歌川国芳
挑む浮世絵 国芳から芳年へ
没後130年 河鍋暁斎
春の江戸絵画まつり<br>へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで
人は、見事な美しさや完璧な美しさに、大きな感動を覚えます。しかしその一方で、きれいとは言いがたいもの、不格好で不完全なものに心惹かれることもあるでしょう。「へそまがりの心の働き」とでも言ったらよいでしょうか。
例えば、禅画に描かれた寒山拾得の二人は、不可解さで見る者を引きつけます。また、江戸時代の文人画ぶんじんがには、思わず「ヘタウマ?」と言いたくなるような作品があります。文人画ぶんじんがの世界では、あえて朴訥に描くことで、汚れのない無垢な心を表現できると考えられていたのです。
あるいは、徳川家光が描いた《兎図》はどうでしょうか。将軍や殿様が描いた絵には、ときおり見た人が「???」となるような、何と言い表せばよいか困ってしまうような「立派な」作品があります。描き手が超越した存在であることと、関係があるのかもしれません。更に近代にも、子供が描いた絵を手本にして「素朴」にのめり込む画家たちがいました。
この展覧会では、 中世の禅画から現代のヘタウマまで、 日本の美術史に点在する「へそまがりの心の働き」の成果をご覧いただきます。へそまがりの感性が生んだ、輝かしくも悩ましい作品の数々を眺めれば、日本美術のもう一つの何かが見えてくるかもしれません。
江戸の園芸熱 -浮世絵に見る庶民の草花愛-
特別展「挑む浮世絵 国芳から芳年へ」
歌川国芳(1797-1861)は、旺盛な好奇心と柔軟な発想、豊かな表現力を武器として、武者絵や戯画に新機軸を打ち出し、幕末にいたって浮世絵のさらなる活性化につなげた浮世絵師です。今日では「奇想の絵師」としてその人気は定着してきています。
親分肌の国芳を慕って多くの弟子が集いましたが、なかでも「最後の浮世絵師」と称される月岡芳年(1839-92)が特筆されます。国芳の奇想をよく受け継ぎ、さらに和洋の融合を推し進めた彼の作品は、近年再び高く評されるようになってきました。
本展では、国芳、芳年のほか、芳年とともに国芳門下の双璧とされた落合芳幾(おちあいよしいく)(1833-1904)などにもスポットを当て、国芳が切り開いたさまざまな新生面を弟子たちがいかに継承、変化させていったのかをたどってみる機会とします。人々の嗜好に合わせ最後まで新しい画題と表現に挑み続けた、国芳を領袖とする「芳ファミリー」の活躍をご覧ください。展示作品には残虐な絵も含まれます。ご用心!
めがねと旅する美術展 視覚文化の探究
奇想の系譜展 江戸絵画ミラクルワールド
アート×猫 ~江戸時代の國芳の浮世絵作品に見るアートと猫の心いやされる関係~
巷では「猫ブーム」。テレビのコマーシャルや雑誌でも猫をモチーフにしたものが多くなっています。最近は「散歩の必要がなく飼うのが楽」ということで人気が急上昇しているようです。アートと猫との関係で言うと、昔から猫は絵画のモデル・主役や脇役として作品に描かれてきました。
猫って…
猫の好きな人なら猫の歩き方やしぐさなど、いくら見ていても飽きないのではないでしょうか。
初めて猫を飼った時、人のように言葉が通じる訳でもなく意思疎通に戸惑いましたが、日々一緒に暮らしていると、世間でよくいわれる「猫は薄情・冷たい」に当てはまらない、表情や表現力の豊かさに気付かされます。むしろ情に厚く、不思議と人間の心を察知し、シンプルに無邪気に人間と接してくれます。特に最近のように人間関係が複雑な世の中では、そのシンプルさがかえってありがたい気がします。
今日はその中でも猫好きの画家として有名な江戸時代の代表絵師である、歌川國芳(うたがわくによし)(1797~1861)の作品から心いやされる関係を考えてみましょう。
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特別展「江戸の戯画 ―鳥羽絵から北斎・国芳・暁斎まで」
歌川国芳「きん魚づくし ぼんぼん」 個人蔵(通期展示)
太平の世が続いた江戸時代には、多くの戯画(ぎが)が描かれました。一口に戯画といっても多種多様なものがありますが、本展では「鳥羽絵」をキーワードに江戸時代の戯画をご紹介します。
鳥羽絵は、広く戯画や漫画を指す言葉として使われることもありますが、より限られた意味では、18世紀に大坂を中心に流行した軽妙な筆致の戯画を指します。そこに描かれる人物は、目が小さく、鼻が低く、口が大きく、極端に手足が細長いという特徴を持ち、その名は国宝「鳥獣人物戯画」の筆者と伝えられてきた鳥羽僧正覚猷(とばそうじょうかくゆう)に由来するものとされます。
鳥羽絵は、18世紀の大坂で鳥羽絵本として出版され、その人気は近代にまで及びました。また、上方に留まらず、江戸の浮世絵などにも影響を与えています。鳥羽絵を洗練させたとされる大坂の「耳鳥斎(にちょうさい)」はもちろん、鳥羽絵本の影響を受けたと考えられる江戸の「北斎(ほくさい)」や「国芳(くによし)」、そしてその流れをくむ「暁斎(きょうさい)」など、時代や地域により変化しながらも、笑いの感覚は脈々と受け継がれてきました。