ニッポンの写実 そっくりの魔力

ARTLOGUE 編集部2017/11/29(水) - 00:46 に投稿
上田薫 「玉子にスプーンA」 1986(昭和61)年 豊橋市美術博物館蔵

 

何かにそっくりなものを目にしたとき、私たちは「すごい!これ、本物?」と、素朴なおどろきをおぼえます。目に見えるものをあるがままに再現したいという欲望は、私たちの心に深く根ざした、古くて新しい感情なのではないでしょうか。

初期の洋画家たちは、西洋美術の流入を刺激として、再現的描写技法の獲得につとめました。明治の外光派は、自らの感覚に忠実に現実の世界を再現しようとし、続く世代の画家たちは、求道的ともいえる厳しい態度で、対象の本質に迫ろうとする動きも出ました。絵画の表現としての「写実」へのアプローチは異なりますが、感覚に直接はたらきかけるような現実感を求めたという点で、いずれも、「そっくり」であることの魔力に魅入られた画家たちだといえるでしょう。

インターネットを通して、ひとりひとりが難なく高精細の画像にアクセスすることのできる今日においても、「本物そっくり」であることは、かわらず私たちを魅了します。写真を活用したスーパーリアリズムの絵画。デジタル技術を駆使し、イメージを現実以上に磨き上げる写真。一方では、伝統的な職人的技巧による、迫真的な彫刻や工芸作品が、あらためて脚光を浴びてもいます。

明治以降の写実的絵画、超絶的な技巧を見せる工芸や彫刻、高精細な映像作品など約80点により、「そっくり」の魔力の世界に、皆さんをご招待いたします。

 

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