1830年代後半からドーミエはいち早くパリの都市生活に取材し、人々の暮らしぶりを活写しました。“現代性(モデルニテ)”を帯びた一連の風俗諷刺画は、バルザックやボードレールといった文学者から称賛されたばかりでなく、リアリスム絵画の嚆矢となりドガやロートレック等後進の画家にも影響を与えました。
真実を捉える眼差しは、日々のニュースだけでなく人物描写にも遺憾なく発揮されます。当時文学の世界で流行した「生理学もの」にならい制作された連作《観相学画廊》(1836-37)や《パリっ子のタイプ》(1839-1843)では、パリっ子の様相や特徴をコード化するにとどまらず、動きや視線を交えて感情豊かに表現しています。そこにはよそ行きの顔ではなく、浮かれたり、眉をひそめたり、驚いては顔をしかめる素の表情が刻まれ、人間の本質そのものが照らし出されています。
─ ドーミエの笑いは率直にして闊達、彼の情け深さの徴(しるし)さながら輝き渡る─
ボードレールが讃えたこの言葉のとおり、彼が描く「しかめっつら」は、逞しい生命力に満ちあふれています。本展ではこうした人物表現に冴えを見せる風俗諷刺約110点を4つの連作を通して紹介します。醜さをも個性に変えてしまうドーミエの生き生きとした表現をご堪能ください。
当館のドーミエ・コレクションについて
40年にも及ぶ画業のなかで、ドーミエが遺した作品はリトグラフだけで4,000点以上。当館ではその4割にあたる約1,700点のリトグラフを収蔵し、テーマを変えて随時紹介しています。一昨年の「ドーミエどーみる?ーしりあがり寿の場合」展ではマンガ家のしりあがり寿氏をゲストに迎え、時代を超えた新旧時事ネタ対決を行いました。今回は「しかめっつら」と題して、ドーミエの真骨頂ともいえる人物描写に焦点を当てます。
概 要
----------------------------------------------------------------
会 期:2017年1月13日(土)-2月25日(日)
会 場:伊丹市立美術館
時 間:午前10時~午後6時(入館は午後5時30分まで)
休館日:月曜日(祝日にあたるときその翌日)
料 金:一般300円(240円)/大高生200円(160円)/中小生100円(80円)
----------------------------------------------------------------