ビルディング・ロマンス|現代譚(ばなし)を紡ぐ

ARTLOGUE 編集部2018/02/03(土) - 01:45 に投稿
 飴屋法水 2017年 参考写真/ Norimizu Ameya 2017 reference photography

 

"ビルディング・ロマンス"とは、19世紀ヨーロッパの "成長譚(ビルドゥングス・ロマン)"から来た造語です。20世紀以降の芸術は、ロマン派以来の人間的な重さを逃れて、純粋な芸術を目指し、その分生と切り離された様式性に向かうようになりました。本展では、現代の美術から切り離された"物語"や"ロマン"を、再び現在の表現に探ることで、観客と展覧会の新たな結びつきを目指します。しかしそれは、国家や民族など大き過ぎるものを指向した、啓蒙主義時代の"ロマン"ではありません。本展は、家族や恋人、土地など、身近なものとの関わりの中から、現代における新たな"ロマン"を見出そうとするものです。日常と非日常、虚構と現実という枠を取り払えば、私たちの生きている世界自体が物語に満ちています。それらの作品は、芸術が本来持っていた呪術的な力を蘇らせて、現在では見えにくくなった人間性や地域に眠る物語を垣間見させるでしょう。

 

 

■展覧会の見どころ

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〇映画、演劇、美術

本展では、2010年のカンヌ映画祭でパルムドール(最高賞)を受賞した映画監督のアピチャッポン・ウィーラセタクンや、第58回岸田國士戯曲賞を受賞した演出家であり劇作家の飴屋法水、演劇に似た様々な試みを行う集団「悪魔のしるし」など、映画や演劇など多方面にまたがる領域で活動する作家たちが参加します。それらの作家たちの作品は、視覚中心の美術に対して、生身の身体による知覚を、また虚構を通したこの世界の姿を、ある種の生々しさとともに伝えます。

〇写真家・志賀理江子の新作

志賀理江子は、地域でのリサーチを基に、そこに眠る見えない物語を可視化します。志賀は、自身の出身地に近い豊田市で制作するに当たり、独自のプランを考えました。それは、この地で車製造に関わる人に集まってもらい、彼らが眠る姿を撮影することです。あらゆるものが機械化していく現在、それでも今人々の移動を支える車を作っているのは人間です。志賀の写真は、今現在の人間の姿を静かに浮かび上がらせる、この地ならではの作品になるでしょう。

〇独自の現代譚

映画、演劇の領域で活動をしたり、文化人類学的なアプローチから作品を制作している本展の作家たちは、現代美術の潮流に過度に影響されることなく、それぞれ独自の世界観を構築しています。そこからは、現在の人間の姿やより広く文明そのものを照射する、私たち自身に繋がる現代譚を垣間見ることができるでしょう。

 

■関連イベント

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〇パフォーマンス
 悪魔のしるし「 百人斬り」
 3月18日[日] 14:00–
 会場 美術館講堂 定員‖160人(先着順、無料)
〇対談
 飴屋法水[演出家、劇作家、美術家]
 山下澄人[小説家、劇作家、演出家]
 4月8日[日] 14:00–16:00
 会場 美術館講堂 定員‖160人(先着順、無料)
〇学芸員によるギャラリートーク
 2月25日[日]、3月24日[土]14:00–15:00
〇作品ガイド・ボランティアによるギャラリーツアー
 木曜日を除く毎日14:00より
 土・日・祝日は午前11:00および14:00より
 関連事業開催日は11:00のみ
※いずれも1階チケット・カウンター前にお集まりください。
 ギャラリートーク、ギャラリーツアーは当日の企画展観覧券が必要です。
 詳細は美術館ホームページでご確認ください。
 http://www.museum.toyota.aichi.jp
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