都市に関する学術研究に対する助成を主に行う公益財団法人大林財団(大林剛郎理事長〔大林組 代表取締役会長〕)は、第11回大林賞の受賞者を、美術家のオラファー・エリアソン氏に決定しました。
大林賞は、都市が抱える諸問題の解決に多大な功績があった研究者をはじめ、都市のあり方や将来像に指標を与え、あるいはそれらを実践することによって社会に大きく貢献をした者を顕彰するもので、2年ごとに実施されています。受賞者には、賞金500万円が授与され、これまで、建築家のアレハンドロ・エチェベリ氏や、ランドスケープ アーキテクトのキャサリン・グスタフソン氏、彫刻家のアントニ-・ゴ-ムリ-氏、フランス文化財主任学芸員、ケ・ブランリー美術館ミュゼオロジープロジェクト・ディレクター(受賞時)のジェルマン・ヴィアット氏らが選ばれました。
今回受賞したエリアソン氏は、1967年生まれで、現在コペンハーゲンとベルリンを拠点に活動中。彫刻、絵画、写真、映像、インスタレーションなど作品の形態は多岐に渡り、美術館やギャラリー内にとどまらず、建築プロジェクト、市民空間への介入、芸術教育、施策の提案、持続可能性や気候変動の問題など、より広い公共圏と関わりを持ちながら行われています。2020年には東京都現代美術館にて、エリアソン氏の最新の個展「ときに川は橋となる」が開催されています。
彼の作品は、知覚、動き、身体化された経験、「自己」の感覚などへの興味から立ち上がり、それは芸術的関心を一般社会と接続していく試みです。エリアソン氏にとってアートとは、世界の思考を行動に移すための重要な手段だといいます。
アートやデザインには、世の中を変革する力があります。世の人々に対して意識変革の体験をもたらすことによって、環境や貧困といった都市が抱える喫緊の課題解決に向けて、人々を実際の行動へと促してきたといったこれまでの制作活動や発言が高く評価され、今回の受賞に繋がりました。
エリアソン氏は、今回受賞するにあたって次のように語っています。
大林賞をいただくということは、「芸術は変化を起こすことができる」と認めていただくことであり、大変光栄に思います。私は自身の作品において都市・公共空間を議論の場として捉え、人々が能動的に社会に関わること、またその先には共通の未来について考えることを見据えながら活動しています。近年はとくに環境問題に積極的に取り組み、「リトルサン」プロジェクトを通じては、持続可能なエネルギーをより多くの人の手元に届けることを目指しています。過去20年のあいだ、日本とは親密な関係を築いてきました。日本の文化・伝統や思いやりの心には、いつも多くのことに気づかされます。現在、物理的には離れ離れになってしまっている我々ですが、私の想いは常に人々と共にあり、これからも決して止まることのない対話を続けていくことを、心から楽しみにしています