志賀理江子 ヒューマン・スプリング
2006年、作家は展覧会参加のため初めて東北を訪れました。その後2008年から宮城県に移住し、土地に暮らす人々と出会いながら作品を制作する生活のなかで、長く厳しい冬を打ち破るよ うな東北の春に惹かれていきます。変わりゆく季節から溢れ出る強烈な生のエネルギーが、同時に死を抱え込んでいることに共感した作家は、人間があらゆる位相でさまざまなイメージを求め続ける理由の源をそこに見出し、追い、また、それらが社会にどう繋がれているのかを知ろうとしました。
2011年3月の東日本大震災で、多くの人々の命が一瞬で奪われることを目前にした作家の壮絶な体験は、深く心に刻まれました。時空の裂け目に飛び込むような写真表現は、自らの衝迫と重なるものと言えるでしょう。
本展覧会では、現在を生きる私達の心身の衝動と反動などに焦点をあて、日本各地の様々な年代、職業の人々とともに協働し制作した新作を、等身大を超えるスケールの写真インスタレー ションで構成します。平成が終わる大きな節目の春に精神の極限を見つめ、現代の社会と個人、自然と人類の関わりを編みなおし、生の解放される場となれば幸いです。