日本の色彩の美意識に迫る特別展「日本の色―吉岡幸雄の仕事と蒐集—」が、京都・細見美術館にて開催中!

遠藤 友香2021/01/16(土) - 14:16 に投稿
細見美術館3階に併設の茶室「古香庵」にて1月15日~17日に限定公開中の「特別展示 吉岡幸雄 季節の飾りと書斎再現『俤』」

京都・細見美術館において、2021年1月5日(火)~4月11日(日)まで、特別展「日本の色―吉岡幸雄の仕事と蒐集—」が開催されています。本展覧会は、2019年秋に急逝した染織史家の吉岡幸雄氏を追悼し、その業績を回顧する没後初の展覧会です。

吉岡氏は、1946年、京都市生まれ。早稲田大学を卒業後、図書出版「紫紅社」を設立。1988年42歳のとき、京都で江戸時代末期から続く染色工房「染司よしおか」を継いで五代目当主となり、また染織史の研究者としても活躍しました。

吉岡氏は古来の文献を紐解き、伝世の染織遺品をはじめ、古今東西の美術工芸を学んで、伝統の色彩を求めました。各地に伝わる染料・素材・技術を訪ねて、その保存と復興に努め、社寺の祭祀、古典文学などにみる色彩や装束の再現・復元にも力を尽くしたといいます。著書の中で自らを「日本の伝統色にこだわり、真に美しい色を求めて、時代をさかのぼろうとあえいでいる染屋」と称した吉岡氏。そんな吉岡氏の美への憧憬と本質を見極める眼、そしてあくなき探求心によって成し遂げられた仕事と蒐集の軌跡を紹介する本展は、以下の4章で構成されています。
 

第1章 祈りと荘厳の色彩

飛鳥・天平の時代には、仏教の伝来とともに国家の礎が築かれ、異国から様々な文物がもたらされました。吉岡氏は、奈良の大寺に今も守り伝えされる、これらの行事にまつわる遺宝や服飾を目の当たりにし、推考を重ねて、我が国染織史上の頂点を極めたといわれる時代の華やかな色彩の再現に取り組みました。

吉岡幸雄


第2章 王朝文学の色

和様の文化が花開いた平安時代。吉岡氏は王朝びとの磨き上げた感性ほとばしる色彩観を知ることができる、様々な文献資料、大和絵などの絵画資料も渉猟し、典雅艶麗な色の数々を甦らせました。

吉岡幸雄


第3章 神に捧げる 季節の彩り

変わることなく巡りくる季節は古来、めでたきこととされ、ひとびとは神霊への祈りと感 謝を込めて、折々に捧げものを奉りました。吉岡氏は染め人として、季節の移ろいとともに歳時にまつわる習わしを大切にしました。

石清水八幡宮の祭礼の供花神饌の造り花


第4章 古裂の美―いにしえをたずねて

染織の歴史の流れの中に生きようとする吉岡氏にとって、経る時の荒波を越え大切に保持されてきた染織遺品は、先人の叡智を伝える何よりの道標であり、取り組む仕事への闘志をかきたてる源泉となりました。愛蔵したコレクションの一部を紹介します。

本展では、研究のために幸雄氏とその父・常雄氏が蒐集した多彩な古裂類も紹介。正倉院裂、熨斗目のしめ、舶載の更紗、「小袖屏風」(国立歴史民俗博物館蔵 野村コレクション)で知られる小袖裂といった貴重な染織遺品を展示しています。

吉岡幸雄
また、六代目当主として後継した三女・更紗氏が、日本の色の魅力を語るトークショーも予定されています。

「染司よしおか」は日本古来の染色方法で、“いにしへの色”の再現に取り組んでいます。中でも、東大寺二月堂のお水取り、石清水八幡宮の放生会、薬師寺の花会式に用いられる飾り花の染和紙は、毎年欠かさず献納しているといいます。また薬師寺や東大寺などに伝わる天平時代の伎楽装束の天然染料による復元、『源氏物語』など古典文学に表現された衣裳の再現も行っています。

吉岡氏が追い求めた、日本の色彩の魅力を体感しに、ぜひ足を運んでみてください。
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開催概要
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会 期:2021年1月5日(火)~4月11日(日)
*前期:2021年1月5日(火)~2月21日(日)・後期:2021年2月23日(火・祝)~4月11日(日)
会 場:細見美術館 
休 館:月曜日(祝日の場合、翌日)
時 間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
料 金:一般 1,400円、学生 1,100円

 

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