上野恩賜公園に不思議な光景が展開している。公園の真ん中にロボットアームが林立しているのだ。
東京国立博物館を背に、竹の台広場に4機の産業用ロボットアームが設置され、アームの先端に取り付けられたブレードのようなものが砂利になにかを描いている。
「Tokyo Tokyo FESTIVAL スペシャル13」のひとつとして開催されている『ザ・コンスタント・ガーデナーズ(THE CONSTANT GARDENERS)』だ。この大規模屋外ロボティック・アートインスタ レーションは、英国のアーティスト、ジェイソン・ブルージュ氏率いるジェイソン・ブルージュ・スタジオが企画、制作している。
竹の台広場に設置されたステージの中央にはまるで枯山水か石庭のように平らに美しく砂利が敷き詰められており、その両側には各2機づつの巨大な産業用ロボットアームが据え付けられている。ロボットアームはガイドウェイに沿って移動しつつ、アームの先端に取り付けられた矢じりのような形をしたブレードが砂利の上を滑るように動きながら図形を描いている。
無骨な姿のロボットアームが、繊細な動作で砂利に絵を描く様は、なんとも対照的でユーモラスだ。
彼ら(?)近未来の「ガーデナー(庭師)」が描いているのは、様々なスポーツ競技におけるアスリートたちが生み出す身体の動きをAIが読み込んでイメージ化したもの。そのデータを読み込んだロボットアーム が、巨大な砂利を敷き詰めたキャンバスに砂紋で表現していく。
ロボット工学と日本の庭園文化、これにスポーツが融合した革新的な作品「ザ・コンスタント・ガーデナーズ」。会期中は毎日パフォーマンスを行い、約150パターンもの独創的な作品を展開する。オリンピック・パラリンピックに関連した事業ということで描いているものがスポーツという制限があるが、ぜひAIならではより複雑な絵柄や、より日本的な紋様なども見たいものだ。
ブルージュ氏によれば、設置されたロボットアームは1.3トンあるという。計5.2トン。さらに敷き詰めた玄武岩と花崗岩からなる砂利はなんと18トン! これらをすべて英国から持ち込んだということだ。本来であれば、開催地で用意するということだが、今回はCOVID-19の影響で、日本国内の活動にも制限があるため、シミュレーションも含め、ぎりぎりまで英国で行っていたそうだ。日本国内で調達したのはステージの周囲に飾られた植物だけだそうだ。
英国ロンドンに拠点を持つジェイソン・ブルージュ・スタジオは、建築家、工業デザイナー、エンジニア、ビジュアライザー、プログラマーからなる専門家チームを擁し、アート、建築、テクノロジー、インタラクティブデザイン分野のパイオニアとして、国際的に活動している。
Tokyo Tokyo FESTIVALはオリンピック・パラリンピックに向けて東京を文化の面から盛り上げるために行われている文化プログラムで、スペシャル13はその中核となる事業で、「ザ・コンスタント・ガーデナーズ」はその企画のひとつとして開催されている。また、「ザ・コンスタント・ガーデナーズ」は、駐日英国大使館とブリティッシュ・カウンシルが2019年より日本において展開している日英交流年「UK in JAPAN」の主要プログラムのひとつでもある。上野恩賜公園で9月5日まで公開されている。
Tokyo Tokyo FESTIVAL スペシャル13
https://ttf-koubo.jp/project/jason-bruges-studio/
ジェイソン・ブルージュ・スタジオ
https://www.jasonbruges.com/theconstantgardenersjp