21_21 DESIGN SIGHTでは2018年6月29日より、企画展「AUDIO ARCHITECTURE:音の アーキテクチャ展」を開催します。展覧会ディレクターには、独自の表現により、ウェブ、インターフェース、 映像の分野で高く評価されている中村勇吾を迎えます。
私たちが普段なにげなく親しんでいる音楽は、音色や音域、音量、リズムといった様々な要素に よって緻密にデザインされた構造物(アーキテクチャ)であると言えます。しかし、日常の中でその 成り立ちや構造について特別に意識する機会は少ないのではないでしょうか。
本展では、ミュージシャンの小山田圭吾(Cornelius)が音楽の構造に着目して書き下ろした新曲 「AUDIO ARCHITECTURE」を、気鋭の作家たちがそれぞれの視点から解釈し、映像作品を 制作します。参加作家は、映像、アニメーション、ダンス、グラフィック、広告、イラストレーション、プログラミング、メディアデザインなどの領域を横断しながら、多彩な感性をもって新しい表現に 取り組む9組です。
Wonderwall片山正通が会場構成を担当したダイナミックな空間に、ひとつの楽曲と複数の映像 作品を繰り返し再生することで、「音楽建築空間」の構築を試みます。 音楽、映像、空間が一体となった会場で、音楽への新鮮な視点を発見してください。
■ ディレクターズ・メッセージ
昨年の初夏、二子玉川駅のブックファーストでGINZAという女性誌を立ち読みしていたところ、当時 ちょうどリリースされたばかりのコーネリアスのニューアルバムについてショーン・オノ・レノンが 語ったエッセイを見つけました。その文章の中で、彼がコーネリアスの音楽を「He paints a kind of audio architecture.」と表現している一節に出会いました。音の建築。まさに言い得て妙!と 私はこの言葉をすっかり気に入ってしまい、この言葉を頼りにしながら、あるひとつの展示構成に ついて考えはじめました。それがこのAUDIO ARCHITECTURE展です。AUDIO ARCHITECTURE展は、あるひとつの音楽をもとに空間を構築する試みです。映像・ インテリア・グラフィックからテキストまで、空間内のあらゆる要素がひとつの音楽と関係しあい、 それぞれが固有性を発揮しながらも、そのすべてが音楽を軸に連動し、調和し続けている。その ような「音楽建築空間」をつくり、体感してみたいと思いました。 他の領域における表現やデザインと同じく、音楽は、その全体から細部に至るまで周到に設計された ひとつの構築物(アーキテクチャ)であることに違いはありません。ただ、音楽は、目で視るのでは なく耳で聴くもの、そこに在り続けるのではなく今この瞬間から過去へと流れ続けていくものです。
このような時間軸上の聴覚体験、という知覚モードの特殊性から、私たちは、音楽を、この視覚中心の空間世界からは遊離した、なにか別種の、特別なもののように感じています。「音楽について語ることは、建築について踊るようなものだ」という言葉にもあるように、音楽を、音楽 以外のメディアによって表現し尽くすことは不可能です。しかし私たちは、それが不可能であるから こそ、敢えてそこに接近しようと試みたり、互いに呼応し合うなにかを見出そうとしてしまうのだと 思います。このAUDIO ARCHITECURE展も、そのような願望の歴史の延長線上にあります。 具体的な展示にあたっては、独自の方法論で表現やデザイン活動に取り組み、今回の「AUDIO ARCHITECTURE」というプロトコルを豊かに再解釈して頂けそうな作家やデザイナーの方々 にお声がけし、ご参加頂きました。この原稿を書いている時点では、その全貌はまだ見えて いないのですが、おそらく、それぞれの参加作家がこの音楽と結ぶ関係や距離は、実にさま ざまに異なっていることでしょう。それぞれの固有性が連動し、調和し続ける「音楽建築空間」を、 ぜひ一緒に体感してください。
中村勇吾
開催概要
----------------------------------------------------------------
会 期:2018年6月29日(金)~10月14日(日)
会 場:21_21 DESIGN SIGHTギャラリー1&2
時 間:10:00~19:00(入場は18 :30まで)
休 館:火曜日
入館料:一般1,100円、大学生800円、高校生 500円、中学生以下無料
AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展 フォトギャラリー
※当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製などの行為は法律で禁止されています。