2回連続で"山陰にて"と題して開催する今回の展示では、山陰の風土、風景を中心に紹介します。観光地としても有名な「砂丘」をはじめ、「海辺」「湖畔」「山、農村」「島根半島」「松江」の六つのキーワードで、生涯かけて撮り続けた植田正治の「山陰」を紹介します。
植田が、戦前から活動をはじめ、雑誌などでの活躍や受賞を通じて名前が知られるようになっても、決して山陰を離れることがなかったのはなぜでしょう。そして、繰り返し、山陰の地を訪ね歩く小旅行を重ねたのはなぜでしょう。
1964年、植田は次のように語っています。「僕は、住んでいる山陰が好きだ。その美しい風景の底に、素朴な人間の表情の中にも、暗い生活のかげがあるような気がする。東北も北陸も、旅したことがないけれど、その風景の中にきっと、共通の感情を秘めているだろうと想像する。太平洋や瀬戸内、九州の明るい風物に接しても、僕には、写真的な興味がわかないというのは、土着山陰人としての僕の感情がついていけないということなのかもしれない。だから、僕は、この山陰の四季の風景のなかにひたって、あくまで山陰の風物を撮りつづけるしかないという宿命を自覚し、ひそかな誇りとしたいと思う。」(植田正治『アサヒカメラ』1964年10月号より)
山陰の光や風、そして素朴な人々の暮らしや風情に対して、植田は独自の感性でアプローチし、生涯にわたり撮影小旅行へと導かれたのでしょう。鳥取砂丘の異空間、表情豊かな海、湖面の輝き、山や農村の変わらぬ佇まい、そして歴史を感じさせる島根半島や松江の風景など、写真家・植田正治を育んだともいえる「山陰」を植田の写真を通してあらためて浮き彫りにします。
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