世界各地ではいまも多くの人が紛争や迫害、暴力や貧困によって住まいを追われ、難民や国内避難民となる人が世界で戦後最多の7000万人を超えています。移民を含めるとさらに多くの人びとが安全な生活を求める移動を強いられています。国境なき医師団は、こうした人びとに寄り添い医療を提供しています。
日本では、そんな生きるために移動を強いられた人びとに関する広報キャンペーン「エンドレスジャーニー ~終わらせたい、強いられた旅路~」を実施し、その一環として展覧会イベントを開催。エンドレスジャーニー展の見どころとして、国境なき医師団のテント式手術室や四輪駆動車など実物を展示、各地における人道危機についての詳細な展示、人びとが生きるために使用していた道具や直筆の絵の展示があります。また、今回のテーマに寄せた谷川俊太郎さんの書き下ろし詩作品と、美術作家・諸泉茂さんと国境なき医師団のコラボレーション展示、そして作家・クリエイターのいとうせいこうさんによるトーク(12月21日に終了)など様々なイベントが予定されています。
谷川氏は今回の展覧会に次の詩を寄せています。
傷ついて赤い血を流し 痛みに悲鳴を上げるのは 敵も味方もないカラダ
ココロは国家に属していても カラダは自然に属している 肌の色が違っても
母の言葉が違っても 信ずる神が違っても カラダは同じ ホモ・サピエンス
いのちがけで いのちを救う カラダに宿る 生まれながらの 見えない愛
国境は傷 大地を切り裂く傷 ヒトを手当てし 世界を手当てし 明日を望む人々がいる
また諸泉氏は次のように述べています。
私は、今回この「エンドレスジャーニー展」での最後の部屋で、この「手当する」をテーマに国境なき医師団と谷川俊太郎さんの詩と私とのコラボレーションを試み、部屋を構成しました。私達は、怪我や病気の時、他者から手当を受けます。最初は母親だったかもしれない、父親、おばあちゃん、おじいちゃん、兄弟、学校の先生、そして病院の先生や看護婦さん。最初に感じたのはその人の優しい目と手の温もりであったはずです。次に安心させてくれる癒しの言葉、誰もがここで落ち着きを取り戻し治癒を目指すのです。この手当する行為を国境なき医師団の方々は世界中の求められている地域で行っています。この部屋では訪れて下さった皆様が手当をします。と言っても診療をするのではなく『手当する』をなぞる形で温度計に手を当て自分の体温を確認し、そこに線を引き、今日の展覧会に来て見て感じた事や思った事を言葉にして書き残して行って下さい。その言葉は、医師団に反省を促し、勇気づけ、癒し、新たな活力に成るに違いありません。
本展はこれまで患者の言葉を元に証言活動を続けてきた国境なき医師団だからこそ、言葉の力を強く感じられる展示となっています。「生きるために移動を強いられた人びと」が直面している深刻な人道危機について、本展をきっかけに広く認知されることを願ってなりません。
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■「エンドレスジャーニー展 ~終わらせたい、強いられた旅路~」
会期: 12月18日(水)~22日(日)
時間:11:00-20:00(最終入場時間19:30)※合計5日間
会場:3331 Arts Chiyoda メインギャラリー(東京都千代田区外神田6-11-14)
入場料:無料
特設サイト:https://www.msf.or.jp/tabi