Veronika DOBERS《Between Earth and Heaven》 80x60cm 2016年 アクリルガラスに油彩・水彩
近代社会は、特に女性にとって以前とは比べようのない多様な生き方や価値観を育みました。女性というジェンダーの固定概念は薄まり、女性が活躍する時代と謳われる現代ですが、その背景には、様々な歴史、光と影があります。ギャラリーヤマキファインアートでは今までも女性アーティストの個展を数多く開催してきましたが、それぞれの作家との関わりを通して、必ずしも女性アーティストたちが正当な評価を受けてきたわけではないこと、彼女たちがアーティストとして自立するには多くの制度的・社会的・観念的な壁を乗り越えねばならなかったことを実感しました。一方で、彼女たちは、そのような不遇に対しても距離を置きながら独自に新しい表現を希求して、あきらめることなく発表の場を模索し、不屈の精神で様々な手法やスタイルを追究し続けてきたことも知りました。
こうした女性たちの時代背景や表現を振り返り、また「今」の女性ならではの表現を制作する若手作家にいたるまでの道程を問い直すことで、女性アーティストとその作品の評価がどのように行われてきたのか、そして彼女ら自身の意識はどのように変わってきたのか、美術と女性、それらを取り巻く社会的状況をふまえながら考察を深めてまいります。その第7弾となる本展では、ヴェロニカ・ドバスを紹介いたします。
ベロニカ・ドバスは旧東ドイツに生まれ、紙の絵画・ドローイング、版画、アニメーションを手がけるほか、東欧の伝統技法に多く見られる「ガラス絵」を用い、独特の表現を展開してきました。どこかシュールにも見える 人、花、植物といったモティーフの抽象的な組み合わせで「理想郷への憧れ」や「望郷への葛藤」を大きなテーマのとしてきた彼女がこの度みせる表現もまた、人間の精神性をとらえた世界です。
今回発表するガラス絵作品のひとつ《Between Earth and Heaven》は彼女がヘルマン・ヘッセの小説で出会った言葉と世界観に感銘を受け、誕生した作品です。空と地(海)の狭間で絶えず漂う雲のごとく、時に熱い思いを持って、しかしどこか頼りなく宙吊りの状態で佇む私たち人間もまた、形を変えながらも頑なにあり続けようとする存在なのではないか。そんな情景が、彼女の追い求める人間の“魂”をより鮮明に映し出し、見るものの内面をそっと刺激しはじめるのです。作家が追及し続ける独特のかたちと精神世界をご高覧いただけますと幸いです。
【概 要】
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会 期:2017年11月25日(土) - 12月 22日(金) 休廊日:日・月曜日
開廊時間:11:00 - 13:00 / 14:00 - 19:00
所 在 地:ギャラリーヤマキファインアート
問 合 せ:TEL: 078-391-1666
アクセス:JR ・阪神 元町駅 西口より徒歩 1 分
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【近年の主な展覧会】
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2016 GALERIE MITTE BREMEN(ドイツ)
2015 Lギャラリー(名古屋)
2015 Atelierhaus Friesenstrasse(ドイツ)
2014 カスヤの森現代美術館(神奈川)
2013 DON SOKER CONTEMPORARY ART
(アメリカ)
2013 HAUS AM WASSER(ドイツ)
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【略歴】
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1950 ドイツに生まれる
1972-1976 ブルク・ギービヒェンシュタイン美術大学に学ぶ
1985 ブレーメンに居を移す
1992 NECアートコンペティションでFirst Prize賞を受賞
2001 仏・ヴァロリスにてアーティストインレジデンス
2007-2011 大阪に居住
2011 帰国後ブレーメンで活動を続ける
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