キャノンが実施する新人写真家の発掘・育成・支援を目的とした「キャノン写真新世紀」で、2016年度グランプリに選出された写真家・金サジ氏の個展「白の虹 アルの炎」が2020年1月8日~1月19日まで開催されます。
これまで、舞、歌、祭、語りなど民間のくらしのなかで伝承されてきたものから着想を得ながら、精緻な写真表現を通して、自らの身体感覚にもとづいた創造の物語を生み出してきた金サジ氏。生/死、動物/植物、男/女、人間/獣、聖/俗などの境界を媒介する図像を生み出し、戦後ディアスポラである自身にとっての「故郷」とは何かを問い続けてきました。これらの活動から生まれた「物語」シリーズの新作が、多文化共生地域の京都駅東南エリアに誕生した小劇場、THEATRE E9 KYOTOの空間に展示されます。
また、会期中はイベントとしてオープニングに新年の招福と厄祓をこめて韓国の伝統的儀礼、告祀(コサ)を実施する他、 1月13日には火山地質学者・アジア航測㈱フェローの千葉達朗氏と陶芸家、京都造形芸術大学教授の松井利夫氏を招いてのイベントを行い、大地の持つエネルギーや根元性、生命力などについて、芸術、科学、民俗学などの視点からトークを行います。1月18日には国立民族学博物館外来研究員の永田貴聖氏と京都東九条マダン実行委員長、Books × coffee Sol. 店主のやんそる氏と共に、日本在住の海外ルーツを持つ人々の想いや、彼らを取り巻く周辺の環境、時代の変化などについて、自らの経験、研究を通して語ります。
〈今回の展示について〉
コリアンディアスポラの三世として日本で生まれ育った私にとって、「故郷」「国籍」「国家」「民族」といった言葉、情報はどれも実感を持つことのできないものばかりでした。しかし、模索していく中で出会う、歌、舞、食、衣、祭りなどといった伝承からは、デジャヴュのような、身体的体験を伴う不思議な感覚を得ることがありました。これらを集めていく中で生まれてきた物語は、私自身のための創世神話のようでもあります。
戦中に大陸から日本に渡ってきた祖母のことを私はほとんど知りません。儒教型の伝統的家庭では、女性は妻として夫に、母として子供に仕えてきました。夫婦の間に生まれた子供は母方ではなく、父方の名を受け継いでいきます。そのため、女たちの記録はほとんど歴史に残ることはありませんでしたが、彼女たちの記憶は世代を超えて、身体の奥中で繋がっているように感じます。京都南エリアは祖母が暮らし、母が青春時代を過ごした地域です。今回は「物語」シリーズの中でも特に「女性」としての内容を中心に展開していきます。
金サジ
【展覧会情報】
会 期:2020年1月8日(水)~1月19日(日)
会 場:THEATRE E9 KYOTO
時 間:13:00~20:00
*最終日は10:00~15:00まで
休 館:会期中無休
料 金:無料
■関連イベント
◯オープニングイベント
告祀(コサ)
日 時:1月8日(水)11:00~
会 場: THEATRE E9 KYOTO
*事前予約不要
◯トークイベント
①「わたしたちは大地に触れる」
日 時:1月13日(月・祝)13:00~
会 場:Collabo Earth E9(THEATRE E9 KYOTO2階)
ゲスト:千葉達朗氏(火山地質学者・アジア航測㈱フェロー)、松井利夫氏(陶芸家、京都造形芸術大学教授)
②「純血を脱皮する」
日 時:1月18日(土)15:00〜
会 場:京都市地域・多文化交流ネットワークサロン(京都市南区東九条東岩本町31)
ゲスト:永田貴聖氏(国立民族学博物館外来研究員)、やんそる氏(Books × coffee Sol. 店主)
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