産業と美術のあいだで 印刷術が拓いた楽園

ARTLOGUE 編集部2018/04/30(月) - 15:07 に投稿
高井貞二《感情の遊離》1932年 油彩、キャンバス

 

美術の表現は、美術の周辺からしばしば力を得ています。それは、私たちの生活の実用的な需要に応える産業であることも少なくありません。なかでも印刷術は、美術の表現にもっともよく影響を与えた産業技術のひとつと言えるでしょう。

日本は、おもに木版の技術により、古くから印刷文化を誇る国です。高度に洗練された浮世絵や書籍、身の回りの品々までが作られてきました。明治に入って、文字の印刷には活版が、図版の印刷には銅版、木口木版、石版の技術が西欧からもたらされて近代的な印刷産業が発展し、多様な技術による印刷物が発行されていきました。

ひとりひとりの生活のなかにもたらされた印刷物は、新鮮な視覚体験をもたらし、また産業としての印刷の担い手たちのなかにも、実用的な需要に応えるあいだに、印刷技術のなかにある版の創造的な側面に着目する人が現れました。

そして複製を前提とした挿絵などの制作にとどまらず、印刷術を創作の技法に展開させた版画が広く関心を集めました。油彩画などの画面のなかにも印刷物が描かれ、あるいは貼られ、一般的な絵画のイメージとして統一された絵画空間に異質なものを加えることで、作品の印象を変える効果をあげています。

本展では、印刷術という一つの産業が、いかに私たちの美術の表現を豊かな、新鮮なものにしてきたかを印刷資料、版画、絵画などを通してご覧いただきます。現在の技術が、美術に与える新しい美術表現を予期しながら、日常に寄り添い、日常を超えていく創造の持つ力を感じ取っていただければと思います。

 

 

概 要

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会期:2018年4月14日(土)ー 6月24日(日)
時間:9時30分ー17時(入場は16時30分まで)
休館:月曜日(ただし4月30日は開館し、5月1日が休館)
料金:一般510(410)円、大学生300(250)円  
   *()内は20名以上の団体料金
   *高校生以下、65歳以上、障害者の方、
                 県内に在学中の外国人留学生は無料
   *第4土曜日(5月26日、6月23日)は
               「紀陽文化財団の日」として大学生無料

 

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