アートを通して世界のダイバーシティを伝えるべく活動する「Resala」は、今年6月、イラク出身の若きフォトグラファー、シェブ・モハ(Cheb Moha)を東京に招き、アーバンな中東を写す写真展「衣食住」を開催します。
開催を記念して連載しているこのコラム、第4回目はフォトグラファー、 シェブ・モハの作品から見えてくる湾岸諸国の暮らしをご紹介します。
→連載第1回目「【Vol.1】日本初公開!イラク出身フォトグラファー写真展「衣食住」開催記念連載企画 : Art x Diversity – 中東アーティストが切り取るリアリティ」はこちら
→連載第2回目「【Vol.2】日本初公開!イラク出身フォトグラファー写真展「衣食住」開催記念連載企画 : Art x Diversity – 変わりゆく中東ファッションの現在(いま)」はこちら
→連載第3回目「【Vol.3】日本初公開!イラク出身フォトグラファー写真展「衣食住」開催記念連載企画 : Art x Diversity – –食で旅するアラブ」はこちら
発展と伝統の間で
めまぐるしく発展を遂げるアラブ。
一方で、時間がゆっくりと過ぎる空間が、高層ビル群に置き換えられ、それまでのライフスタイル、コミュニティがいつしか失われ、アラブ独自のアイデンティティが忘れ去られてしまっています。
例えばドバイでは、埼玉県とほぼ同じ4,114 km²に244万人が暮らしていますが、その約80%がビジネスなどの目的で外国からやってきた移住者だと言われています。
およそ50年かけて、砂漠の地から超高層ビル群の街へと発展した半面、湾岸地域で日常的に見られた、家の前や、中庭、店先で、ベンチに座る人々の姿、通りゆく人々がコーヒーや紅茶を片手に、涼しくなった夕刻のひと時を気まぐれにゆったり過ごす空間が消えつつあります。これは、湾岸地域独自の暮らしや、コミュニティが失われることでもあります。
そういったなかで、シェブ・モハをはじめとした若い世代は、ただ欧米から輸入した新しい文化ではなく、今までの伝統に新しさを見出し、独自のカルチャーを築こうとしています。
これまで本連載では、ファッションや食を通して、日本には届かないアラブの伝統を見てきました。 今回は、シェブ・モハの写真が写し出す、アラブの伝統と暮らしを覗いてみましょう。
「Dubai x 住」
ドバイの移民が多く暮らすカラマ地区で撮られたこの写真。
黒くなった指先は、ヘナによるものです。日本でよく知られているヘナ・アートは、花や草、幾何学模様が描かれたものです。こちらの指先をヘナにディップしたシンプルなヘナは、リビアの花嫁が行うスタイルです。
「Kuwait x 住」
クウェート・タワー、解放タワーそしてペルシャ湾に面した高層ビル群が印象的なクウェートですが、ちょっと路地に入ると開発に取り残された昔の面影が残っています。
「Dubai x 住」
ブルジュハリファなどの高層ビル群からうって変わって、オールドドバイでは発展前と変らぬ日常を色濃く残した光景がみられます。
居場所にしたい場所で、自分が異邦人である様に感じる。
これは、モハの気持ちを表していると共に、多くの移民が暮らすこの地域の若者に共通して言えることでもあります。
写真展「衣食住」
シェブ・モハは、急速に成長する世界有数の産業都市ドバイに拠点をおきながら、その象徴ともいえるドバイやカタールなどの超高層ビルではなく、昔からの伝統と新しいカルチャーが共存するもう一つのアラブにカメラを向けます。
普段、私たちが見ているアラブの世界はあまりにも偏っているように思えます。カナダで育ったモハは、アラブの素顔を発見し、自分のルーツを探求しながら、インスタグラムを通して、世界中に彼が見つけたものをシェアしてくれます。
そんな彼の作品を取り上げた写真展、「衣食住」が表参道にて開催されます。
私たちにとっても親しみ深い「衣食住」という切り口で、遠いアラブの世界をもっと身近に感じられる写真展となっています。
是非足をお運びください。
場所 MIDORIso.2 gallery (commune 2nd内)
日時 2018年6月9日 - 6月21日、12時 - 20時 (月曜日休み)
入場料 無料
主催 Resala
助成 アーツカウンシル東京
協力 MotionGallery, ARTLOGUE