アートを通して世界のダイバーシティを伝えるべく活動する「Resala」は、今年6月、イラク出身の若きフォトグラファー、シェブ・モハ(Cheb Moha)を東京に招き、アーバンな中東を写す写真展「衣食住」を開催します。
本展では、誰にとっても身近な「衣食住」をテーマに、中東湾岸諸国での人々の暮らしをドキュメントしています。開催に先駆け、アーティストについて、そして湾岸諸国の「衣」、「食」、「住」について4回の連載でお伝えしたいと思います。
日常のスナップ写真をインスタグラムで公開し続けるシェブ・モハ。
彼が切り取る風景は、祖国を離れて暮らす「ディアスポラ(移民・難民)」である中東地域出身の人々にノスタルジーを感じさせるだけでなく、中東地域に行ったことのない人にもどこか懐かしい思いを抱かせます。
なかでも「食」は、「ディアスポラ」にとって、なつかしい祖国のなつかしい時間へタイムスリップさせてくれるスイッチ。
私も、父の国であるイランでしか食べれないパン、おばあちゃんが作るチーズがどうしても食べたくなることがあります。
連載第3回目となる今回は、シェブ・モハの作品から垣間見える、湾岸諸国の「食」についてご紹介します。
→連載第1回目「【Vol.1】日本初公開!イラク出身フォトグラファー写真展「衣食住」開催記念連載企画 : Art x Diversity – 中東アーティストが切り取るリアリティ」はこちら
→連載第2回目「【Vol.2】日本初公開!イラク出身フォトグラファー写真展「衣食住」開催記念連載企画 : Art x Diversity – 変わりゆく中東ファッションの現在(いま)」はこちら
パン - الخبز
アラビア語でパン全般をホブズ(الخبز)と言います。
日本ではパンは主食ではありませんが、中東地域では広く主食として親しまれています。
中東地域のどこに行っても街角に、朝早くから黙々と釜の前でパンを焼いているパン職人の姿が見られます。日本で言ったらお豆腐屋さんがどこにでもあって、地域の人々に親しまれている感じでしょうか。中東地域を旅して、釜から出された熱々のパンを食べるのも旅の醍醐味です。
また、各地域の特産パンがあります。
こちらはシェブ・モハの出身地であるイラクで食べられているパン、サムーン(Samoon - صمون)です。
たまたまスウェーデンでサムーンに再会したモハ。
インスタグラムのコメント欄には、「バグダッドのおばあちゃんの家で食べた朝ごはんを思い出す」など、パンの写真一枚でタイムスリップをした人のコメントが寄せられています。
いつも何気なく香っていたパンの香りは、遠く離れたおばあちゃんとの朝のひと時へと連れて行ってくれます。
チャイ、コーヒー、デーツ
チャイ、コーヒー、デーツは、この地域で暮らす人々とって絶対に欠かせない「食」です。
地域によって、チャイやコーヒーの飲み方、デーツの種類は異なりますが、ゆっくりとしたひと時を過ごすお供として、またちょっとした来客のおもてなしとして大活躍です。
実は、私たちが日頃飲んでいるコーヒーの起源は、中東地域にあると考えられています。
そのため、コーヒーの名前の由来もアラビア語で「欲を削ぐもの」という意味の「カフワ(Qahwa)」。元々、カフワは「食欲を削ぐ」飲み物として、ワインを呼ぶのに使われていましたが、コーヒーが「睡眠を削ぐ」目的で飲まれるようになると、代わってコーヒーが「カフワ」と呼ばれるようになりました。
最初は聖なる飲み物としてイスラム神秘主義者(スーフィー)によって飲まれていたものの、徐々に一般市民にも広まるようになり、中東地域の主要な都市でコーヒーを飲む場所(今でいうカフェ)が賑わうようになりました。
コーヒーの起源と中東についてはこちらをご覧ください。
さて、コーヒーと一言で言っても中東地域には様々な飲み方があります。
あまり日本では中東地域のバラエティー豊かなコーヒーを飲むことができないのが残念ですが、発見した時は是非チャレンジしてください。きっと今まで飲んだことのない味に驚くでしょう。 主に湾岸地域で飲まれているスパイスたっぷりのアラビックコーヒーは、慣れていない日本人にとっては衝撃的かもしれません。
アラビックコーヒーはこの特殊な形をしたコーヒーポット、「ダッラ(Dallah)」で入れます。
またお馴染みのコーヒーカップとは違い、日本酒を飲むぐい呑ほどの大きさの、「フィンジャン(Finjan)」と呼ばれるカップで、グイッと飲みます。
カフェインとカルダモンをはじめとしたスパイスでエネルギーたっぷりです!
コーヒーのお供にはよくデーツが振舞われます。
最近日本でも見かけるようになったナツメヤシの実です。
日本では黒や茶色のデーツしか見かけることがありませが、たくさんの種類のデーツが存在するのです。
最後に日本でもお馴染みの紅茶に砂糖、ミルク、カルダモンなどのスパイスを入れたマサラ・ティー。
湾岸地域では、「チャイ・カラック(Chai Karak)」という名前で知られています。
「チャイ・カラック」はUAEなどで働いているインド人によってこの地域で広まり、後に地元の人々に合ったブレンドでオリジナルなアラブの飲み物「チャイ・カラック」として親しまれるようになりました。
伝統を守りつつも、新しい文化を受け入れ、そして自分たちに合った形で改良していく。
どこの地域でも文化と文化が交差して、新たな価値観を生み出していきます。
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2018年度、「Resala」はアーツカウンシル東京に助成を頂き、若きアーティスト、シェブ・モハの写真展を開催いたしま す。
写真展「衣食住」ではドバイで数々のラグジュアリーブランドともコラボレーションするイラク出身のアーティスト シェブ・モハの写真を、彼のファッションブランドとともに展示します。 衣食住という親しみやすいテーマでキュレーションされたこの展覧会は、きっと日本にとって遠い存在の中東地域をもっと 身近にし、そして多くのクリエイティブ・マインズに新しいインスピレーションを与えるに違いありません。
会場では、作家がこだわりを込めて現像した作品(作家のサイン付き)を販売します。 またレセプションパーティーを開催し、作家の来日が実現した際には作家によるトークを予定しています。
展覧会を企画するにあたり、単に作品を紹介するだけでなく、アーティスト自身を東京に招いてトーク・レセプションパーティーを行なったり、同時に彼の作品の写真集も作りたいと考えるようになりました。初めて取り組む大きなプロジェクトをなるべくたくさんの人に知って関わって頂きたいという思いから、これらの希望を実現し展覧会を更にアップグレードするための資金をクラウドファンディングを通して集めようとしています。
みなさん、リンクより気持ちだけでも支援して頂けたらとても嬉しいです。6月まで2ヶ月、張り切って準備しますので、よろしくお願いします!
ウェブサイト http://motion-gallery.net/projects/resalatokyo
ファンディング期間 2018年3月27日―5月31日
また、うちでチラシ置いていいよ!チラシ配るよ!というサポートも嬉しいです。
素敵な写真展開催に向けてご協力お願いいたします。