次の日、1月15日(日)は前日「石垣市文化観光シンポジウム」に登壇していた岡田智博さん (クリエイティブクラスター代表)の案内で石垣島にみるクリエイティブツーリズムの芽生えを取材するために、地元ブランドや、「石垣島 Creative Flag」に参加するアーティストやクリエイターの方々に会ってきましたので紹介します。
石垣島のクリエイティブツーリズムの取り組みの一つでもある「石垣島 Creative Flag」は、島の創造力(Creative)に旗(Flag)を立てるをコンセプトに、石垣島在住のクリエイターによるビジネスを創出し、「クリエイティブで島を盛り上げる」ことを目的とした石垣市の取り組みです。運営は一般社団法人石垣島クリエイティブフラッグが担っています。
ホテルエメラルドアイル石垣島
僕が泊まっていたのは、石垣島市街地にある「ホテルエメラルドアイル石垣島」です。こちら、京都にある「ホテル アンテルーム 京都」と同じくUDSグループによる設計で、コンセプトが同じなのか各部屋に作品が飾られているところや、内装などかなり似ています。ただ、アンテルームは現代美術を中心としているのに対して、「ホテルエメラルドアイル石垣島」は、地元のクリエイターの作品が飾られています。
住 所:沖縄県石垣市美崎町7-14
電 話:0980-87-7111
TILLA EARTH (ティーラ・アース)
先ず訪れたのは、石垣島の市街地にあるTILLA EARTH(ティーラ・アース)。こちらは、石垣島生まれのジュエリー・アクセサリーブランドで、八重山の珊瑚・緑・星などの自然をデザインモチーフにしています。ターゲットは少し年齢層が高めですが、お手頃なセカンドラインも展開しています。
TILLA EARTHは銀座や新宿にも店舗があります。
住 所:沖縄県石垣市美崎町3番地
電 話:0980-84-1507
ぴにおん
限りなく100%に近い無添加製造りを心がけている、石垣島でも有数のお土産屋さんです。とにかくなんでもスモークするらしく、ハムやレバー、カキなどの定番以外にも、豚胃袋燻製や枝豆ジャーキー、もずくジャーキーなど変わり種が多々あります。調味料ではぴにおん人気商品のくうすみそやスパイシー島のらー油の他に、パパイヤ、マンゴー、バジル、イカ墨などアバンギャルドなマヨネーズも売っています。しかし、これらがなかなか美味しいのです。バジルなどはバケットにつければそれだけでお洒落パーティーの一品になります。ちなみに、ぴにおんではどれでも試食させてくれるので、かなりの品種を味見しました。
住 所:沖縄県石垣市石垣148-4
電 話:0980-82-7821
ちょっと休憩。
シルクスクリーンクリエイター 池城安武さん (イチグスクモード)
池城安武さんは、「石垣市文化観光シンポジウム」の会場装飾を担った石垣島のシルクスクリーンクリエイターです。主にシルクスクリーンで刷ったテキスタイルを服などに仕立てて販売しています。テキスタイル作品では、沖縄県内最大の美術・工芸公募展である「沖展」(主催・沖縄タイムス社)の第68回で奨励賞を受賞しています。
また、池城さんは岡本太郎が大好きで、2014年に行われた音楽フェス「TsunDAMI ISLAND FESTIVAL」では岡本太郎記念館から協力を得て、岡本太郎が石垣島を訪れた際に撮影した当時の写真を展示。そのパネルは大切に今もアトリエに保管されています。
住 所:沖縄県石垣市字新川286番地
電 話:0980-87-5282
嗅覚のアーティスト 上田麻希さん
上田麻希さんは、今回お会いした中で唯一の現代美術作家で、アートと嗅覚の融合を試みる、「嗅覚のアーティスト」です。「視覚的な要素を排除すればするほど、嗅覚体験が強くなるのではないだろうか。」と、思い出、感情、歴史、戦争など普通は匂いと結び付けられないようなモノゴトや感覚の匂いの体験を作り出す実験的な制作活動をしています。
慶應義塾大学環境情報学部にて藤幡正樹氏に師事し、メディア・アートを学んだ上田さん。匂いを天然素材から抽出する制作は、今で言うとバイオアートに近いように思います。また、2015年ベルギーで開催された、「戦争のにおい展」に出品した《The Juice of War - Hiroshima & Nagasaki - 》で、世界的な嗅覚アート(オルファクトリー・アート)のコンペ「Art and Olfaction Awards 2016」のファイナリストにも選出されています。
メディアアートを学んだ上田さんが匂いに興味を持ったのは、妊娠、出産で匂いに敏感になったことと、マーシャル・マクルーハンにも影響されたらしく、匂いをメディアとして捉えているようです。
「石垣島の学校では子どもを宝物のように扱ってくれるし、生活費が安いので、シングルマザーで制作活動しながら生活をするにはとてもいいところです」と、石垣島での生活を楽しいでいます。
アーティストとしての活動だけでなく、旅行の記念などに自分だけの香水を作るワークショップも行っています。
電 話:090-7711-6005
藍染 大濱 豪さん (shimaai )
shimaaiは、化学肥料や除草剤など使わない土作りをし、藍染の原料となる八重山藍「ナンバンコマツナギ(南蛮駒繋)」を、収穫、発酵、染料作り、染めから製品開発までを一貫して手づくりで行っています。また、それらの藍染を「島藍」と名づけています。
shimaaiでは、藍染の伝統工芸や民芸品といった古いイメージを払拭するように、現代のライフスタイルに合うように商品開発をしています。展開しているアイテムもカジュアルで色鮮やかなものが多く、青、オレンジ、白、で空と海と太陽、石垣島のコントラストを表現しています。
大濱さんの実家が島の伝統工芸の織物工房を営んでおり、そこに従事してきた中で感じた様々な事を踏まえ、今のニーズに合うようにshimaaiへとアップグレードさせていったようです。
住 所:沖縄県石垣市大川205
電 話:0980-87-5580
石垣島 Creative Flag の活動を支える
宮良賢哉さん(石垣市観光文化スポーツ局観光文化課)と西村亮一さん(石垣島 Creative Flag代表理事)
「まちなか交流館ゆんたく家」、こちらは、石垣市の中心市街地(まちなか)を活性化するための拠点施設です。こちらの裏にある事務スペースで「石垣島 Creative Flag」でも、中心的役割を担っている、宮良さんと、西村さんにお話を聞きました。
石垣島Creative Flag (以下、ICF)」は、2013年秋、島の創造力(Creative)に旗(Flag)を立てるをコンセプトに、石垣島にゆかりのあるクリエイターを一般公募で35人を選出し、プロジェクトがスタートしました。翌年3月には「クリエイターファイル2014年度版」を発行し、公式サイトもオープン。
その後は、ICFクリエイターによる市民向けワークショップを多数開催し2014年にはICFのポップアップショップを関東関西のロフト4店で展開。また、自分たちのスキルアップのために著名なクリエイターを招いての勉強会「石垣島Creative Labo」も開催しています。これまでにも河尻亨一氏(東北芸術工科大学客員教授/銀河ライター主宰/石垣島Creative Labo 理事)や太刀川英輔氏(NOSIGNER代表・デザイナー)など講師に招いています。
西村さん「「石垣島 Creative Flag」は、2015年に一般社団法人石垣島クリエイティブフラッグとして法人化し、理事が5名います。法人化の時に代表を決めずに登記したら、5人の理事全員が代表権を持つことになりました。(笑)
ICFには現時点で60名程度が参加しています。主な活動は、デザイナーやフォトグラファー、アーティストなど石垣島在住クリエイターのコミュニティ作りや、販売イベントの開催、地元の仕事を請けてクリエイターへ発注するディレクション業務などです。来年はロサンゼルスでのプロモーションを行う予定です。
石垣島の活性化のために、観光やものづくり、農林水産業などいろんな分野で、クリエイティブな人材ができることはまだまだたくさんあると感じているので、クリエイターの仲間たちと一緒に、より多くの人に石垣島を好きになってもらえるような取り組みを進めていきたいです。」
宮良さん「今は一番観光客が落ち込む11月に「TsunDAMI ISLAND FESTIVAL」という音楽フェスを石垣市が主体で企画しそれを担当ています。
他にも環境をテーマにしたクリエイティブアワードが出来ないかと計画しており、その中で学生によるアイデアソンを開催し、優秀なプランには市が予算を付けてプロジェクト化が出来ないかとも検討しています。
また、外務省が進めている日本各地のプロモーションを海外でおこなう、「JAPAN HOUSE」事業というものがあり、今年、リオ、ロンドン、ロサンゼルスの3都市でオープンします。確定ではないですが、石垣市としては来年、ロサンゼルスでプロモーションを行いたいと考えています。それに向けて、次年度は風景や伝統行事、イベントなどを紹介するビデオの制作を予定しています。」
宮良賢哉さんは、自身でも9年前にホテルに掛け合い「トロピカルラヴァーズビーチフェスタ」という日本最南端の音楽イベント立ち上げ、今も実行委員長を担っています。
また、「ケンヤマルセイユ」という名前でDJもやっていてFMいしがきサンサンラジオで「ケンヤ・マルセイユのHAPPY MEETING」(毎週金・夜8時~9時)という番組も持っています。沖縄本島を中心としたタウン誌「おきなわ倶楽部」でも同名の音楽コーナーを毎月連載もっていたりと市の職員とは思えないクリエイティビティです。
石垣島には、夏川りみ氏、比嘉栄昇氏(BEGIN ボーカル)など著名人も多く住んでいるし、沖縄系のタレントは石垣島出身の人が多いらしいです。
宮良さん 「栄昇さんとも、石垣島の新しい名所を作り、曲まで作ってもらう企画も進めていて、さらにそれら名所のデータはリンクト・オープン・データで公開する計画です。2月18日の野外イベントの際に初お披露目を予定しており、3月にレコーディングして楽曲は世に出る流れです。それとあわせて現在作成を進めているMAPも公開する予定です。」
しかし、石垣島は高校を卒業すると大学や専門学校への進学でほとんどの人が島から出てしまうので、20代前半がすっぽりと抜けてしまっていて、なかなかクラブやナイトカルチャーが育たないというから難しいですね。
編集後記
僕は、これまでにARTLOGUEの取材で47都道府県全てに行ったが、衰退する日本の地方において、石垣島、八重山諸島ほどポテンシャルがある地域も珍しいと思います。
ただ、石垣市や一部地域では人口は増えているところもあるが、ほとんどの地域では人口は減少しており、2050年には8000万人代、2100年には4000万人代になると予想されている日本において、石垣市も例外ではなく近い将来、人口は減少に転ずるでしょう。
日本は、未だ、鎖国状態のように単一民族国家ですが、これから30年で移民が大量に増え、地域の色合いは激変していくことは必至です。
日本人が3人に2人、3人に1人となった時に、私たちが今、日本・地域の大切な文化と思い、守っているものを、果たして同じように受け継いでくれるのでしょうか。
もし、100年後も変らずに受け継いでくれる土壌が各地域に残るとするなら、クリエイティブの地産地消がひとつカギになる気がします。外から入って来るモノゴトだけを享受するのではなく、地域の中で生まれ行われているモノゴトを価値共有することで、コミュニティは維持され、そのコミュニティの中で文化も維持され良い循環がつづくのではないでしょうか。
その意味でも「石垣島 Creative Flag」などクリエイティブツーリズムの今後の活動には大いに期待をします。
2013年にはじめて石垣島に旅行で訪れてから、仕事でも行きたいとずっと願っていて、今回の取材でようやく叶いました。
今後も、石垣島と細々とでも関わりを持てればと願っていますので、どうぞ、よろしくお願い致します。