愛知県美術館 大巻伸嗣《Echoes Infinityー永遠と一瞬》 アートはダイエットになる! 私が、『アートサプリウォーク』というアート×ウォークの講座を担当するようになって、まもなく半年が経とうとしています。 この半年間、講座の準備に下調べ、ロケハン、開催当日と、美術館やギャラリーにこれまで以上に足しげく通う生活を送っていたところ、ふと気が付くと、なんと体重が1キロ減っていたのです。 ダイエットを意識したことは全くなく、1日3食の食事に3時のおやつ、深夜のアイスクリームもやめることなく、です! なぜでしょうか? 思い返せば、この半年間、私は、知らず知らずのうちに毎日たくさん歩いていることに気が付きました。 美術館に行ったら、想像以上に歩いて疲れた。展示室内に用意されている椅子がありがたかった。 あなたにも、そんな経験はありませんか? そうなんです。美術館ってけっこう疲れるんです。 つまり、アートはダイエットになるんです! そこで、このコラムでは、わたくし羽田がおすすめのアートダイエットについてご紹介したいと思います。
継続は力なり アートダイエットの3つの掟
アートダイエットの掟 その1 1日1万歩を目標とする
歩くスピードにもよりますが、1万歩歩くと、およそ300キロカロリーの消費になります。 300キロカロリーという消費エネルギーは、運動不足を解消して、肥満や、肥満による病気を予防するのに適当な運動量だそうです。 厚生労働省の「健康日本21」でも1日1万歩が推奨されています。 つまり、アートダイエットでは、痩せることだけが目的ではなく、今の体重をキープすること、健康を維持することを一番の目的として、1日1万歩を目標に掲げたいと思います。 アートダイエットの掟 その2 あくまでもアート鑑賞を目的とする
これまで、食事制限や運動など、様々なダイエットを試してみたものの、どれも続かずダイエット失敗・・・。 という経験をお持ちの方も少なくないはず。 かくいう私も、これまで様々なダイエット法を経験、失敗済みです。 ダイエットを目的にしてしまうと、すぐに結果が出なかったり、掲げた目標を達成できなかったりした場合に、すぐに挫折につながってしまいます。 ここでは、あくまでもアート鑑賞が目的なので、例え1日1万歩が達成できなくてもOK。 また、たくさん歩いた日には、ご褒美スイーツも摂取して、無理なく楽しく、気が付けばダイエットになっていた~! を目指します。 アートダイエットの掟 その3 必ずしも美術館に行く必要なし
毎回、美術館に出かけると、月々にかかる入館料の出費がものすごいことになってしまいます。 無理なく続けるためにも、無料で見られるギャラリーや画廊、街中にあるパブリックアート巡りを中心としたコースをメインに考えることにしましょう。 美術館の展覧会に行くのは月に1回程度と最初から決めておけば、予算的にも安心ですね。 以上が、私が知らず知らずに実践していたアートダイエットです。 つまりは、ゆる~い、誰でもすぐに実践できるダイエットなのです。
芸術祭はダイエットに最適なコースがいっぱい!
全国的に芸術祭ブームと言われる昨今、毎年様々な地域で芸術祭が開かれています。芸術祭は、ほとんどの場合、会場が1か所だけではなく複数の場所に点在しているので、極力歩いて巡ることを心がけると、1万歩はばっちりクリアできるはずです。でも、芸術祭によって会場間の距離や移動方法は様々なので、無理のないように。
というわけで、8月11日からスタートした「あいちトリエンナーレ 2016」で、アートダイエット、実践です! まずは、名古屋駅会場からスタート。 名古屋駅直結のジェイアール名古屋タカシマヤ1階では、佐藤翠さんの作品がお出迎え。
洋服やハイヒールがぎっしり詰まった宝石箱のような佐藤さんの作品に心がときめきます。もう一つ、JPタワー名古屋の森北 伸さんの作品をチェックした後は、長者町会場まで歩いて向かいます。 およそ30分弱で長者町会場に到着。ここまでの歩数3626歩。
長者町は、かつて日本三大繊維街のひとつになるほど、繊維問屋街として発展したエリアです。 長引く不況により、空きビルや駐車場が目立つようになっていますが、今でも繊維問屋を営むお店もあり、名古屋の歴史を垣間見ることができます。 このエリアには、今回11ヶ所の会場が点在しています。
長者町会場には、あいちトリエンナーレ 2010年、2013年の作品が、そのまま残る場所も! このエリアには無料で楽しめるアートもたくさんありますので、アートダイエットには最適です♪ 長者町会場をぐるっと1周したところで、ここまでの合計歩数は5339歩。 消費カロリーは154キロカロリー。 と、ここでトリエンナーレ会場のひとつにもなっている喫茶クラウンでひと休み。 創業昭和27年という老舗の喫茶店です。
今村文さんによる作品が、まるでお店の壁紙に溶け込むようにあしらわれています。 2010年のトリエンナーレでお店の装飾をされた淺井裕介さんの作品もところどころに残っているので、淺井さんと今村さんの作品のコラボレーションも楽しめます。 見学だけに立ち寄ることも可能です。
続いて、長者町会場を後にして、名古屋市美術館へ。 途中の広小路通りにも、パブリックアートがたくさんあるので、寄り道するのもいいかもしれませんね。
ここまで6540歩(今回は広小路通りへの寄り道なし)
名古屋市美術館の前には、ブラジル・リオデジャネイロの作家ジョアン・モデ(João MODÉ)の作品《NET Project》があります。 この作品は、誰もが制作に参加でき、さまざまな素材と色の紐を自由に結び合わせて出来ています。 あいちトリエンナーレ2016では、このプロジェクトが、名古屋市美術館、籠田公園、穂の国とよはし芸術劇場PLATの3つの会場で同時に展開されていて、10月17日(月)以降、愛知芸術文化センター2Fに集められて展示されるそうです。 見るたびに姿を変えていくアート作品です。
名古屋市美術館がある白川公園には20点以上のパブリックアートもあるので、無料で楽しむアートダイエットコースとしてもおすすめです! 続いて、栄会場へ。
2年前に76年の歴史に幕を下ろした旧明治屋栄ビル。 廃墟となったビルは、ふとした瞬間に以前の賑やかさ、華やかさをこちらに思い起こさせて、物寂しくもあります。 そこにアート作品が加わることで、建物自体もゆっくりと息を吹き返したかのようで、なぜか生き生きとして見えました。
ここまでで総歩数は8599歩。 続いて、今回の最後の目的地 愛知芸術文化センターへ。
全国数ある芸術祭の中でもあいちトリエンナーレの特徴は、パフォーミングアーツやオペラなど舞台芸術が充実していること。 今回は会期中にモーツァルトが最後に制作したオペラ「魔笛」の上演もありますし、他にも上演プログラムが目白押し! 1時間程度から気軽に舞台芸術に触れることができるので、是非チェックしてみてください。
愛知県美術館での私の一押しは、大巻伸嗣さんの作品。 真っ白な空間から床にひとつずつ花を描いていき、だんだん満たしていったもの。 日本画の顔料が、粉末のまま“置かれている”と言う表現の方が正しいでしょうか。 息を吹きかけたら、本当に飛んで消えてしまうのだそうです。 そこは“今”という時を見つめなおす空間であり、この世の中に存在するこんなにも鮮やかな色彩の粒子たちに、希望を見る時間でもありました。 愛知県美術館を鑑賞し終えたところで、ここまでの歩数は9421歩。 10000歩まであと少しだったので、 美術館前の久屋大通公園内パブリックアートをいくつか鑑賞して、本日の総歩数10196歩。 無事10000歩達成しました! 総消費カロリーは254キロカロリー! というわけで、名古屋市美術館近くにある「はらドーナッツ」で密かに買っておいた豆乳とおからのヘルシードーナッツをご褒美に頂きました。
あいちトリエンナーレでアートダイエットの感想
真夏の名古屋は、とにかく暑い! そんな中歩くのは過酷・・・と思われるかもしれません。でも、たくさん汗を流して1万歩歩き切った後の達成感を一度味わうと病みつきになってしまうかもしれません。 この記事を書くために、既にこのコースを3回歩いてみた私は、大汗をかきながら歩き切った時のすがすがしさに、この暑さすら好きになってきました。(笑) ただし、水分補給と塩分補給はしっかり行いながら、熱中症対策万全でお出かけくださいね!
最後に、元ラジオDJのわたくし羽田沙織がおすすめする「あいちトリエンナーレ2016」でアートダイエットのおともに聞きたいアルバムを1枚♪ 『The Dreaming Room』 LauraMvula(ローラ・ムビュラ)
UKの実力派シンガーソングライターが今年6月にリリースしたばかりのニューアルバム。 説得力のある、のびやかな歌声は、どこか祈りにも似ています。 サウンドは、オーガニックなUKソウルにクラッシックの要素も合わさって、それはまるで世界各地を旅しているかのよう。 「虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅」がテーマの今年のあいちトリエンナーレに合わせて、音楽からも旅を感じてみませんか? アートダイエットのおともにぜひ聞いてみてください。
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アートダイエット Walking 「あいちトリエンナーレ 岡崎・豊橋地区」
あいちトリエンナーレ2016
テーマ:虹のキャラヴァンサライ 創造する人間の旅
芸術監督:港 千尋
会 期:2016年8月11日(木・祝)~10月23日(日)
主な会場: 愛知芸術文化センター 名古屋市美術館 名古屋市内のまちなか(長者町会場、栄会場、名古屋駅会場) 豊橋市内のまちなか(PLAT会場、水上ビル会場、豊橋駅前大通会場) 岡崎市内のまちなか(東岡崎駅会場、康生会場、六供会場)
オフィシャルサイト:http://aichitriennale.jp/
参考
健康日本21 http://www.kenkounippon21.gr.jp/kenkounippon21/about/kakuron/2_undou/genjyou.html
NPO炎舞 パブリックアートマップ(PDF版) http://npoenbu.jpn.org/pdf/public_art_map.pdf
はらドーナッツ http://haradonuts.jp/
『The Dreaming Room』 LauraMvula(ローラ・ムビュラ) http://pitchfork.com/reviews/albums/21719-the-dreaming-room/