数年アートの制作、クリエーションの現場に関わらせてもらった実感として、女性の多い職場であると思います。
短い期間の自分の経験を振り返ると、朝日新聞の記事「育児・介護「仕事と両立難しい」5割 演劇・バレエ制作スタッフを調査」は身につまされました。
「日本芸能実演家団体協議会(芸団協)」がまとめた報告書によると、劇団やバレエ団の公演に携わる制作スタッフの内、5割の方が、育児や介護の必要性が生じた場合に仕事を続けられないと答えたのだそうです。 この報告書はもともと文化庁の委託で労働環境改善目的で行われた調査によるものとのこと。1132人に調査票が送られ、女性が7割を占める282人から回答がありました。 同団体が2016年度、公共劇場スタッフ向けに行った調査では、6割の方が同じ答えを出しています。
人生を進めていく中で、育児も介護も起こり得るもの。それだけでなく自身が体調を崩してしまうことも十分あり得ます。いずれも生きていればあるだろうという環境、状況の変化ですが、それに応じて仕事の方をコントロールすることが難しく、やめざるを得ないのはとても残念です。
前述の芸団協の報告書には以下のような理由が挙げられていました。
勤務時間が長い、休日が取れ ないといった「働く時間についての問題」が 59 件。次いで「収入面の問題」が 26 件、 「体力的な問題」が 10 件。介護が生じた場合の理由としては、「実家が遠方のため」 という理由が 10 件あった。
公益社団法人日本芸能実演家団体協議会(芸団協)「実演芸術団体の就労環境改善に関する調査(全体)」(https://www.geidankyo.or.jp/img/research/2017research_all.pdf)、2018年5月15日アクセス
公演に関わる業務に時間の問題はつきまといます。例えば0から作品を立ち上げていく初演には、作品を構想しクリエーションするプロセスがあります。試行錯誤やアイデアの積み重ねが実を結ぶので、そこにかかる時間は長く不規則になりがち。私が制作を担当していた時は、作品をより良いものにしたいという気持ちが強かったので、アーティストが良い状態で集中していると、アーティストのきりのいいところまで…となることが多かったです。クリエーションが始まり公演自体が終わるまでの期間は、作品上演のための密度の濃い日々が続きます。こなす必要のある業務も色々あるので、休んでいる暇はないというメンタルでした。体力的にきつくても、気持ちの面での充実感や達成感、何より今まで存在していなかったものが、紡がれていく瞬間に立ち会えることのうれしさが原動力になっていました。
ただその時の自分の働き方を考えると、ペースを落とさず仕事と育児、介護を両立させるのは…確かに厳しい…です。
アートには、人生にポジティブに働きかける、生き方や考え方の幅を広げてくれる力があります。それだけに、アートの現場を支えるスタッフの毎日も、業務に疲弊することなく充足していることを望みます。