今世紀最大の日本文化博ともいえる「ジャポニスム2018:響き合う魂」(以下「ジャポニスム2018」)が7月12日パリで開幕しました。日仏友好記念160周年を記念し、約8か月間にわたりパリ市内各地で日本の美術や演劇、映画、伝統芸能など様々な分野でイベントが展開される日仏合同のプロジェクトです。そのオープニングセレモニーの様子をフォトレポート形式でお伝えします。
華やかな会場とセレモニー前の様子
オープニングセレモニーは、19区にあるヴィレット公園内の「ラ・ヴィレット」で行われました。
同じ会場内では、開幕に先駆けてオープンした「ジャポニスム2018」公式企画のチームラボ 「teamLab : Au-delà des limites(境界のない世界)」展が開催しており、開幕から4週間で入場者数46,000人超の記録的な数字を出しています。
初日の来場者数50人、2日目90人と最初こそ少なめでしたが、今や平日2,000人、休日4,000人以上の来場者があり日ごとにその数も増えているのだとか。世界各地で絶賛されているチームラボの展覧会だけに、ここパリでの展示が「ジャポニスム2018」を先導しているのは間違いありません。
話は戻って、チームラボの展覧会を横目に通り過ぎたところがセレモニー会場入り口となります。スーツ姿のガードマンの手荷物検査があり、入退場は厳重チェックです。館内へ入ると、ウェルカムドリンクを片手に団らんしながら会場オープンを待つ人で既に賑わっていました。参加者は日仏政府関係者や企業スポンサー、文化人など招待客が中心となります。
ジャポニスム2018 開幕式 日本の文化を映像美で魅せる
開幕の挨拶の後、映像が2本紹介されました。
1つは日本の原風景や都会の街並み、生活に根付いている祭礼や生活儀式、食、など日本の文化を紹介するもの。
2つ目は「ジャポニスム2018」のプロモーションビデオで、日本文化の原点とも言うべき縄文土器を紹介する「縄文展」、《動植綵絵(どうしょくさいえ)》を見せる欧州初の伊藤若冲の大規模展、国宝《風神雷神図屏風》ヨーロッパ初公開の琳派展、そして最新のメディア・アートなどを美しい映像で披露しました。
日仏両大臣の開催の祝辞
河野太郎外務大臣とフランソワーズ・ニッセン・フランス共和国文化大臣は、猪子寿之チームラボ代表の案内で「teamLab : Au-delà des limites(境界のない世界)」展を鑑賞したり、日仏青少年によるサッカー交流の視察を行ったりした後、セレモニー会場へ移動。フランスが開発した文化・芸術作品の鑑賞できるアプリ「ミクロフォリー」で子どもたちと交流後、「ジャポニスム2018」開催のスピーチを述べられました。
河野大臣は「フランスと日本の間には、実に独特な、心と心で結ばれた文化の長い歴史がある」とし、特筆すべきことは、「日本とフランスの最初の橋渡しをしたのが、文化であったこと。文化を通してお互いに高め合い価値観を共有したこと」、そして「自由、平等、博愛は我が国がフランスとともに世界に広めるべき共通の価値観」であると語りました。
続いてスピーチを行ったニッセン大臣は「日仏両国の創造性の出会いが新たな文化を生み出してきた歴史を振り返りつつ、世界が直面する様々な課題を解決するために両国が果たす主たる役割において文化は重要な柱」と語りました。
観客を一気に魅了した和太鼓集団DRUM TAO圧巻のパフォーマンス
続いて、両大臣含む日仏の招待客は和太鼓集団DRUM TAOのパフォーマンスを鑑賞。DRUM TAOは今回フランス初公演。表現力豊かな和太鼓演奏と圧倒的なヴィジュアルにより世界を魅了してきたのと同様、この短い時間でもすっかり観客はすっかり魅せられてしまった様子でした。
芸術に対してヨーロッパ人はかなり率直と聞いていたので、演奏後のあれ程までの惜しみない盛大な拍手と歓声には驚きました。
後日開催のDRUM TAOの公演においても、私たちが想像する以上の大反響で、パフォーマーの合図に合わせ掛け声や拍手、最後には観客のスタンディングオベーションがやまず、素晴らしい演奏とパフォーマンスに最大の賛辞を送り続けていました。
実はDRUM TAOの公演日程が決まった当初、サッカーのワールドカップの試合と重なってしまい(7月13日、15日)チケットの売れ行きが大変心配されていたそうです。しかし、そんな心配を吹き飛ばすかのように早々とチケットは完売してしまったのだとか。おそるべし、和太鼓集団DRUM TAOです。
秋にはフランスの文化シーズンも開幕し、「ジャポニスム2018」においても連日大型イベントが目白押しとなります。
近年日本でも一大ブームを巻き起こした伊藤若冲のヨーロッパ初の大規模展示「若冲-<動植綵絵>を中心に」展や、「縄文」展、「京都の宝―琳派300年の創造」展、「香取慎吾 NAKAMA des ARTS」展、「藤田嗣治」展、といった多岐にわたる展覧会、次世代の歌舞伎を担う看板役者中村獅童・中村七之助によるパリ初お目見得となる「松竹大歌舞伎」公演が開催されます。
他にも能や狂言等の古典芸能から現代演劇までの各種公演、日本映画史の100年を119本の映画で紹介するプログラム「日本映画の100年」が実施される他、「テレビ日本月間」と題して日本のドキュメンタリー、映画、アニメ他日本のコンテンツをフランスのテレビで集中的に放送します。
また日本の各地域で継承されているお祭りや、お酒やお茶を含む食文化の魅力を発信し、禅、俳句、生け花、茶道など、鑑賞だけでなく参加も楽しむことができる多彩なイベントが用意されています。
「ジャポニスム2018」を通じて、縄文時代の古の美から最新技術を駆使した現代アートまで、多彩な日本文化が披露されていくたびに、驚きと感動、賞賛を持って受け入れられていくのは間違いなさそうです。
「ジャポニスム2018」はこれからが本番。日本各地の魅力をパリに向け、またパリを通して世界に向けて発信し、文化交流が日本の未来を切り開くきっかけとなることを期待しています。
■「ジャポニスム2018:響きあう魂」コンセプト
タイトルである「ジャポニスム 2018:響きあう魂」には、二つの意味が込められています。
一つは、過去から現代までさまざまな日本文化の根底に存在する、自然を敬い、異なる価値観の調和を尊ぶ「美意識」です。日本人は、常に外部から異文化を取り入れ、自らの文化と響きあわせ融合させることで、新しい文化を創造してきました。
多様な価値が調和し、共存するところにこそ、善悪を超えた「美」があるとする日本文化ならではの「美意識」を世界に紹介します。
二つ目は、日本とフランスの感性の共鳴です。文化芸術を通して日本とフランスが感性を共鳴させ、協働すること、さらには共鳴の輪を世界中に広げていくことで、21世紀の国際社会が直面しているさまざまな課題が解決に向かうことを期待します。
「ジャポニスム2018:響きあう魂」開催概要などはこちらでチェック
https://www.artlogue.org/japonismes2018/