「井上有一 1916-1985 -書の開放-」展

ARTLOGUE 編集部2018/07/06(金) - 16:08 に投稿
© UNAC TOKYO, 撮影:伊藤時男

 

戦後日本の伝統美術の前衛グループの中で、最も創造的な活動を展 開した一人である書家の井上有一(1916~1985 年)。本展は、戦後 まもなく世界的に高い評価を得た数少ない書家である井上の代表作を中 心に、紙と墨による簡素な材料、技法によって生まれる豊かで多様なモノク ロームの世界を紹介し、日本の伝統文化を世界の芸術においてどのように 位置づけていくのかを巡って腐心した井上有一芸術の核心に迫ります。

 

■展覧会紹介

井上有一は、1916 年東京に生まれ、青山師範学校(現:東京学芸大学)を卒業後、小学校教員をつとめ ながら、画家を志して画塾や研究所にて学びました。1941 年より書に転じ、1952 年には同志とともに墨人会を結 成、前衛的な書によって注目を集めるようになりました。墨人会は、書に限らず、洋の東西を問わず美術、哲学、文 学と幅広い研究者や画家、書家などの作家の論考や発言を取り上げ、フランスのピエール・スーラージュをはじめ、海 外の前衛的な現代芸術家との交信も盛んに行いました。墨人会結成後、井上は、当時ニューヨークで興ったアクショ ン・ペインティングに呼応し、文字という形態を捨てた作品を書きました。しかし、1950 年代後半、井上は文字本来 の意義を再認識し、漢字を用いた表現に戻っていき、そうした作品が認められ、ドクメンタⅡやサンパウロ・ビエンナーレ などの国際美術展に招待出品するなど、国際的に活躍しました。そして晩年には、鉛筆やコンテによる作品を制作し、 独自の境地を示しました。

近年、国内外で井上有一の芸術は改めて評価されており、国内では 2016 年に金沢 21 世紀美術館で過去最 大規模の回顧展「生誕百年記念 井上有一」が開催され、海外ではニューヨークやドイツ、スイスなどでその作品が 紹介されています。本展は、フランスで開催される初めての井上の回顧展となります。1989 年に京都国立近代美術 館で行われ、井上の芸術の評価を決定付ける展覧会となった「大きな井上有一展 YU-ICHI works 1955-85」 を開催し、現在も井上の重要な作品の多くを所蔵する京都国立近代美術館から特別協力を得て、1956 年から 1985 年までの約 30 年にわたり、井上有一が絶えず新たな問題意識を自己に課しつつ制作した作品約 75 点を 通し、常に清貧に身を置き、全生命力を投入して生み出された、豪快で気迫あふれる井上の書の軌跡をたどります。 また本展は、パリ日本文化会館での会期のあと、アルビのトゥールーズ・ロートレック美術館にも巡回が決定しており、フ ランス国内での関心の高さを窺わせます。

 

■開催概要1

会 期:2018 年 7月14日(土)~2018 年9月15日(土)
会 場:パリ日本文化会館(101 bis, quai Branly, パリ市 15 区)

■開催概要2

会 期:2018 年9月29日(土) ~2018年12月17日(月)
会 場:トゥールーズ・ロートレック美術館

 

『ジャポニスム2018:響きあう魂』

日仏友好160年の本2018年、両国政府間合意に基づき、芸術の都フランス・パリを中心に、大規模な日本文化・芸術の祭典「ジャポニスム2018:響きあう魂」を開催します。

本企画では、パリ内外の100近くの会場で、展覧会や舞台公演に加えて、さまざまな文化芸術を約8ヶ月間にわたって紹介していきます。古くは日本文化の原点とも言うべき縄文から伊藤若冲、琳派、そして最新のメディア・アート、アニメ、マンガまでを紹介する「展示」や、歌舞伎から現代演劇や初音ミクまで、日本の文化の多様性に富んだ魅力を紹介する「舞台公演」、さらに「映画」、食や祭りなど日本人の日常生活に根ざした文化等をテーマとする「生活文化 他」の4つのカテゴリーで東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を前に、日本各地の魅力をパリに向け、また世界に向けて発信します。


会 期:2018年7月~2018年2月
事務局:独立行政法人国際交流基金
ジャポニスム2018公式サイト:https://japonismes.org/

 

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