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清原果耶(きよはらかや)が主演するNHKドラマ『透明なゆりかご』観てましたかー?
第6話には注目のモデル・女優のモトーラ世理奈がヤンキー少女役で登場。彼女の風にたゆたうような演技と、清原さんの透明感のフォトジェニック対決に悶絶してしまいました。
そして注目してほしいのは、ドラマの中で流れる音楽の完成度の高さ。手がけたのは日本を代表するサキソフォン奏者の一人で、映画やテレビ等で様々な楽曲を提供してきた音楽家、清水靖晃。
劇中音楽、いわゆる劇伴(げきばん)が素晴らしいドラマは、すべての制作が最高で傑作が多い!ということをお伝えするのが今回のテーマです。
清原果耶とモトーラ世理奈の2人のきらめく女優
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デビュー作のNHK連続テレビ小説『あさが来た』のふゆ役で、心を鷲づかみにされた清原果耶。
彼女の『透明なゆりかご』での抜きんでた演技力と瑞々しい存在感は圧倒的です。
2019年1月公開予定の映画『デイアンドナイト』では、約500人の候補者の中からオーディションでヒロイン役に選ばれ、プロデューサーの俳優・山田孝之が演技を大絶賛。日本を代表する大女優に成長する予感にあふれています。
RADWIMPSの『人間開花』のアルバム・カバーアートに起用されたモトーラ世理奈
『透明なゆりかご』でNHKドラマに初出演して清原果耶と共演したモトーラ世理奈も、今後の女優活動が大いに期待される逸材。
RADWIMPSの『人間開花』のアルバムジャケットや資生堂の『花椿』の表紙、『装苑』の専属モデルで新たなファッション・アイコンとして注目され、2018年4月には女優の二階堂ふみがフォトグラファーとして初めて撮り下ろした写真集の被写体に選ばれ『月刊モトーラ世理奈・夏 写真 二階堂ふみ』が出版されています。
2019年公開予定の台湾を舞台とした映画『恋恋豆花(レンレン・ドゥファ)』では、2,000人のオーディションの中から主演女優の座を獲得しました。
日本より欧米で人気のレジェンド・清水靖晃
『透明なゆりかご』のキャストに引っ張られてしまいましたが、劇伴を担当した清水靖晃(しみずやすあき、1954〜)は日本人ミュージシャンのレジェンド的な存在です。
清水靖晃
1990年代から2000年代初頭にかけて、京都高台寺、新潟市新津美術館、猪熊弦一郎現代美術館、水戸芸術館などにおいて、「美術館」という特殊な空間を生かした演奏活動を展開。
1991年から1994年にかけては、細野晴臣と「東京ムラムラ・フェスティバル」をプロデュースし、ミニマル・ミュージックの作曲家であり映画音楽の巨匠としても知られるマイケル・ナイマンとジャズを始め様々なジャンルの音楽を取り込み独自の音楽を発信するジョン・ゾーン、といった意外性の高い組み合わせによるプログラムで注目を集めました。
清水が1980年代にリリースしたソロアルバム『案山子』や『ミュージック・フォー・コマーシャルズ』、かつてバンドリーダーとして率いていた伝説のバンド、Mariah(マライア)のアルバム『うたかたの日々』は、近年欧米を中心に高い再評価がなされています。
日本人のレコードコレクターの中で高い評価を得てきたこの『うたかたの日々』は、やがてOptimoやPrins Thomasなどのヨーロッパ出身のレコードディガーたちのレコードバッグやプレイリストに入るようになり、その評価は新しい世代の音楽ファンへも伝わることになった。
Anthony Obst「インタビュー:清水靖晃」http://www.redbullmusicacademy.jp/jp/magazine/interview-mariahs-yasuaki-shimizu、2018年9月30日アクセス
『案山子』は、音楽データベースサイトDiscogs(ディスコグス)の2018年第1四半期のセールスレポート「TOP 20 BEST SELLING RELEASE VARIATIONS」で2位を記録するほどの人気です。
映画音楽では、ピーター・グリーナウェイ監督の『ピーター・グリーナウェイの枕草子』に曲を提供の他、第86回アカデミー賞にノミネートされた、現代美術家、篠原有司男(しのはらうしお)と乃り子夫妻の日常を綴ったドキュメンタリー映画『キューティー&ボクサー』、2011年の松本人志監督『さや侍』などの音楽を担当しました。
ドラマの劇伴では2014年からNHK制作のものを手がけ始め、『夏目漱石の妻』(2016年)、『みをつくし料理帖』(2017年)などを担当。黒木華の主演ドラマ『みをつくし料理帖』の音楽は、非常に素晴らしかった記憶があります。
■映画『キューティー&ボクサー』予告
清水の劇伴は、空間の奥行きを感じさせるアンビエントな「浮遊感」がその特徴。クラシックの素養に裏打ちされた繊細なサキソフォンの響き、映像との精緻なシンクロ表現は、年齢を超えてますます磨きがかかり、最高の劇伴作品を創り出すに至っています。ぜひこの機会に、清水靖晃の音楽を再発見してみてください。
骨太でスタイリッシュな上野耕路の劇伴
清水とのコラボの経験もある、上野耕路(うえのこうじ、1960〜)も優れた映画音楽やドラマの劇伴を数多く手がけてきた音楽家。
上野耕路
上野は、1981年に戸川純、太田螢一と共に音楽ユニット「ゲルニカ」を結成してニューウェーヴ・シーンを席巻。映画『ゴジラ』で知られる日本映画音楽の巨匠、伊福部昭(いふくべあきら、1914~2006)に薫陶を得たドラマチックな作曲と演奏スタイルがその持ち味です。
日本大学藝術学部にて映画音楽と音響表現の講義も受け持つ、アカデミックな雰囲気のキャラクターも魅力。
映画音楽では、2012年の『ヘルタースケルター』、同年の『のぼうの城』で第36回日本アカデミー賞優秀音楽賞を受賞、テレビドラマの音楽では、2016年のNHKドラマ『逃げる女』や同年のNetflix制作によるドラマ版の『火花』、今年2018年の野島伸司脚本の『高嶺の花』の音楽を担当。
特に、水野美紀と仲里依紗のW主演によるサスペンスドラマ『逃げる女』は、両女優の迫真の演技に秀逸なカメラワークと上野の劇伴が光る傑作でした。NHK土曜ドラマ「逃げる女」オリジナル・サウンドドラックがCDリリースされています。
NHK土曜ドラマ「逃げる女」オリジナル・サウンドドラック
スリリングな劇伴が効果抜群の大友良英
NHKドラマの劇伴と言えば、大友良英(おおともよしひで、1959〜)を挙げないわけにはいかないでしょう。
大友良英
大友は、1990年にGROUND-ZEROを結成し、解散後は即興やノイズミュージックの分野で活動し、2000年代にはジャズコンボONJQ(大友良英ニュー・ジャズ・クインテット)でフリージャズ的な音楽を展開。知的障害者とミュージシャンたちによるグループ「音遊びの会」のサポートでも注目を集めました。
せんだいメディアテークの「without records」(2007年)や、山口情報芸術センターの「ENSEMBLES」(2008年)をはじめとした、現代美術やメディアアートと音楽を融合した展示作品も発表しています。
2011年の東日本大震災を受けて、自身が10代を過ごした福島県で「プロジェクト FUKUSHIMA!」を主宰。野外音楽イベント「フェスティバル FUKUSHIMA!」をはじめとする活動で、2012年度の「芸術選奨文部科学大臣賞芸術振興部門」を受賞しました。
2013年には、NHKの連続テレビ小説『あまちゃん』の音楽を担当し、日本レコード大賞作曲賞を受賞、NHK紅白歌合戦にも出演して、大友の名は一般にも広く知られることとなりました。
2014年には国際交流基金と共に「ENSEMBLES ASIAプロジェクト」をスタート。アジア各国の音楽家同士のネットワークづくりや音楽を通したアジア諸国の交流にも尽力しています。
映画音楽家としても70を超える映像作品の音楽を手がけ、テレビドラマの音楽では、2011年の『鈴木先生』、2012年のNHK版『とんび』、2015年のNHKドラマ版『64(ロクヨン)』、2016年WOWOW『撃てない警官』、2017年『居酒屋ふじ』などを担当。
2019年1月より放送予定の、宮藤官九郎の脚本によるNHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』の音楽も担当します。
中でもピエール瀧の顔と演技、カメラワークが光った『64(ロクヨン)』のスリリングな劇伴は最高で、ドラマも文化庁芸術祭賞大賞(テレビ・ドラマ部門)を受賞した傑作でした。
若手ミュージシャンの劇伴
日本の若手ミュージシャンが参加した劇伴作品もあります。
瑛太と松田龍平がW主演する映画、『まほろ駅前多田便利軒』と『まほろ駅前狂騒曲』の続編となるテレビドラマ『まほろ駅前番外地』では、映画音楽を担当した岸田繁(くるり)に代わり、元ゆらゆら帝国の鬼才・坂本慎太郎が劇伴を担当しました。
監督と脚本は『モテキ』の大根仁(おおねひとし)が担当。ゆるい脱力感と独特のビビッドさのあるストーリーに、坂本慎太郎の劇伴がポコポコと効果音的に重なる不思議な世界は、まさに唯一無二のものでした。
ドラマはギャラクシー賞月間賞と日本民間放送連盟賞のテレビドラマ部門・優秀賞を受賞しています。
2017年のNHKプレミアムドラマ『嘘なんてひとつもないの』では、インディーズ・ミュージシャンの王舟が劇伴を担当。
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最終回まで何が本当で何が嘘なのかわからない脚本に、王舟のドリーミーな曲が幻惑的な効果を与えていました。
劇伴が良いドラマは、総じてカメラや照明、録音スタッフも優秀で、結果的に傑作ドラマになる可能性が高いのです。
劇伴に聞き耳を立てることで、ドラマのクオリティーが占え、ドラマを100倍楽しむことができます。さらにその先には、『鉄腕アトム』の音を創り出した大野松雄などの「効果音」という世界もあるのですが、それはまた別の機会に。