リー・ミンホ展
《Fil blanc n.47》2015 60x60cm インクジェットプリント
リー・ミンホは韓国・ソウル出身。1990年からフランスのパリにて本格的な作家活動を開始し、1990年代後半より画家から写真家に転向しました。リーが継続してテーマとするのは、現代におけるアイデンティティの喪失と匿名性です。2009年の個展《ポータブルランドスケープ》シリーズでは、写真中写真の形式を用いて異なる時空間を画面上で同居させ、2012年個展での《名前のない風景》シリーズでは、一貫性のない写真の断片を本来のコンテクストから引き剥がしてパソコン上で合成することで、風景の匿名性というテーマをさらに突き詰めました。こうした継ぎ接ぎの風景は、現実世界がイメージの戯れに置き換えられてしまった現代のシミュレーション社会を克明に描き出す一方、彼女が日常の中で撮影した写真によって構成される記憶の多面体として、大きな歴史と小さな歴史が混在する現代の歴史・美術状況をも示唆します。