磯江毅

明治期以降の「写実」が一堂に会した「ニッポンの写実 そっくりの魔力」展

鈴木拓也2017/07/06(木) - 20:35 に投稿

明治期以降の「写実」が一堂に会した「ニッポンの写実 そっくりの魔力」展 

明治時代から現代までの邦人アーティストらによる、高精細な写実的絵画・造形作品の約80点を展示した、「ニッポンの写実 そっくりの魔力」展が、2017年6月10日(土)から8月20日(日)まで北海道立函館美術館で開かれています。

西洋文化の本格的な流入が始まった明治維新。美術の世界でも西洋美術の影響を受け、現実を記録し、再現するような写実的技巧が積極的に取り入れられました。そうしたターニングポイントを経ながら、独自に発展を遂げた我が国の精密描写ですが、どのような変遷をたどってきたのでしょうか?その一端を紹介しましょう。 

 

ニッポンの写実 そっくりの魔力

ARTLOGUE 編集部2017/11/29(水) - 00:46 に投稿
上田薫 「玉子にスプーンA」 1986(昭和61)年 豊橋市美術博物館蔵

 

何かにそっくりなものを目にしたとき、私たちは「すごい!これ、本物?」と、素朴なおどろきをおぼえます。目に見えるものをあるがままに再現したいという欲望は、私たちの心に深く根ざした、古くて新しい感情なのではないでしょうか。

初期の洋画家たちは、西洋美術の流入を刺激として、再現的描写技法の獲得につとめました。明治の外光派は、自らの感覚に忠実に現実の世界を再現しようとし、続く世代の画家たちは、求道的ともいえる厳しい態度で、対象の本質に迫ろうとする動きも出ました。絵画の表現としての「写実」へのアプローチは異なりますが、感覚に直接はたらきかけるような現実感を求めたという点で、いずれも、「そっくり」であることの魔力に魅入られた画家たちだといえるでしょう。