「会田誠展について」森美術館館長 南條史生氏と会田誠氏のステートメントの全文 2013年2月6日

ARTLOGUE 編集部2013/02/06(水) - 12:32 に投稿
「会田誠展について」森美術館館長 南條史生氏と会田誠氏のステートメントの全文 2013年2月6日

連載 表現の不自由時代 第三回「エロや政治的表現で度々抗議を受けている会田誠。美術業界は自由?」内、「森美術館「会田誠展:天才でごめんなさい」のケース」の章で言及された、2013年2月6日付で同館ウェブサイトに掲載された、 森美術館館⻑ 南條史生氏と会田誠氏のステートメントの全文の転載です。

 

 

 

2013年2月6日

 

会田誠展について

 

みなさまへ

森美術館館⻑
南條史⽣

⽇頃より森美術館をご愛顧、ご⽀援いただき誠にありがとうございます。


現在、弊館で開催中の「会⽥誠展︓天才でごめんなさい」では、既にご案内のとおり、展⽰内容に性的表現を含む刺激の強い作品が含まれております。これらの作品は特定ギャラリーに展⽰し、18歳未満の⽅や、このような傾向の作品を不快に感じる⽅のご⼊場をご遠慮いただいておりますが、この展⽰内容についてさまざまなご意⾒が寄せられていることから、あらためて、本展の開催趣旨について、これらの作品の展⽰意図を含めお伝えしたいと思います。


森美術館は、開館以来、内外の現代美術の重要なアーティストを⽇本、および世界に紹介することを⼀つの使命としてきました。現代美術は、我々の⽣きる現代社会の諸問題を実験的・批判的・挑発的に取り上げる場合も多く、まだ評価の定まらない多様な視点が登場することになります。森美術館は、法に抵触しない限り、そうした新しい視点をできるだけ広く紹介する⽴場を取っています。


森美術館が、⽇本の重要な現代美術作家である会⽥誠の展覧会を構成するにあたって考慮したことは、これまで会⽥が制作した多様な作品を、偏ること無く、できる限り網羅的に紹介することでした。彼の作品は戦争、国家、愛、欲望、芸術などについて、しばしば常識にとらわれない独⾃の視点を開⽰しています。そして諧謔(かいぎゃく)と洞察に満ちた会⽥芸術の本質は、彼の作品の総合的な紹介によってのみ、理解することができると考えています。


美術館は、美術を通して表現される様々な考え⽅の発表の場であり、それによって対話と議論の契機を⽣み出します。本展に関しても、多くの異なった意⾒を持つ⽅々が議論を交わすことが重要であると思われます。また⽇本の良さは、そのような個々⼈の多様な意⾒を⾃由に表現・発表できる社会となっていることではないでしょうか。森美術館は、今後も様々な現代美術の作品を、広く社会に紹介し、議論と対話の基盤となる役割を果たしていきたいと考えています。

 

 

 

みなさまへ

会⽥ 誠


僕の作品群の中には、性的なテーマとは限りませんが、⼈によってショッキングと受け取られる表現があると思います。そういう場合、僕は必ず、芸術における屈折表現――僕はそれをアイロニーと呼んでいますが――として使⽤しています(あるいは、僕個⼈はこの⾔葉をあまり使いませんが、『批評的に使⽤しています』と⾔い直してもいいのかもしれません)。けして単線的に、性的嗜好の満⾜、あるいは悪意の発露などを⽬的とすることはありません。また「万⼈に愛されること」「⼈を不快な気分にさせないこと」という制限を芸術に課してはいけないとも考えています。発表する場所や⽅法は法律に則ります。

 

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