体感せよ、気迫ほとばしるアール・ブリュット 「アドルフ・ヴェルフリ二萬五千頁の王国」展レポート

松宮 宏2017/01/16(月) - 20:41 に投稿
体感せよ、気迫ほとばしるアール・ブリュット 「アドルフ・ヴェルフリ二萬五千頁の王国」展レポート

これほどまでに濃密なアートを見たことがない
小説家、松宮宏のアート&デザイン散歩。ストリート目線で作品を鑑賞。感性第一。
今回は兵庫県立美術館ではじまった
「アドルフ・ヴェルフリ二萬五千頁の王国」
アール・ブリュットの「王」が描いた夢物語です。

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自室で積み重ねられた本の横に立つアドルフ・ヴェルフリ 1921

 

アドルフ・ヴェルフリ。スイスではジャコメッティ、パウル・クレーと並び称されるアーティスト。
最大級4メートルを超える作品を含む規模の個展は日本で初めてです。

まずは絵の前に立って、じっと見てみましょう。
隅々まで、かくも濃密に描かれた世界です。
謎の記号、謎の人物、謎の音符、謎の文字、あふれる色彩。
ホワイトスペースなし、バランスを取ろうとする意志も見えません。
自由自在、こころが赴くまま。
シュールレアリズムかヒップホップか、音楽あるいは数学かもしれない。
他の作家と類することができない圧倒的な作風。

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中国の巨大=都市 ロベスピエー 1910 (「ゆりかごから墓場まで」第5冊 241〜242頁)

 

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無題(キャンベル・トマトスープ)1929 (「葬送行進曲」3360頁)

 

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全能なるモーターのついた機関車、165大の車両を持つ、
総領6,000,000トンの、積載量 1919 (「歌と舞曲の書」第16冊 473頁)

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そしてまたいびき:ドゥリリイ、ドゥルウウウ、ッズルウウウ。それからチチチチチ:チチチチチ。
(アドルフ・ヴェルフリ「シュプフェンヘの手紙」1922年)

 

体感したあとで作家の生い立ちを知れば、25,000枚にのぼる絵はすべて、精神病院の独房で書いたという話。
それを知って私は、小説「ミレニアム(スティーブ・ラーソン著)」のリスベット・サランデルや「航路(コニー・ウィルス著)」で描かれる臨死体験を思い出しました。
特異な能力を発現する機会を持った数少ない人が、心の内なる世界を私達に垣間見せてくれる。人間の脳には理性ではコントロールしきれない鮮やかな世界が棲んでいるのです。
アウトサイドアートとカテゴライズするものではないでしょう。
虚心で見たい展覧会です。

 

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「アドルフ・ヴェルフリ二萬五千頁の王国」 展示風景

 

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ごきげんよう、紳士、淑女のみなさん: ?私に、何を、お望みかな?私は飼いならされては
おりませんぞ:野生動物というわけでもありませんがね。署名、アドルフ・ヴェルフリ、ベルン
(アドルフ・ヴェルフリ「揺りかごから墓場まで」第1冊(1908-1912) a1頁)

 

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アドルフ・ヴェルフリ 二萬五千頁の王国

アウトサイダー・アート/アール・ブリュットを代表する伝説的芸術家アドルフ・ヴェルフリ(Adolf Wölfli 1864-1930)の日本初となる大規模な個展を開催します。スイスの首都ベルン近郊の貧しい家庭に生まれたヴェルフリは、1895年にヴァルダウ精神科病院に収容され、そのまま66年の生涯を終えました。しかし、彼はそこで、『揺りかごから墓場まで』、『地理と代数の書』、『葬送行進曲』といった物語の数々をつむぎだしました。そうしたヴェルフリの作品は全45冊、25,000ページという目もくらむようなボリュームで、ほかに例のない驚異的な表現で描き出される奇想天外な物語はひとびとを圧倒しました。

アドルフ・ヴェルフリ財団の全面的な協力のもと、本展には最上級のヴェルフリ作品が一堂に会します。シュルレアリスムの画家たちをはじめとする多くの芸術家たちの注目を集め、現在では偉大な芸術家の一人として世界的な評価を得るヴェルフリの作品を“目撃”する絶好の機会です。どうぞお見逃しなく。

 

会 期:2017年1月11日[水]—2月26日[日] 休館日 月曜日
開館時間:午前10時~午後6時 (金・土曜日は午後8時まで)入場は閉館30分前まで
主 催: 兵庫県立美術館、神戸新聞社、産経新聞社
企画協力:ベルン美術館 アドルフ・ヴェルフリ財団
後 援: 在日スイス大使館、公益財団法人 伊藤文化財団、兵庫県、兵庫県教育委員会、神戸市、神戸市教育委員会、ラジオ大阪、サンケイリビング新聞社、サンケイスポーツ、夕刊フジ、サンテレビジョン、ラジオ関西
協 賛: GREG C.K.LIU FOUNDATION
協 力: スイス インターナショナル エアラインズ
アドルフ・ヴェルフリ特別展サイト: http://www.artm.pref.hyogo.jp/exhibition/t_1701/index.html


関連イベント
■ 記念講演会 その1
「ヴェルフリ 妄想の大伽藍」 講師:斎藤 環氏(精神科医・批評家)
1月21日[土] 午後4時から(約90分) ミュージアムホール(定員250名)
聴講無料(要観覧券、当日午後1時からホワイエで整理券を配布)
■ 記念講演会 その2
「アール・ブリュットとしてのヴェルフリ」 講師:服部 正氏(甲南大学文学部准教授・本展監修者)
1月28日[土] 午後2時から(約90分) ミュージアムホール(定員250名)
聴講無料(要観覧券)
■ 学芸員によるギャラリートーク
2月4日[土]、2月11日[土・祝]、2月18日[土] 午後4時から(約45分)
展覧会場にて(定員20名) 無料(会場入口に集合、要観覧券)
■ ミュージアム・ボランティアによる解説会
毎週日曜日 午前11時から(約15分)
レクチャールーム(定員100名) 聴講無料
■ おやこ解説会
2月11日[土・祝] 午後1時30分から(約30分)
レクチャールーム(定員20名)
参加無料(要事前申込 こどものイベント係 電話078-262-0908)

 

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自転車で美術館巡りは気持ちよし。
兵庫県立美術館裏(海側)にある少女の巨大オブジェ「なぎさ」(ヤノベケンジ)とMy自転車

 

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