舟越桂
ニュー・ウェイブ 現代美術の80年代
視覚芸術百態:19 のテーマによる196 の作品
あらゆる領域において情報が氾濫し、グローバル化と多様化が進む今日では、美術館における収蔵品の展示方法も、時代別・地域別という正統な方法が充分には機能しなくなってきています。実際のところ、欧米の現代美術館にはテーマ別で常設展を実施するところも出てきています。この展覧会は、当館のコレクションを19 のテーマに分けて紹介します。テーマとして選んだのは、いま改めて考えてみる意義が感じられるトピックで、それらは「作品の要素」と「描写の対象」に大別できます。展示作品は、テーマを象徴する典型的作品から意外に思えるような作品まで様々です。新収蔵品も約50 点含まれています。時代・地域・ジャンルなどの基本的な美術の枠組みを大前提に選んでいますが、多種多様な作品間のつながりが感じとれる組み合わせになっています。この特別な所蔵作品展は、各自が持つ美術についての知識を再確認するにとどまらず、新たな発見があり、美術を見つめ直すきっかけにもなるに違いありません。
本展のみどころ
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国立国際美術館 開館40周年記念 連携企画 「いまを表現する人間像」
舟越桂 《銀の扉に触れる》 1990年 高92.5cm 国立国際美術館所蔵
概 要
古代の俑に対峙するように、国立国際美術館の所蔵作品から、9点の現代作家による人物彫刻を展示いたします。これは現在、当館とともに中之島で芸術文化の活動を牽引する、同館の開館40周年を記念する初めてのコラボレーションです。異なる背景のもと制作された現代と古代の人物造形は、千年を超える時間と空間の隔たりを持ちながらも、共に生き生きとそれぞれの時代の人間の姿を表しています。現代作家の創造性と、古代の造形美とが巡り会う、新たな試みをご覧いただきます。
三沢厚彦 アニマルハウス 謎の館
三沢厚彦、舟越桂、小林正人、杉戸洋、浅田政志 with Animals / 2017 Photographs by Masashi Asada
起点としての80年代
1970 年代のコンセプチュアルでストイックな表現に対する反動から、80 年代の日本では絵画や彫刻の復権が唱えられ、好調な経済状況を背景として、色彩豊かで伸び伸びとした筆遣いの「ニュー・ペインティング」などが広まりました。
しかし、90 年以降の美術は、むしろ「おたく」など80 年代のサブカルチャーに影響を受けた表現が主流となります。そのため、それ以降、80 年代の美術は参照されることが少なくなってしまいました。近年、「具体」や「もの派」など1970 年代までの戦後日本美術に関する研究が国内外で急速に進んでいます。今こそ、70 年代と90 年代のはざまにある80 年代の日本美術について深く見つめる時期に来ていると言えます。約30 年を経た今日から振り返ると、80 年代は、今日の美術において重要なインスタレーションという形式、作品制作への参加や社会との関係への意識、オルタナティブ・スペース、 メディア・アート、「美術」という制度を相対化する視点、日常性や軽やかさを大切にする感性などが新たに生まれた、充実した時代であったことがわかります。本展では今日の視点から80 年代の日本の美術を見詰め直し、「起点」となる作品を紹介します。