石川直樹
写真都市展 -ウィリアム・クラインと22世紀を生きる写真家たち-
21_21 DESIGN SIGHT 企画展
写真都市展
−ウィリアム・クラインと22 世紀を生きる写真家たち−
奥能登国際芸術祭2017
芸術祭開催によせて
総合ディレクター 北川フラム
奥能登・珠洲は、能登半島の先端に位置し、周囲を日本海に囲まれた農山漁村です。黒潮(暖流)、親潮(寒流)がぶつかり、大陸からの季節風が海の水蒸気を含んで雨を降らし、外浦(北側)と内浦(南側)を有する独特の地勢も重なって、東西の植生が共存する豊かな植物・生物相につながっています。遣唐使、渤海使、北前船など、かつて日本海を舞台とした海上交易が盛んだったころ、さまざまな船が立ち寄り栄えましたが、海運から陸運に交通体系が変わったことで半島の先端という立地が弱点となり、過疎化が進行してきました。1954年に市制が施行した当時38,000人の人口は、現在では15,000人となっています。
珠洲は今までの価値観では日本列島のさいはての土地です。しかし日本各地の生活文化が集積し、そのあらわれである祭りはキリコ、曳山やヨバレの風習として今も残る日本文化の源流が湧き出ずる場所でもあります。それは今の時代、逆に希望のありかとしての特異点になるものです。
石川直樹 この星の光の地図を写す
世界をフィールドに活躍する写真家、石川直樹の個展を開催します。石川は22歳で北極点から南極点までを人力で踏破、23歳で七大陸最高峰の登頂に成功しました。その後も国内・世界各地を旅し、人類学・民俗学などの観点を取り入れつつ、独自のスタイルで写真を撮り続けています。
本展では、過酷な極地や山々に挑んだ冒険から生まれた代表作はもちろん、日本列島の南北に点在する島々を捉えた《ARCHIPELAGO》のシリーズ、さらには自然が捉えた《潟と里山》のシリーズまで、初期から現在に至る活動を未発表作品を織り交ぜながら総合的に紹介します。
休むことなく旅を続けながら、石川は、地球上のあらゆる場所に、人類が古くから伝えてきた技術=叡智を見出してきました。それはもっとも古い意味における「アート」を追求する道のりでもあったのです。わたしたちは、石川のまなざしを通して、慣れ親しんだ世界地図とは異なる、もう一つの視点からこの地球という星に出会うことになるでしょう。