「これからの写真」のギャラリートーク
スピーカー
中村史子
会場
会期
2014年8月1日~9月28日
展示について
従来、写真はカメラで撮影され紙にプリントされたものを指していました。しかし、デジタル技術の革新にともない、写真をめぐる環境は急激に変化しています。特定の技術としての写真は多様なデジタル技術の中で、その輪郭を失いつつあると言えます。 また、現代アートの領域では、写真、映像、立体など幾つもの形態を自由に選択しながら作品を創作する者も少なくありません。 こうした現状を意識して、本展では、空間、時間、鑑賞者との関係性など様々な視点から写真とイメージの様相を探ります。平面作品のみならず、映像や立体作品を含む 9 名の芸術家、写真家の表現からは、これからの写真の在り処が浮かび上がるでしょう。 見どころ: ① 9 名の豪華出展者による現代写真の決定版 世界的に評価の高い畠山直哉や川内倫子から、2010 年代から目覚ましい活躍を見せる田村友一郎、加納俊輔等の若手作家まで、豪華な出展作家がそろいました。ここ 20 年間の日本の写真表現を一堂に観覧できるまたとない機会です。現代の日本の写真表現をまとめた決定版的な展覧会とも言えるでしょう。 ② 写真作品、映像作品、立体作品と多様な表現 本展でご紹介するのは、壁にかかった写真作品だけではありません。映像や立体作品、体験型の作品など、多様な表現形式の作品があります。しかし、どれも「写真」に対する真摯なアプローチです。オーソドックスな写真のファンも、先鋭的な現代アートファンも、共に楽しめる内容です。 ③ 同時期に志賀理江子の新収蔵作品を公開 愛知県美術館は、平成 25 年度に愛知県・岡崎出身の写真家、志賀理江子の作品《螺旋海岸》(2009−2012)を収蔵しました。「これからの写真」展に合わせて、作品を初公開いたします。現在、国際的に注目されている志賀の作品を合わせてご覧いただくことで、写真表現の今に対する理解がより一層深まることでしょう。
アーティストについて
畠山直哉(はたけやま なおや 1958-) 鉱山に取材した「ライム・ワークス」シリーズなど人間と自然の関係を主題とした作品で知られる。 本展では、鉱山の発破の瞬間を撮影した「BLAST」シリーズを出展する。 鷹野隆大(たかの りゅうだい 1963-) セクシュアリティーの揺らぎをテーマとした作品で高い注目を集めた鷹野は、鷹野と被写体が共に裸で並ぶポートレート写真「おれと」シリーズの展示を予定している。 木村友紀(きむら ゆき 1971-) 既存の写真を複製し、見る者の想像力を刺激するようなインスタレーションを発表する。鑑賞者は衝立状の立体物の間を通りながら写真を眺めることになる。 鈴木崇(すずき たかし 1971-) 「BAU」シリーズは、色とりどりのスポンジを組み合わせて撮影した作品である。今回は、これを大量に美術館の壁にかけ、膨大なイメージに囲まれる空間を生み出す。 川内倫子(かわうち りんこ 1972-) 国内外で高い注目を集める写真家の一人であり、本展では、写真だけではなく映像も同時に展示する。 川内独自の詩的な世界を十分に味わえる機会となるだろう。 田村友一郎(たむら ゆういちろう 1977-) 様々なメディアを自在に行き来する作家である。今回は、写真に造詣の深かった尾張藩主、徳川慶勝ゆかりの茶室から着想を得て新作を発表する。 新井卓(あらい たかし 1978- ) 写真技術誕生当初に使われた技法、ダゲレオタイプ(銀板写真)を用いる作家である。本展では、長崎等の原爆資料と被爆者の姿を銀板に刻み発表する。 田代一倫(たしろ かずとも 1980-) 2011 年の 4 月から約 2 年間東北の沿岸部をめぐり、そこで出会った 1200 人のポートレートを撮影した。 ポートレートからは、従来の報道写真とは異なる東北の姿が浮かび上がる。 加納俊輔(かのう しゅんすけ 1983-) 実際の大理石やベニヤ板の上に、それらを撮影した写真を貼付け、見る者を困惑させる。一種のだま し絵のような作品は、視覚と物体の関係を軽やかに問い直す。
スピーカーについて
中村史子 (なかむら・ふみこ) 2007年より愛知県美術館にて学芸員として勤務。 「アヴァンギャルド・チャイナ」(2009年)、「放課後のはらっぱ 櫃田伸也とその教え子たち」(2009年)、「魔術/美術」(2012年)などの企画展をするほか、あいちトリエンナーレ2013にてアシスタント・キュレーターを務める。 また、若手作家を紹介する小企画展「APMoA Project, ARCH」を立ち上げ、2015年にはARCH vol. 13として伊東宣明の個展を予定している。