明な物体)》

ARTLOGUE 編集部2019/01/15(火) - 10:45 に投稿
ディスプレイには、重なり合った複数の積み木のような物体が映し出されています。 それは画面の中に時折現われる手によって映像に映されている空間を移動させられながら、配置を変えていきます。 その映像は半透明で、ふたつのよく似た映像が重ね合わされており、映像内の物体が重なった部分が不透明な状態になって、空間の中で実体化しているように見えます。 この作品、《Translucent Objects(半透明な物体)》は、対面する2台のカメラの間の空間で起こる出来事を同時に撮影し、その一対の映像素材をそれぞれ不透明度50パーセントにした状態で重ね合わせることで、ひとつの映像を作り出しています。 それは、被写体の正面と背面をそれぞれとらえたカメラによって、その両方を同時にひとつのフレームの中に収めたものになります。 また、両面の映像が重なることによって、半透明などこか朦朧とした映像空間の中に、不透明度100パーセントになった、この撮影システムによるメディア空間の中だけに存在する虚像が現われます。 作家はこの作品を「映像表現による彫刻作品」と呼んでいます。 それは、虚像としての映像を可塑性のある素材として扱い、シンプルな手法でありながら、観客に複雑な視覚体験をもたらし、メディアを通して対象をとらえることの意味を問いかけています。

5感+1つの感性 絵を見ておしゃべりしよう!

ARTLOGUE 編集部2018/12/21(金) - 14:47 に投稿

人間や動物の感覚機能をよく五感といい「、視覚」「嗅覚」「聴覚」「触覚」「味覚」の五つであるといいます。これらになぞらえた5つの部屋に加え、第六感の部屋として、 創造力を働かせて対話しながら鑑賞していただける部屋によって所蔵作品を紹介します。

最初の部屋は「視覚」。滝波重人、勝呂忠、木村一生の色彩豊かな抽象作品が展示の幕開けを飾ります。二番目の部屋は「嗅覚」。匂うがごとくに咲き誇る花や花器のとりどりの作品をお楽しみください。三番目は「聴覚」。風の音がそよぐような風景、ギターや楽器をもった人物など、作品から聴こえてくる音に耳を澄ませてみましょう。四番目は「触覚」です。この部屋では、昨年一月に亡くなった彫刻家で、大磯に長く住んだ保田春彦の金属彫刻を展示します。

五番目は「味覚」。身近な果実を描く作品は古来から存在し、作家は果実に豊かに実る豊穣の大地を感じ、崇高な造形の美や、大きな塊としての彫刻性を表現してきました。

青木野枝 ふりそそぐものたち

ARTLOGUE 編集部2018/12/19(水) - 02:32 に投稿
青木野枝は、大学在学中より一貫して鉄を素材に作品を制作してきた彫刻家です。 その作品の佇まいは「鉄彫刻」という言葉が呼び起こすイメージとは対極にあるものです。 工業用の鉄板を溶断し切り抜いた持ち運び可能なピースの一つ一つを、まるで空間に置いて行くように溶接し、つなぎ合わせることで生み出される作品。 それは、まるで空中に描かれたドローイングのように展開し、見る者と空間を共有しつつ、その空間そのものの質と意味を鮮やかに変容させるのです。 空気中に漂う水蒸気や微粒子など我々を取り巻く目に見えないものたちの存在、日常のうちに何気なく目にした物事から得た心の揺らぎ、自らの実感に根差した世界観。 それらをモチーフに、それに見合う美しい風景を呼び覚ますこと。 青木の作品は、そのための媒体として存在するもののようにも思えます。 この展覧会は、九州の公立美術館においては初となる青木の個展です。 近作および新作のインスタレーションによって構成される本展では、石鹸や石膏など近年青木が鉄とともに用いてきた素材に加え、色ガラスという新たな素材を使用した作品も公開されます。 長崎市に深い関わりを持つ家系に生まれた青木。 長崎という土地と作家としての青木とがはじめて出会う機会となるこの展覧会で新たに生まれる風景を、ぜひご覧ください。

岡山現代彫刻の断片展 Vol.3 【抽象ー多様化するイメージ】

ARTLOGUE 編集部2018/12/19(水) - 02:32 に投稿
岡山ゆかりの彫刻家に焦点を当てた選抜展。様々な素材を使って、多様な彫刻表現が増える中で、岡山という独特の美術的磁場で活動を続ける若手からベテランまでの作家を、奈義町現代美術館という場において対峙させるように作品を展開。 館内から野外へと繫がる個性的で独特のカタチをした作品群を展示。

コレクションの<現在(いま)> ― 絵画・彫刻・版画

ARTLOGUE 編集部2018/12/19(水) - 02:31 に投稿
企画展の開催や作品展示をきっかけに目黒区美術館がコレクションに加えてきた作品の中から、1980年代以降の現代美術を取り上げます。 現代彫刻の青木野枝、多和圭三。鉛筆による細密絵画の篠田教夫(しのだ のりお)、寺崎百合子。版画の井田照一。写真の山中信夫の作品ほかを紹介します。 また、「色」をテーマにしたシリーズ展覧会『色の博物誌』の「緑―豊潤な影」(2001年)、「黄―地の力&空(くう)の光」(2004年)の出品作家・鈴木省三の絵画を特集展示します。

冨井大裕 「線を借りる」

ARTLOGUE 編集部2018/12/12(水) - 16:52 に投稿

冨井大裕は彫刻の新たな可能性を探り、様々な彫刻の形を提示してきました。作品を制作するその態度や行為、体験などそのものが作品として成立するかどうか、芸術作品となるにはどのような要素が不可欠なのかを模索してきました。冨井は付箋や色鉛筆、ハンマーやゴミ箱等、しばしば身の回りにある既製品を用いて作品を作りますが、従来あったその物特有の用途や意味を取り払うことで、その物の物質としての新たな魅力や存在に焦点を当て、全く違うものへと昇華させます。またある時には指示書のみを展示し、観客自身がその指示に従い彫刻作品となるプロセスを踏む作品など、従来の“もの”としての彫刻とはかけ離れた、そのものの裏にある見えない“こと”にも焦点を当てた作品制作をしています。

今回の展覧会ではタイトル通り、他人の作品から「線」を借りた作品を発表します。ファッションブランド「tac:tac」のデザイナー、島瀬敬章氏のパターンの線を元に作られた彫刻作品、そのパターンから起こされた服、その服を試着する観客、それを写す鏡と映り込む背景、その全てのもの・こと・場・時など彫刻としての可能性を顕在化する展示となります。

イケムラレイコ 土と星 Our Planet

ARTLOGUE 編集部2018/12/11(火) - 13:31 に投稿
長くヨーロッパを拠点に活動し、国際的にも高い評価を得ているイケムラレイコの大規模な個展を開催します。イケムラは、絵画、彫刻、ドローイング、水彩、版画、写真、映像といったあらゆるメディアを駆使し、生成と変化の諸相を、潜在的な可能性までをも含めて表現しています。 少女や夢幻の像、幻想的なハイブリッドな生きものたち、人や動物と一体化した風景など、イケムラ独特の多義的なヴィジョンは、イメージからイメージへと、軽やかにそのあらわれを変えていきます。 そこには、生きている私たち、生まれいずるすべてのものたちの存在の多様性を、あるがままに受け入れようとするイケムラの強靭な思想が感じられます。 ときにユーモラスで、ときに慈愛にあふれ、ときに悲壮な、慎ましげで内省的な作品たちは、まさにこの点において、閉塞感を増している今日の社会情勢に対する鋭い批評でもあるでしょう。

コレクション展 モダンなフォルム

ARTLOGUE 編集部2018/12/11(火) - 12:47 に投稿
同館の名称にも掲げられた「モダン」(近代)という言葉。日本では一般に「現代的」、転じて「洒落た」イメージを指して使われ、一方では「モダン」という言葉自体がもはや「レトロ」な響きをも感じさせますが、本来は「新しさ」を意味するものです。 古典的な美や、それまでの潮流に対する新しさを追求した表現は、つねにモダンなものであったといえます。彫刻に斬新なユーモアや合理性を込めた堀内正和の個展にあわせて、絵画、彫刻、デザインなどの所蔵作品と資料から、各時代の作家たちが試みた「新しさのかたち」を展覧します。

堀内正和展 おもしろ楽しい心と形

ARTLOGUE 編集部2018/12/11(火) - 12:47 に投稿
堀内正和(1911-2001)は、日本の抽象彫刻を代表する作家のひとりで、次世代の彫刻家たちに大きな影響を与えました。東京高等工芸学校在学中の1929年に18歳で第16回二科展に初入選。早くから抽象彫刻を志した堀内は、戦争中に一時制作を中断しますが、戦後、活動を再開させると、サンパウロ・ビエンナーレやインド・トリエンナーレなどにおいて、海外にも広く紹介されました。 堀内は、抽象彫刻の分野にあって触覚的な感覚を意識的に取り入れ、身体の一部や身の回りにある形をヒントに作品を制作しました。なかでも《ウィンクするMiMiちゃん》(1967年)や《指の股もまた股である》(1968年)といった、鑑賞者が覗き込むことで完成する「のぞき(NOZOKI)」の逆読みから命名された「IKOZON」彫刻では、独自のエロスやユーモアが存分に発揮されています。 本展では、具象から抽象へと変化を遂げた1950年代に着目しつつ、初期から晩年までを約40点の彫刻作品でたどります。さらに堀内の思考の過程で生み出された紙彫刻(ペーパー・スカルプチュア)を多数展示し、機知とユーモアあふれる作品を創り出した作家の思考を紐解きます。

エキゾティック×モダン アール・デコと異境への眼差し

ARTLOGUE 編集部2018/11/20(火) - 17:49 に投稿

両大戦間期と言われる1920~30年代のフランスでは、美術や、ファッション、宝飾、家具などの装飾に新しい美意識が生まれました。本展は、「アール・デコ」と呼ばれるこの時代の装飾スタイルにおける新しい時代感覚すなわち「モダン」の源の一つとして、「エキゾティック」な要素に着目したものです。

20世紀初め、ファッションに革命をおこしたポール・ポワレによる中近東やアジアを着想源とした衣服、1922年のツタンカーメン王墓の発見を機とするエジプトブームを反映したジュエリー、漆芸家の菅原精造に学んだジャン・デュナンの工芸品、あるいは東洋に倣った陶磁器など、アール・デコの作品では形、素材、技術の面において、非ヨーロッパ圏の芸術を応用した作例が見出されます。

この時代の異国は、夢見るものから自ら赴く場所へと変化していました。シトロエンによるアフリカ縦断・アジア横断クルージング、植民地での美術学校創設、留学奨励などにより現地に取材した芸術家たちが、ダイナミックな絵画、彫刻を生み出します。パリでは、アメリカの黒人歌手・ダンサーのジョセフィン・ベイカーの活躍や、1931年の「国際植民地博覧会」開催、珍しい動物がもたらされた動物園の人気など、エキゾティックで活力あるシーンが都市を賑わせました。