古美術
The 備前 ― 土と炎から生まれる造形美 ―
春の江戸絵画まつり<br>へそまがり日本美術 禅画からヘタウマまで
人は、見事な美しさや完璧な美しさに、大きな感動を覚えます。しかしその一方で、きれいとは言いがたいもの、不格好で不完全なものに心惹かれることもあるでしょう。「へそまがりの心の働き」とでも言ったらよいでしょうか。
例えば、禅画に描かれた寒山拾得の二人は、不可解さで見る者を引きつけます。また、江戸時代の文人画ぶんじんがには、思わず「ヘタウマ?」と言いたくなるような作品があります。文人画ぶんじんがの世界では、あえて朴訥に描くことで、汚れのない無垢な心を表現できると考えられていたのです。
あるいは、徳川家光が描いた《兎図》はどうでしょうか。将軍や殿様が描いた絵には、ときおり見た人が「???」となるような、何と言い表せばよいか困ってしまうような「立派な」作品があります。描き手が超越した存在であることと、関係があるのかもしれません。更に近代にも、子供が描いた絵を手本にして「素朴」にのめり込む画家たちがいました。
この展覧会では、 中世の禅画から現代のヘタウマまで、 日本の美術史に点在する「へそまがりの心の働き」の成果をご覧いただきます。へそまがりの感性が生んだ、輝かしくも悩ましい作品の数々を眺めれば、日本美術のもう一つの何かが見えてくるかもしれません。
茶の湯の釜
王羲之書法の残影―唐時代への道程―
特別企画展 富岡鉄斎―文人として生きる―
江戸の園芸熱 -浮世絵に見る庶民の草花愛-
神に捧げた刀― 神と刀の2000年 ―
人間国宝・桂 盛仁 金工の世界-江戸彫金の技-
桂盛仁(かつら もりひと/1944生)は長年に亘り練馬区に在住し制作を続けている、人間国宝に認定された金工作家です。
江戸時代初期から続く彫金の一派、柳川派の流れを汲み、明治・大正・昭和期にかけて、煙草入れなど装身具の彫金で大人気を博した二代豊川光長、桂光春を輩出した流派で、伯父である光春を継いだのが盛仁の父、桂盛行(かつら もりゆき/1914~96)となります。
父、盛行のもとで修行した桂盛仁は、打ち出しや彫金、象嵌、色絵等の技法を駆使し、日本伝統工芸展などで高い評価を得てきました。宮内庁買い上げ、文化庁長官賞を受賞するなど研鑽を積み、2008年に重要無形文化財「彫金」保持者(人間国宝)に認定されています。
昨今、明治期の卓越した工芸作品を“超絶技巧”と称し、ロストテクノロジーとしての評価がなされてきていますが、そうした工芸の技術が脈々と受け継がれてきていることは、柳川派、そして桂盛仁の金工を見ると明らかです。
本展は、桂盛仁の初期から近作までを通観するとともに、桂のルーツである、盛行、そして、光長、光春の作品も併せて展示し、今に生き続ける江戸彫金の技を再認識するものです。