2017年1月28日(土)から始まった「京都府新鋭選抜展2017―KYOTO ART FOR TOMORROW」(~2月12日(日))。美術関係者の推薦を経て、京都を中心に活動する若手アーティストの中から選出された作品が並ぶこの展覧会では、絵画のみならず陶芸、漆芸など多岐に亘る関西美術の「現在(いま)」がみてとれます。
こちらにゲスト作家として美術作家束芋さんが参加し、新作『網の中』を発表すると聞き、お話を伺いました。京都でのインスタレーション作品の展示はなんと17年振りだそうです。
『網の中』。紗幕に映し出される世界は旧日本銀行京都支店である別館ホールの空間をトレースしたもの。繊細なピアノの音から始まるどこかノスタルジックな音楽と相まって作品に思わず引き込まれていきます。
網とはネット、インターネットのことを指しています。彼女自身インターネットの利便性を認めつつも不安を感じる思いがあり、インターネットとの関係について考える機会が何度かあったそう。加えて、これまで断っていた鑑賞者による作品の写真撮影を、作品がインターネット上で拡散されていくであろうことを踏まえた上で許可してみるという心境の変化があり、インターネットやSNS等をテーマとする作品の創作に至ったとのこと。
インターネットに対して「身体の機能が外に出ている気がする」という束芋さん。本来自分がすべき機能をインターネットが代行することへの一抹の不安、それを感じつつもインターネットを悪とすることにもためらいがある・・・。そうした自身の現状、立ち位置を探る思いがこの作品には投影されています。
インターネットによって現実世界は外に無限にひろがるのか、それとも内側に向かってアクセスしていることになるのか。会場を模した作品中の壁は現実とインターネットとの境界線になっています。でもその中外、どちらが現実であるかの答えは、鑑賞者とインターネットとの関係性に委ねられています。
とはいえ、撮影許可も含め束芋さんにとって様々な挑戦となる今回の作品、鑑賞者にも実験、挑戦しながら観てほしいとの期待もあるようです。まずは作品空間に身をおきつつ、「網」と自身の結びつきをどう感じるのか、じっくり考えてみませんか。是非会場に足をお運びください。
ちなみに「京都府新鋭選抜展2017―KYOTO ART FOR TOMORROW」のオープニングパフォーマンスとして1月28日、1月29日(日)の2日間『網の外』が上演されました。
束芋さんが映像、構成、演出を手がけるこちらの作品は、『錆からでた実』でもタッグを組んだ舞踊家 森下真樹さんを迎え、身体表現と映像のコラボレーションで舞台は構成されています。
ダンサーが外と中を行き来しつつ、ときに静かに、ときに激しく踊ることで、「網≒インターネット」の世界と実世界を巡る関わり方、喜びや苦しみ、または葛藤が表されているようでした。
束芋 パフォーマンス『網の外』 フォトレポート
撮影:井上嘉和
たったの2回公演というのがあまりにも残念・・・。どこかで再演出来たらいいのにと勝手に願ってしまいます。イスラエルのバットシェバ舞踊団の芸術監督オハッド・ナハリンとのコラボレーション作品を皮切りに舞台との関わりを深めてきた束芋さん、演出家のあごうさとしさんの演劇にも強く影響を受けたとのことです。チームで切磋琢磨しながらぶつかり合いながらも生み出すドラマティックなプロセス自体についても思い入れが深いようです。昨今は杉本博司、名和晃平、やなぎみわなど美術家が舞台公演を手がけることが多いですが、生ものであるがゆえの舞台の魅力(ある意味博打)に惹かれてしまうのでしょうか。美術家と舞台については改めてご紹介できればと思います!
京都府新鋭選抜展2017―KYOTO ART FOR TOMORROW
会 期:2017年1月28日(土)~2月12日(日)
*月曜日休館
*開室時間10:00~18:00(別館ホールは10:00~19:30)、金曜日は19:30まで(入室はそれぞれ30分前まで)。
会 場:京都文化博物館(京都市中京区三条高倉)3階展示室、別館ホール
電 話:075-222-0888
入 場 料:一般500円、大学生400円、高校生以下無料
主 催:京都府、京都文化博物館
後 援:京都新聞、朝日新聞京都総局、毎日新聞京都支局、読売新聞京都総局、産経新聞社京都総局、日本経済新聞社京都支社、NHK京都放送局、KBS京都、エフエム京都、京都商工会議所、京都工芸美術作家協会、アンスティチュ・フランセ関西
詳しくは公式サイトをご確認ください。
URL:http://www.bunpaku.or.jp/