心をつなぐあたたかな色 柿本幸造の絵本の世界

ARTLOGUE 編集部2018/08/11(土) - 02:30 に投稿

絵本の画家・柿本幸造(1915-1998)が描いた愛らしい動物や子どもたち。100万部を超えるベストセラーとなった『どうぞのいす』(ひさかたチャイルド)や、小学校の国語の教科書に1971年から掲載が続く「くじらぐも」(光村図書出版)の絵に馴染みのある人も多いでしょう。ですが戦中戦後にかけて、広告関係のイラストを手がけていた柿本が子どものための絵を描き始めたのは、意外にも30代も後半になってからでした。1954年7月号の『よいこのくに』(学研*)で初めて挿絵を担当して以降、『ワンダーブック』(世界文化社)、『ひかりのくに』(ひかりのくに)などの月刊絵本、図鑑と、活躍の場は広がります。鮮やかな色彩やデザイン性の高い構図、乗り物を描く際の精緻な表現など、画面は後年の柔らかな作風とは別の魅力に満ちています。

本展では、日産自動車のカレンダーや月刊絵本の挿絵などの初期作品に加え、1967年から約30年かけて26冊が刊行された「どんくまさん」シリーズ(至光社)、1981年刊行の『どうぞのいす』をはじめとする代表的な絵本の数々、1989年から亡くなるまで手がけた『にじのひろば』(至光社)の表紙画に至るまで、原画やアイデアスケッチなど約200点を展示いたします。

1枚の絵を仕上げるのに、人一倍時間をかけたという柿本。それでも仕上がりに満足することはなかったといいます。円熟期の作品から醸し出されるあたたかさは、じっくりと絵の具を重ねて描く特有の手法そのままに、子どもの心へとつながる優しいメッセージを塗り重ねているからかもしれません。83歳でこの世を去ってから今年で20年。常に子どもの心に寄り添って描き続けた、柿本幸造の絵本の世界に迫ります。

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